第35話 喫茶店の店員が恋愛脳な件
「いらっしゃいませ~……ってあれ、勇子じゃないの。この前ぶりね」
「こんにちは緑ちゃん! ショートケーキとオレンジジュース2つお願い!」
「分かったわ。席に座って待ってなさい」
勇子の案内の元、喫茶店に着くと見覚えのある人物が店員をしていた。より詳しく言うと、この前図書室で見た妄想が独り言に出てた怖い生徒。
え、なんでアイツ居るの? つーか何事もなくアイツと話せるんだ勇子。マトモに話したこと無いけど、アイツあれだぞ。図書室でくそ長い妄想を独り言でブツブツ言ってたんだぞ。
「勇子、知り合いか?」
「うん! さっきの子は咲黄ちゃんと同じクラスの『恋路浜 緑』ちゃんって言うんだけど、このお店は緑ちゃんのお家なんだって!」
魔法少女候補じゃねぇか。
名前に色が入ってるなんて、魔法少女以外の何者でもねぇよ。よく考えると、髪の毛が緑って目立つ色なんだから、何かしら関わるじゃねぇか。魔法少女以外で目立つ色してるヤツなんて、咲黄の兄の部長ぐらいだし。
「それじゃあ、勉強を教えてください力男先生!」
「誰が先生だ」
敬礼しながら言うな、俺は上官になった覚えはない。
勇子から見えない位置、要は勇子の後ろから飛んでくる視線を受けながら俺は勉強を教え始めた……やっぱ気になるな。正直言って使いたくは無いが仕方ない、テレパシー使うか。
❴(やっぱり勇子の彼氏なのかしら。マホや咲黄を置いて2人で来るなんて、勇子もやるじゃない。いや、ちょっと待ちなさい緑。勇子もあの男の子も自身を恋人は言っていない、つまりはまだ付き合ってない!? だとしても2人で喫茶店に来るなんて……ハッ! まさか、周りにカップルと見せつけるつもりなのね! 勇子、なんて策士なの!?)❵
使わない方が良かったな。
俺は視線を向けてくる相手、恋路浜の思考に頭を抱えた。図書室で見た時から思ってたが、かなりの恋愛脳だな。具体的に言うと、距離を取りたくなるレベルで。
「私の後ろ見てどうしたの? 力男先生」
「なんでもない。あと勇子、これの答えは此方だ」
「え? でもノートだと確か……あ、間違えて書いてる!」
「なんか文字フニャフニャだし、濡れた後あるんだけど?」
「ハハハ、ちょっとこの時眠くて……」
「テストの点数悪い理由それだろ」
眠くなるのは分かる。だが寝るな、最悪起きなくて良いからマホにノート見せてもらえ。そして涎垂らすな。
今まで地頭はそれなりに良い勇子がテストで点数を取れないのは、これまでの勉強の積み立てが足りないのかと思ったが、どうやら違ったようだ。単に授業中寝てるし、ノートを間違えて取っているようだ。そら点数伸びねぇよ。
「ほれ、俺のノート参考にしとけ」
「ありがとう!」
俺は自分のバッグからノートを取り出して勇子へと渡した。なぁ勇子、お前のカバンなんかゴソゴソ言ってるんだけど。透視せずとも分かるけど、妖精入ってるよな。明らかに妖精居るよな!?
念のため周りを確認するが、此方に視線を向けてるのは誰も居なかった。平日の微妙な時間だからか、客が少なくて助かった。もし人が多かったら偶然だろうとも、誰かしらカバンが動いてるのを見てたかもしれないからな。
そういや恋路浜何処行った? さっきまで俺たちを見ていた筈なんだがな。妖精が居るのが見られなかったのは嬉しいことだが、消えてたら消えたで何してるか分からなくて怖いんだが。
「待たせたわね。ショートケーキとオレンジジュースよ」
「ありがとう~」
「お、サンキュー」
どうやら頼んだモノを取りに行っていただけであった。忘れてたけど恋路浜は店員だったな、さっきの恋愛脳が原因で意識全部そっちに持ってかれてた。
「ところで、2人って付き合ってるのかしら?」
「見ての通りだよ?」
❴(見ての通り!? 見ての通り付き合ってるの!? さ、最近の中学生は進んでるわね。私にも良い王子様は現れないかしら。そう、力は無くても誰かを身を挺して守れるような優しくて勇気のある人とか!)❵
何処をどう見てそう思ったんだ?
一応説明をすると、恋路浜は恋愛的な意味での付き合ってるだが、勇子は勉強に付き合ってると言う意味である。こんな綺麗なすれ違い起こるのかよ。
あと恋路浜も最近の中学生だし、なんなら同じ学年だろ。人の夢を馬鹿にするつもりは無いが、現代でそんな人物に出会うのは難しいだろうな。異世界辺りを探せば居そうだ、知らんけど。
「見ての通り、勇子の追試勉強に付き合ってるんだ」
「追試って言わないでよ~」
「事実を隠しても意味無いだろ」
テスト終わった時期にわざわざ喫茶店来てまで勉強する奴なんか、勉強好きな奴か追試組の2択だろう。当然だが勇子は後者だ。もし勇子が「私、勉強好き!」なんて言ったら、まずは熱が無いか確認する。
「そ、そそそそそそそそそそそうなのね」
「動揺しすぎだろ」
「動揺してないですわよお客様」
「ジュース持つ手が震えてるんだけど?」
コップ持ちながら奮えてるせいで、ジュースが空中舞ってるんだけど? コップの中に全部戻ってるから良いけどさ。空中の液体全部コップに戻すなんてどんなマジックだよ、今度教えてほしい。
「こ、これはあれです。右手が疼いているんです!」
「もう少しマシな言い訳は無かったのかよ」
厨二病みたいな言い訳だな。
恋路浜に厨二病はまだ早いな、あと1年待ってろ、そしたら中学2年生になって似合うようになるからさ。黒歴史にはなるだろうが。
「と、兎に角ゆっくりしていってください! えっと」
「力男だ。それと勇子と話すみたいに敬語外して良いぞ、そっちの方が話しやすいだろ」
「なら私も緑で良いで……良いわ。それじゃあね」
誤解が解けて良かった。
勇子や俺に話しかける度に話し方を変えるのは面倒だと思って外すよう言ってみたが、今の方がしっくりくるな。
「ケーキ来たし、ちょっと休憩するか」
「やったー!」
ケーキを放ったからしにするのは店に悪いだろうと、休憩も兼ねて食事をする事にした。なお、勇子がケーキって言った瞬間にカバンが揺れたのは見なかったことにする。
お、ケーキ美味しいな。アクロコにお土産として持って帰るか。俺はテイクアウトを決意した。
【恋路浜 緑】
咲黄と同じクラスの女の子。実は25話(マホのホームシック回)で、喫茶店の話が若干出てたりする。
先輩キャラ、周りを引っ張るお姉さんキャラ、気の強いキャラ……色々考えたけど、遅めの登場だから他キャラの影に埋もれるかもしれないとの理由で、濃い設定として「恋愛脳」を足したら暴走した。
25話以前での魔法少女組との関わりは、ただのクラスメイト、もしくは学年が同じな人。程度の認識である。




