第41話 魔法少女の写真が撮られたな件です
ここで余談を一つ。
元々この話は没にする予定でしたが、ハーメルンの方で「魔法少女の姿、もしかしたら他の機械やカメラに残ってるかも」と感想を貰い、確かに描写無いと不自然だよなぁと没から本編に昇格させました。
「たたた、大変よ勇子! マホ!」
朝。私と勇子ちゃんが登校すると、緑ちゃんと咲黄ちゃんが私達の教室で大きめの紙片手に慌てていました。私と勇子ちゃんに用事があるのでしょうが、2人がこんなに取り乱すなんて珍しいですね、何かあったのでしょうか。
「どうしたの? 緑ちゃん」
「これ見て!」
「新聞部の作った新聞、ですか?」
校舎の至る所に貼ってある新聞ですね。1週間に1回の頻度で更新されていて、学校内で起きた事件や街中のホッコリするニュースが書かれています。また、定期テストが近くなると、効率の良い勉強方法やテスト範囲も載せてくれたりも。ちなみに私は、新聞の端っこにある4コマ漫画を読むのが毎回の楽しみです!
そういえば、いつもは張り出し形式ですが今日に限っては下駄箱近くに大量に置いてありました。張り出し前だとと思っていましたが、今日から自由に取る形式に変わったんですかね?
今日の分はまだ読んでいなかったので、朝から読める事に嬉しさを覚えながら、勇子ちゃんと一緒に新聞を覗き込むと、私達はその新聞の一面を眼を奪われました。
【謎の金髪魔法使い現る!?】
「これって、この前戦った時の……!」
「シッ! マホ、声が大きいわよ」
私は大声が出そうになった口を急いで塞ぎます。
周りを見渡しますが、他の皆さんも新聞に夢中になっているようで、私達の方に視線を向けてくるような様子は無いですね。
私は改めて新聞の内容を確認します。
ふむふむ、写真がボヤけていますが、これは変身した咲黄ちゃんですね。ガク先輩と同じように集団記憶喪失事件を追っていたら、元気パワーを吸い取られてこの人も一部の記憶を失ったようです。
撮った覚えの無い写真がカメラに入っていたようですが、恐らくは倒れた時にシャッターが押されたのでしょう。
そして記憶喪失事件を魔法のようだと書いてありますね、咲黄さんの事を魔法使いと書いたのもそれが理由なんだとか。あ、4コマ漫画は今回お休みなんですね。
「なぁ緑、咲黄」
「あああ! どうしようどうしよう、魔法少女の事は秘密なのに!」
「写真撮られちゃった……ど、どうやって誤魔化せば良いかな?」
「これが私達とバレた訳じゃないのは不幸中の幸いだけど、情報求むって書いてある部分が厄介ね」
緑ちゃんの指差す部分には、赤文字で「情報求む!(女の子だと嬉しい by記者)」と書いてあります。私達の正体を探ろうとする人達が増えるのは困りましたね、今まで以上に無関係な人達を巻き込んでしまう事になりますし、カメラにまで注意を払って戦わないといけないなんて……
「おい、ちょっと良いか」
「ふひゃあ!? な、なんだ力男じゃない。驚かせないでよね!」
「驚かせたつもりは無いんだが……まぁ良いや。魔法なんて眉唾な新聞読んで何話してるか知らんが、そろそろHR始まるぞ」
私達が新聞を囲むようにして悩んでいると、力男さんが緑ちゃんの背後から声をかけてきました。そこまで時間は経ってないはずですがと、時計に視線を向けるとHRまであと数分しかありませんでした。
新聞の内容に気を取られていましたが、いつの間にかそんなにも時間が経っていたんですね。ここは1度、お昼休みにもう1度話し合った方が良いですね。
「教えてくれてありがとう力男くん」
「気にするな。それでなラン、この問題はこうして」
「うーん……オレの頭脳だとこれが正解だと導いたな。勘は此方だけど」
「勘の方が正解してるのはなんでだよ」
それにしても、ランちゃんは直感での正答率が高いですね。力男さんに毎朝教えてもらっていて自力が付いているのもあるのでしょうが、直感だけで私と同じくらいの点数を取れることに少し嫉妬してしまいます。
「この話はお昼休みにもう1度しましょう」
「うん、そうだね」
急いで結論を出した結果、取り返しのつかない事態になるような事は避けたいですからね。ここは1度じっくりと話し合うべきです。それに、科学部の部室へ行けばガク先輩が居る筈です。対価として何を請求させるか分からないのが怖いですが、ガク先輩の力も借りるべきです。背に腹は代えられないってやつですね。
「例の新聞か、それなら私も読んださ。恐らくだが、壁に背中を預けるように脱力していたが、戦闘の衝撃で地面に倒れた結果、偶然にもシャッターを押してしまったのだろう。中々に有り得ない可能性だとは思うが……事実は小説より奇なりってやつかね」
お昼休み。ガク先輩も交えて今後について話し合いを進めていきます。最初にガク先輩に新聞を読んでもらおうと思いましたが、既に学校中で話題になっているようで、説明は要らないとの事でした。
説明が省けるのは楽で良いですが、そこまで新聞が広まっていたんですね……私達のクラスだけなら、なんとか誤魔化せるかもと思っていましたが、学校中となると、どうしましょうか。
「まさかこんな事になるとは思ってもいませんでした」
「秘密にしてくれるだろうと、性善説を信じた結果、こんな結末になるとはね……全く、この写真を広めた一般人は、自分が魔法少女に守られるって自覚は無いのかね」
貴方がそれを言うんですね。
何回も自ら首を突っ込んでガク先輩が言っても説得力が無い話ではありますが、確かに私達は「ガク先輩は広めるような事はしなかったから、他の人達もきっと大丈夫だろう」と甘く捕らえてたかもしれないですね。
「君達はこれからどうするのかね?」
「どうするって言うとどういうことよ?」
「この写真を撮られた以上、魔法少女の追跡を辿ろうとする者は多いだろう。正体を迫ろうと、危険な真似をする一般人も現れるかもしれない。身内に正体が知られたら危険な事はするなと、止められるかもしれない……それでも、君達は魔法少女を続ける気かい?」
「「「「…………」」」」
確かに、そうですね。
私達はこれまでペンヨウ達を、そしてこの街を守るため、そしてワルインダーの悪事を止めるために戦ってきました。しかし今後はそれだけではなく、私達を探ろうとする人達も守り、正体を隠す必要があります。
何処かにあるかも知れないカメラなどの機械に注意を払いながら、ワルインダーと戦っていくのは正直言って厳しいでしょう。私達は戦いに集中するだけで精一杯で、カメラなんて気にしていられるほど強くもありませんし、そんな余裕も無いです。ですが……
「私は続けます。ペンヨウ達を、この街を守りたいです!」
私は魔法少女を続けさせてもらいます。
例え正体がバレてしまったとしても、周りから止められようとも、この街は異世界から迷い込んだ私を受け入れてくれた。この学校で友達になったみんなは右も左も分からない私に優しく手を差し伸べてくれた。魔法少女として一緒に戦ってくれるみんなは、私の心が折れてしまっても何度も励ましてくれた。
恩返しがしたい。最初はペンヨウを守るためだけに戦っていましたが、今となっては守るものが、戦う理由が、抱える想いが増えました。
ですが私はそれを悪い事とは思っていません。むしろ増えれば増えるほど、なんだか私の心が暖かくなるのを感じます。私はこの想いを大切にするためにも、脅威が去るまで戦い続けます!
「私もだよ! 頑張ってる友達を放っておくなんて出来ないからね!」
「わ、私も続ける! 困ってる人を見捨てるなんて出来ない!」
「私もよ。貴方達だけだと心配だからね」
勇子ちゃん、咲黄ちゃん、緑ちゃん……私はそっと、目を擦ります。本当なら目に傷がつくので止めた方が良い行為ですが、こうしないと涙が出ているのを見つかってしまいますからね。
「ふむ。それはとても現実的では無い答えだ。研究者の視点から見れば落第ものだ……だが、私の大事な研究を有象無象によって邪魔されるのは気に食わない。私も君達に協力しよう」
「え、良いの? やったー!」
「ですがガク先輩、協力してくれるのは有り難いですが、いったいどうするんですか?」
自力で魔法少女の正体に辿り着いた知能と、巻き込まれようとも真実を知ろうとする行動力のあるガク先輩の協力があるのは心強いですが、何か解決方法があるのでしょうか。
お昼休みまでの間に私の方でも考えましたが、あまり良い考えが思い浮かばなかったです。例えば写真を合成だと言い張ったとしましょう。ですが全員が全員、それを合成と信じるとは限らないですし、変に私達が騒動を起こせば、何か知っているのかと疑われるでしょう。
かと言って自ら正体をバラすような真似をすれば、周りの無関係な人達を巻き込むことになります。最悪の場合、家族が狙われたりするかもしれません。
「心配要らないさ。元気パワーとやらを取られたら一時的に記憶を失うのだろう? この新聞だって、あくまで魔法少女……いやこの写真だけだと性別不明だから、魔法使いだったか。その存在を匂わせてるすぎない。人の噂も75日、噂が風化するのを待つ。簡単な話だろう?」
「じゃ、じゃあその噂が無くなるまでの期間は……」
「君達で頑張りたまえ」
「そんな!」
「ガク先輩、もう少し良い方法は無いの! なんかこう、すぐに解決出来そうなヤツ!」
確かにガク先輩の言う通り、時間が過ぎて忘れ去られるのが一番確実な手でしょう。それが不可能に近い部分に目を瞑れば、ですが。
この方法では噂が過ぎる前に、戦いが激しくなって噂が拡大、もしくはより私達の正体を探る人達が増えることでしょう。結果を出すより前に過程で失敗してしまう未来が見えます。
「まぁそういうだろうな、この方歩では根本的な解決は可能だが、それまでの過程を無視した方法なのだからね。だが安心したまえ、既に他の方法は幾つか考えてあるさ。例えば」
「ここかぁ!」
ガク先輩が別の解決法を喋ろうとした時、部室の扉が勢いよく開きます。その音に驚き、私達はペンヨウ達を隠す事すらも頭から抜けて、扉を開けた人物へと視線を集めます。
その人物はガク先輩と同じ3年生でした。制服の上からでも分かる、主張の激しい筋肉に2m越えの身長に、咲黄ちゃんと同じ黄色い髪。私が一度だけ部活体験をした時、お世話になった先輩です。どうしてこの人がここに……
「お、お兄ちゃん!?」
咲黄ちゃんのお兄さん、陸上部の部長さんが科学部へとやって来たのでした。
意外にも他視点でまともに力男が喋るのは初めてだったり。他だと4話の回想で一言出た程度ですね。なお、本編では内心「え、咲黄写真撮られてるんだけど。え、あ……マジで?」と内心慌ててます。
ちなみに元々のボツ話では、反射神経ならラン以上を誇る写真部が、魔法少女の写真を撮ろうと頑張る話を予定してました。




