第47話 俺の学校が夏休みを迎えるな件
個人的お気に入り回です。
「うおおおお、おおおおお!」
「いや朝からうるせぇよ。え、なに。何か良いことあった? おめでとう」
登校してきたら朝練が休みのランが教室で雄叫びをあげてた。
今まで奇行は「何してるんだ」って呆れと慣れの感想を抱いてたけど、今回に関しては本当に意味分からなくて純粋に怖いんだけど。超サ〇ヤ人変身するために気合いでも入れてるの?
「良いことも何も、明日から夏休みだぞ夏休み!」
「あ~そういやそうだな」
俺は黒板に書かれている日付を見る。
マホが転校してからの3ヶ月、前世含めて上位に食い込む濃い人生だったから、夏休みなんて頭から抜け落ちてたな。
5月にマホ転校、魔法少女の存在認知、部長に会う、咲黄と会う、アクロコを拾う。6月にリュウ転校、アクロコ居候、ペンヨウ拾う、緑と会う。7月にガク先輩がマホ達と面識持つ、魔法少女に関する新聞が学校で話題になる、部長が話題をかっさらう、怪談について調べるため夜中の学校に忍び込む。
うーん。こう振り返ってみると、本当に色々あったな。けどアレだな、本来なら魔法少女って言う非日常こそが濃い部類に入るんだろうけど、魔法少女関係無い日常の方が濃いのはなんなの?
「夏休み、今から何しようか悩むぜ。部活だろ? 次に部活だろ? その次に部活で、さらには部活だろ? あと言い忘れてたけど部活」
「部活しか無いのかよ。ランにとっては褒美なんだろうけどさ」
運動部なのもあってか、ランは夏休みも部活があるようだ。俺としてはこんな暑い中、しかも休みに部活するなんて嫌だがランにとっては嬉しい話なんだろうな。
平日と休日にやる部活の何が違うのか聞きたくはあるが、それを聞いたら怪文書並みの長文で返されそうだから俺は黙っておく。
「ククク、みなさんおはようございまス」
俺がランと夏休みについて話していると、リュウが登校してきた。そういや夏休みに入るとコイツとも暫く会えなくなるのか。
学校内だったら、ワルインダーの幹部として行動する前に然り気無く妨害出来たが、長期休みとなると俺は何も出来ないな。変に首突っ込むようなマネすると、マホ達の邪魔をする結果になるだろうし。俺が見てない内に変な行動しないか心配だな。
「おはよう」
「リュウおはよう! ならリュウ、明日って何の日か分かるか?」
「分かっていますヨ。夏休みでしょウ? 勉強に追われる日々から解放されル、あの伝説の休みでス!」
あ、ごめん。やっぱ心配要らない。
なんとなく予想ついてたよ、予想ついてたけどお前ひたすらに学校生活を楽しんでるよな!? 長期休みを幹部として暗躍する準備を進められるとかじゃなくて、勉強が無いって理由で喜ぶのはもはやただの学生だよ!
「やっぱリュウも分かっていたか……そう、オレ達は明日から授業と言う拷問から解放されるのだ!」
「今まで授業をそんな捉え方してたの!?」
「おっはよ~!」
「おはようございます」
マホと勇子も登校してきたか。
勇子はカバンを自身の机に置くと、突撃するような勢いでランとリュウの話題へと混ざっていった。あぁ、うん。勇子が2人に何の話をしようとしてるか察した。
「あの、力男さん」
「どうした?」
「今日って何かありましたっけ」
「いや? 強いて言うならすぐに学校が終わる程度だが……何かあったか?」
一応頭の中で今日の予定を振り返るが、特に何も思い付かなかった。
今日は夏休みに関する話を軽く受けてから、その後は解散って流れだから特段イベントも無い。そもそも午前授業どころか、授業無しでHR一時間で学校終了だ。
「なんだか今日は勇子ちゃんのテンションが高いように思えて。何かイベント事があったのかと思いまして」
「それは明日から夏休みだからだな」
「夏休み?」
「1ヶ月ぐらい学校が無くなるんだが……マホが住んでた地域では無かったのか?」
「へ!? あ、あー……ありましたよありました! よく学校が更地になってました!」
「嘘つけ」
マホは異世界人であることを隠すため、海外から転校してきた設定したのを忘れていたようで、俺の問いに斜め上の回答をしてきた。
俺の伝え方も悪かったが、学校が無い=物理的に消滅するって勘違いするのは天然が過ぎるぞ。あくまで学校が休みって比喩だからな。
そもそも学校が物理的に消滅するなんて、取り壊す時ぐらいだろう。てか確認したいんだけど、マホの世界って本当に建物が物理的に消滅するような世紀末世界じゃないような。のほほんとしている平和な世界だよな? 本人に直接聞けないがちょっと気になってきた。
「夏休みってのは、文字通りの意味だ。大体1ヶ月ぐらい学校が休みになる。当然だが学校に来る必要は無くなるし、その間は授業も無いんだ」
「そうなんですね。じゃあ勇子ちゃんのテンションが高いのは」
「学校が無いからだな」
マホは勇子に苦笑いを向ける。その目には若干ながら、呆れたような感情が混ざっていた。
勇子らしい、とでも思ってるんだろうな。勉強は苦手だと毎日のように言ってるし、テストの度に机に伏せる様子を見てきたからな。テレパシーを使わずとも俺には分かる。
「リュウくんとランちゃんは夏休み何処か行くの?」
「僕は家族に会おうと思っていまス。1人暮らししているト、中々家族と顔を合わせる機会が無いですからネ」
「オレは部活の大会だ! 勇子ちゃんはどうするんだ?」
「私はプール行ったり、遊園地行ったり、買い物行ったりしようと思ってるよ!」
「3人とも楽しそうですね」
マホは三人を微笑ましい表情で見守る。
この光景だけ見ると、マホが3人の母親に見えるな。なお、歳の差は1歳も無い親子。複雑な家庭すぎるだろ。
「その楽しみが続くとは思えないけどな」
「え? それってどういう」
「後になれば分かるさ」
「「「アッハッハッハ」」」
勇子、リュウ、ランの勉強から逃げたい組。通称、三馬鹿は高いテンションで、HRが始まるまでそれぞれの夏休みを語っていくのであった。
「夏休みの宿題を忘れずにやっておくんだぜ。それじゃ、解散だぜ」
「「「うわあああああ!」」」
HRが終わった瞬間、三馬鹿は机に伏した。
おう、どうした。さっきの元気は何処行ったよ? と、意地悪するのはこの辺りにして、この三馬鹿は今の今まで夏休みの宿題と言う存在を忘れていたのだ。
リュウはまだ良いとするよ、この世界に来るまで学校通ってたかすら分からないから、もしかしたら宿題なんて単語すら聞いたことが無いのかもしれないかな。でもランと勇子は小学校6年間で宿題出されてたよな、中学生からは夏休みの宿題無くなるとでも思ってたの!?
三馬鹿は宿題なんて知らないと言わんばかりに「夏休みなのに、どうして宿題があるんだ」とひたすらに呟いている。
「あぁ、なるほど。こういう事だったんですね」
「そういうこった」
「どうして、どうしてこの世には宿題があるんだッ!」
お前みたいな奴をサボらせない為だよ。
ランは部活に集中出来ない事を嘆いているが、1ヶ月も勉強しなかったら今まで習ったこと全部忘れるだろ。それを防ぐための宿題だからな。
「宿題があるこの世界を滅ぼしたいでス」
お前が言うと冗談に聞こえないから止めろ。
こんな学生生活を満喫してる奴でも、一応は世界征服を狙っているワルインダーの幹部なのだ。リュウ、お前もしかして世界征服したら夏休みの宿題無くす気でいる? お前の所の総帥がどんな奴かちゃんと知らないけど、そんな事言ったら怒られると思うぞ。
「終わった……」
もはや持ちネタ。
中間テスト前と良い、期末テストで赤点取った時と良い、いつもその台詞だけど気に入った? てか勉強に関する事が起こる度に「終わった……」って言ってるな。そんな簡単に終わってたまるかよ。
「げ、元気出してください! 宿題なんて、コツコツとやっていれば終わりますから!」
「マホ、コイツらがコツコツやるタイプだと思うか?」
「えっと、それは……その」
「マホちゃん!?」
マホはソッと3人から目を逸らした。
おい勇子、前に「登校から下校まで、さらには寝る時の子守唄として問題を出してあげます! これで追試はバッチリです!」って言ってたあのマホに勉強面で諦められるって相当だぞ。
「こうなったら、オレはこの場を動かない!」
「急にどうした」
「逆転の発想だ。この場から動かなければ夏休みなんて来ない、つまりは宿題なんてモノやらなくて良いんだ!」
「「その発想は無かった!!」」
うるせぇ三馬鹿。
ランは机と椅子に根を張るようにして、その場から動かない発言をした。そんな事したところで、夏休みはやってくるんだよ。
はぁ……ただ、そんな事言っても今のランは話を聞かないだろうなぁ。じゃああれだ、夏休みを自ら迎えさせるようにするか。
「オレはこの教室に住む。テコだろうと動かないぞ!」
「夏休み迎えないと部活行けないぞ」
「よし帰るか。みんな、夏休みが明けたら会おうな!」
「「ランちゃんー!?」」
先程の教室に住む発言は何処へ行ったのか。ランは宿題と部活を天秤に掛けて、速攻で部活を選んで帰っていった。
「デ、ですが僕は動かないですヨ!」
「学校に居ると家族と会う機会失うぞ」
「急用が出来たので帰りまス」
「リュウくんー!?」
揃いも揃ってチョロすぎるだろ。
てか本当に家族と会う予定あるんだ、学生と言う建前を使って適当な嘘をついてると思ってた。悪の組織だけど、家族と会う時間が確保されてるってことは、ブラックな職場じゃないのか。国1つ滅ぼしてる時点で別の意味でブラックだけどさ。
「私は動かないよ、散っていった2人の意思を受け継ぐんだから!」
教室に残り続けようとする三馬鹿も残り1人、勇子だけとなった。しかし勇子は2人の意思を受け継ぐと言い、その場から動こうとしない。
良いこと言ってるんだろうけどさぁ……その2人、勝手に散っていっただけなんだけど。夏休みと言う誘惑に負けて仲間裏切ってるんだけど。
「そうか、じゃあ頑張れよ。一緒に帰ろうぜマホ」
「え!?」
まぁ勇子がそこまで教室に残りたいって言うなら俺は帰るとするか。けどマホを勇子の我儘に付き合わせて、夏休み中も教室に残すのは可哀想だからなぁ。1人で帰るのは寂しいだろうから、一緒に帰ろうかなぁ。
俺はマホに視線を送る。それだけでマホは俺の考えを理解したようで、自身のカバンを持って勇子へとびっきりの笑顔を向けた。
「それでは勇子ちゃん、夏休みが明けたらまた会いましょうね」
「ま、待って! 私も一緒に帰る~!」
俺とマホが教室を出る瞬間、勇子は寂しくなったのかパタパタと足音を立てながら帰ろうとする俺達の後ろをついてくるのであった。
前回、前々回はクソ長説明回だったので、ギャグ全振りしてみました。そして、今回で第3章は終わりです。
次章は魔法少女のターンとなります。
ちゃんと力男の出番もありますが、この辺りで魔法少女側のストーリーを進めないと、日常を謳歌し続けてたら、いつの間にか世界征服されてBAD ENDって言う間抜けな終わり方になりますからね。




