第31話 俺の一押しが良い方向に向けば嬉しいな件
「…………セイ」
「寝れないか?」
色々あったが、2匹仲良く、なかよ、なか……いや全然仲良くしてなかったなアイツら。目玉焼きにソースだの醤油だの口喧嘩したり、風呂上がりに食べるアイスの味で揉めてたな。つーか喧嘩の内容がショボいんだよ!? それでいちいち喧嘩すんな!
とまぁ何回か喧嘩することはあったが、時間は過ぎて就寝の時間となった。アクロコはすぐ眠れたようだが、ペンヨウは寝れないようで、俺の部屋から見える夜景を眺めていた。
「力男セイか。ちょっと、考え事をしてたセイ」
「考え事?」
「ペンヨウ達妖精は身体を失って、魂だけになっても存在を維持することは出来るセイ。ただ、魂の状態で浄化されたとしたら、どうなるか分からないセイ」
「魂が何処に行くのか、かぁ。哲学的な話だな」
この話をするとなると、ペンヨウが選んだのは…………そうか。ペンヨウ自身が決めたのなら、部外者の俺がとやかく言うことじゃないが、まだ迷ってるペンヨウの背中を押すぐらいは許されるだろう。
「なぁペンヨウ、俺個人の考えとしては、魂は人の心に行くと思うんだ」
「心セイか?」
「あぁ。人の心に行って、記憶として残る。例え今の生を終えて産まれ変わろうともな」
「なんだか難しいセイ」
「ややこしい話をしてる自覚はあるさ。ただ、俺はそう思うって話さ」
これは転生した俺の持論だ。俺やアイツは元の世界で死んだ。アイツがこの世界に来てるのか、それとも消えたのか俺が知らない。が、例えこれから会えなくてもアイツとの思い出は記憶として残っている。
その思い出を胸に抱いて俺は今を生きている。産まれ変わろうとも、この世界で新しい思い出が増えようとも、消えることの無い大切な記憶だ。そして俺はあの時の後悔も胸に…………いや、今は関係無いな。
「後悔の無い生き方をするのが一番だろうが、何をしたって後悔は訪れるんだ。マホと怪人にされた友達、2人とも助けたいと思って動いて良いんじゃねぇか?」
「でもそれは」
「無謀だろうな。まぁ動かないよりはマシだろ。それでも無理な時は……覚悟を決めとけ。泣いても良い、悩んで良い、誰かに相談したって良い。ただし、最後は笑顔でな」
「笑顔って、ペンヨウは笑える自信は無いセイよ」
「俺も笑顔は無理だな」
「じゃあなんで言ったセイ……」
人生の先輩からのアドバイスだ。でも妖精って長生きしているイメージだから、本当に俺が先輩なのか怪しいな。生まれ変わりの回数で言えば勝っているんだろうが。
「どちらをとるにせよ、辛気臭い顔で送るなって警告だ。それで送ったらお前、一生心に残るぞ」
「消えるのに一生とか意味分からないセイ」
「あー、まぁ細かいこと気にするな」
ペンヨウには一生分からない事だ。いや、正確には一生分からないでほしい事ではあるがな。なんにせよ、俺と同じような人生を辿るのは止めとけ。
「ほら、早く寝るぞ。明日は早めに学校に行くぞ」
「ペンヨウは早起き苦手セイ」
「ペンヨウが遅めに学校行きたいならそれで良いけど、クラスメイト居る中、お前をマホに渡せってか? それやったら騒ぎになるぞ」
「なんでセイか」
「いやだって、マホに会ったらどうせペンヨウ大声で泣くだろ。それ周りに見られても俺はフォローしないし出来ないぞ」
「そんな涙脆く無いセイ! でも、マホが大声で泣きそうだから賛成するセイ」
ペンヨウも周り気にせず、大声で泣きそうなんだが。泣くのは悪いことじゃないが、問題は場所と時間だな。ペンヨウが喋れる事が周りに見られたら、勇子と咲黄の2人でフォローするの大変そうだし。
それに学校でマホに「はい、落としたぞ」なんて渡したら不自然すぎるだろ。マホはペンヨウが自分から離れたこと知ってるし、それを今落としたよ? みたいに渡すのは怪しいな。
いやでも、素直なマホの事だから簡単に信じそうだな。アイツ大丈夫だよな、将来詐欺に引っ掛かったりしないよな?
「それと俺がマホ達が魔法少女って知ってるのは黙っとくから、ペンヨウも俺が知ってるのは黙っとけよ。もし喋ったら、秘密はどうしたんだーってマホ達に怒られるぞ」
「うっ、それは困るセイ」
「だったら早く寝ることだな」
「分かったセイ」
これで多少は背中を押せただろうか。俺は見て見ぬふりはしなくないが、命を掛けてまで誰かを助けるような行動は出来ない、偽善を抱くだけ抱いている臆病で口だけのな人間だ。だから俺は影でサポートさせてもらう。いつか、口だけでなく行動で示せることを夢見ながら。
「おい起きろ。朝だぞ」
「あと5分寝かせてほしいセイ」
朝、俺はいつもより早く起きてペンヨウも起こそうとしたが、ベタな寝言を言って起きない。鼻提灯も出してぐっすりだなコイツ、ベタな行動をするなら此方も同じ方法で対抗するまでだ。
「あっ、あんなところにオムライスが!」
「何処セイ!?」
「あるわけねぇだろ」
どんだけオムライス好きなんだよコイツ。揺らしても起きなかったクセに、オムライスあるって言った瞬間に上半身起こして辺りを見渡しやがって……。
「ほら。朝飯食って準備したらマホの家に行くぞ」
「学校に行かないセイか?」
「それより先にマホ達に連絡する。ペンヨウが学校に居るってな」
「連絡する必要ってあるセイ?」
「大丈夫だとは思うが、ペンヨウ探すために学校休む! なんてなったらすれ違うだろ」
そうじゃなくとも、マホ達はペンヨウが朝から学校に居るなんて知らないからな。いつものように登校したらペンヨウが学校に居て騒ぎになる、なんて事になったら夜ペンヨウに説明した事がそのまま起こるだろうな。
「確かにそうセイね」
「つーことで案内頼んだ。俺はポストに早く学校来るようにって言う手紙入れとく」
ちょっと原始的、オブラートに包むと少し古い方法かもしれないが、俺はマホ達がスマホを持ってるか知らない。もっと言えば住所も電話番号も知らないので、俺1人では連絡手段が無いのだ。
テレパシー送るとしても、視界内に居る相手にしか送れないから無理である。だからペンヨウに家まで案内してもらう必要がある。実は連絡手段無いのに気付いたのが、朝起きてからだったんだよな。もっと早く気付いていれば他の方法があったかもしれないが……悩んでも仕方無いな。
「早く飯食べていくぞ」
「朝御飯は何セイか?」
「オムライス」
「やったセイ!」
そうして朝飯を食べたペンヨウを引き連れて、俺はマホの家のポストに手紙を入れてから、学校へと向かうのであった。そういやマホって勇子の家に住んでるんだな、表札に「赤元」って書いてあるの見て初めて知った。
今回の話でペンヨウの好物はオムライスと決まりました。
何も考えてなかったけど、なんか作中で凄いオムライス推してくるから好物がオムライスになりました。
え、ペンギンは卵から産まれるからオムライス食って良いのかって? よ、妖精だから。動物じゃなくて妖精だからセーフです!




