第46話 私の人体模型が秘密の塊な件さ
ノリで話を書く時
「ば な な」
わりと考えてる時
「ここは伏線として使えそうだな。で、このキャラがこう動くならこのシーンは……」
ガク先輩を書く時
「他には悟られないよう、でも一部の人間にのみ伝わるように、そしてそれを読者が感じ取る伝え方をするためにはどんな言葉を使うべきだ? 直接伝えるのは当然無しだが……ふむ」
ガク先輩は頭良い設定にしてるので、この人を書く場合はニチアサ要素をガン無視して、常に私の頭をフル回転させて喋らせてます。いやだって、そんな事気にしてる余裕無いし。
「ふぅ、帰ったようだね」
私は力男くん達が帰路へつく姿を部室から見届け、緊張で身体に入った力を抜くために大きく息を吐く。無事、力男くん相手に誤魔化せたようだ。全く、超能力とは厄介だね……。
力男くんは自身の超能力を「日常で役に立つ能力」程度に思っている。事実、漫画やアニメのように惑星や街1つを滅ぼせるほど強大な力で無い。だが、私にとっては出力以上に表面上ではいつ超能力を使用してるか判別出来ない部分が厄介だ。
初対面の時のようにブラフでテレパシーを看破するのは可能ではあるが、アレはタイミングが噛み合っただけの偶然の産物さ。もしあの時に力男くんがテレパシーを使用していなかったら、私のブラフは意味の無いものになっていただろうね。
ならばどう見極めるか。答えは単純、テレパシーを使用するよう誘導し、隠し事を考えない方法で突破する。心を読まれるタイミングが不明なら逆転の発想として、最初から読ませておく。実に簡単な答えさ。それを実行し、成功に導く過程の難易度は度外視させてもらうがね。
だが結果としては成功。私は咲黄くんを口頭で、力男くんを心で惑わし、情報量で混乱させて隠し事を守りきる。一瞬でも隠し事を考えたら力男くんに見破られる、綱渡りな作戦であったが、無事隠し通せて安心したさ。
「いやはや、自分の心を騙す日が来るとは思わなかったな」
全く、もう2度とこんな腹芸はしたくないものだ。
隠し続けるために、テレパシーを使用される前提の立ち回り───隠し事とは別の内容を思考する───をしつつ、表では咲黄くんも混乱させる。
こんな立ち回りは2度としたくないものだ。
これだったら、この前の部長くんとのやり取りの方がマシさ。あの時は口だけで部長くんのみに「私は君がマホくん達が魔法少女で有ることを見抜いているのを、把握している」と伝えるだけだったからね。
部長くんがマホくん達が魔法少女であると見破っているのには少々驚かされたが、咲黄くんが大好きな部長くんの事だ。本人も言っていたが、咲黄くんの行動について以前から疑問を持っていた。実際、咲黄くんの行動は端から見れば奇行そのものだっただろうね。
けれど部長くんは問い詰めなかった。咲黄くんにも事情があるのだろうと見守り続けていた……例の新聞を読むまではね。
きっと彼は驚いただろうね。咲黄くんの写真───あのブレブレな写真で咲黄くんだと見破るのは、私でも厳しくはあるが兄弟愛の成せる技なのだろう───が載っており、さらには魔法使いと記載されているのにね。
彼は新聞を勘づいたのだろう。咲黄くんが魔法使いである事に、人知れず街を守っている事に、そして……その秘密が広まっている現実に。
「彼の腹芸を私も見習うべきだろうか」
部長くんは会話中に1度だけ「魔法少女」と言う単語を使用した。新聞には「魔法使い」としか記載は無いのにね。部長くんがその単語は聞ける場面は、自宅で偶然的に咲黄くんとフクヨウくんの会話を聞く、もしくは私達の部室の会話を盗み聞きするかの2択だ。
さらには部長くんは咲黄くんの写真を指して「コスプレ」や「目立つ格好」と発言した。おかしいとは思わないかね、あの顔どころか体格すらも判断が難しい写真で、彼はどうやって咲黄くんの格好を把握出来た?
私はずっと、部長くんは「新聞を読んでから秘密を知った」と思い込んでいた。前提を覆す研究をしているくせに、その前提に囚われるとは……私もまだまだのようだね。
彼は前から知っていた、それこそが真実だろう。本人は決して口を割らないだろうから考察にはなってしまうが、偶然的にも咲黄くんの変身姿を見た事があるのだろう。そうでなければ服装についてあそこまで正確に発言出来ないだろうね。
全く。秘密を知りながらもそれを隠し続け、妹のために面子やプライドが傷付くのを躊躇しないとは……彼の覚悟は尊敬程度の言葉では表せないね。
「今回は無事君の正体を隠し通せたが、次回はどうだろうね」
私は部長くんの姿を思い浮かべながら、人体模型へと紙とペンを渡す。
私の我儘でそんな身体に入ってもらってすまないね。私には敵に対抗する手段が無い。万が一に備えての戦力は欲しいのさ。あぁ、安心したまえ。君が姿を取り戻す、もしくは戦いが終わったら解放するさ。こう見えても私は約束を守る一般人なのでね。
【ありがとう】
お礼を言われる筋合いはないさ。
それより元気パワーは足りているかね? 本来ならより多くの元気パワーを与えるべきなのだろうが、現状では摂取方法が直接君に触れる、もしくは魔法少女くん達から貰うの2択しか無いのでね。
幸いにも、例の新聞の件で協力した対価と言う名目で、魔法少女くん達に浄化技を使用してもらい、それに含まれている元気パワーを回収させてもらった。それでも、その肉体を動かせる程度しか出来ないようだがね。
現状では君が肉体を実体化して喋れるようになるだけでも10年は掛かるだろう。仮に元気パワーの摂取法を確立出来たとしても、早くて1年と言った所だ。
今の君が出来るのはその仮の肉体を動かす程度だ、他人に力を与えたりは無理だろうね。すまないね、魔法少女くん達の手助けをしたいのだろうが、こんな歯痒い思いをさせて。
【きにしていない】
そう言ってくれれば私としても助かるさ。
だが……現状ではこれ以上研究を進めるのは難しいだろうね。聞いたことも無いエネルギーを1から調べるとなると、当然の話だが時間がかかる。私の研究テーマにマッチしているエネルギーだから、人生全てをかけてでも研究を続けたいが、それには問題がある。それは時間制限がある点だ。
「いっそのこと、此方から仕掛けるべきか? いや、情報が不足している以上、下手に動けない。だが」
現在の私達は後手に回ってしまっている。
ワルインダーの本拠地、構成員の人数、戦闘スタイル、世界征服と言う目標を達成するまでの大まかな行動、目標までの進み具合。
これら全てが未判明の今、今のように攻めてきた相手を迎撃するスタイルを貫き続けては一歩も前に進めない。もしかしたらワルインダーは半年、1ヶ月、はたまた明日には世界征服する段階まで計画が進行している、そう言われても否定は出来ない。
「やはり行くべきか。マホくん達の故郷、魔法世界へと」
取り返しのつかない事態になる前に先手を打つ必要がある。そのために今必要なのは情報だ。次に行動力。後者は魔法少女くんたちの役割であり、前者は私の役割だ。
マホくん達がワルインダーと戦うようになったのは、元々は魔法世界で起こった妖精国が襲撃された事件が発端だ。どうしてワルインダーが妖精国を襲ったのか、それさえ分かれば、最低限考察するためのピースは揃う。
仮に事件について調査が厳しかったとしても、魔法世界には図書館があるとマホくんが語っていた。そこから魔法少女の本、妖精と言う種族に関する本、元気パワーに関する本を読み解けば、何か見えるものがあるかもしれない。
「問題としては、魔法世界に行く方法だがね」
結局、魔法世界へ行く方法が不明な以上は動けないがね。マホくんとペンヨウ曰く「助けて」と願ったら、この世界へとワープしたと話していた。
魔法少女に備わる特殊能力か、妖精と言う種族によるモノか。まぁ一度試してもらったが出来なかったため、現状では使用不可だ。八方塞がりだな……今度、無理にでもペンヨウくんとマホくんの身体を調べて謎を解かねば。
【じかん】
「時間? あぁ、もう日付を越えるのか。すまないが私は帰らせてもらうよ」
今後の行動を練っていると、人体模型へ肩をつつかれてメモ紙を見せてきた。ふむ、まだ平仮名程度しか書けないようだね。今度漢字を教えよう。
「本当は今にでもマホくん達に君の存在を伝えるべきなのだろうが……君は切り札、所謂ジョーカーだ。マホくん達がピンチになった時に、相手の不意を突くためのね。だから例え味方だろうとも、存在を伝えることは出来ない。分かってくれたまえ」
【だいじょうぶ】
「私と歳の近い君に言うのも変な話だが、君は良い子だな。こんな状態でも私に文句一つ言わないとは」
私なら知り合いに自身の事を説明出来ない事や、そんな身体に入れられている部分に文句を言っていただろうね。
「ではまた明日会おうではないか。ニワヨウくん」
私は部室を出る前に人体模型の中に入っている魂、ニワヨウくんへ挨拶をして自宅へと歩を進めるのであった。
【唐突な次回予告】
やぁ、みんな力男だ。
俺たちを脅かすだけ脅かしたと思ったら、ガク先輩隠し事しやがってな……あとナチュラルにテレパシー破らないでくれない? 一般人はテレパシーなんて破れないのよ。
それにしても、今日はもう夏休み前最後の登校か。マホが転校してきてから、3ヶ月しか経ってないが中々に濃い学生生活だったな。さて、夏休みは何しようかな~ってあれ。ラン、優子、リュウ、お前らいったいどうしたんだ!?
次回:俺の学校が夏休みを迎えるな件




