第28話 私達の奇跡が絶望に変わる瞬間な件です
「はぁ、はぁ……ニワヨウ、ペンヨウの事を忘れてしまったのですか!」
「そんな言葉は届きませんヨ。怪人ニワトールは僕の命令を聞くだけの存在でス」
「くっ、卑怯ですよ! ペンヨウの友達をこんな姿にして戦わせるなんて!」
怪人の正体が妖精と言う事実、ショックを受けて呆然としていたため、既に先手必勝なんて言葉は頭に残っていませんでした。あるのはニワヨウを元の姿に戻したい気持ちだけ。私はひたすらに言葉を投げ掛け続けてますが、返ってくるのは私に対しての攻撃のみ。
ニワヨウの友達を傷付けるなんて出来ないですし、浄化するにしても元気な状態では防がれるでしょうね。浄化は元々怪人を消滅させるための技、弱ってる状態で無ければ意味は無いですからね。
攻撃が出来ず、浄化も意味を成さない状態。そんな一方通行な状況に苦戦、いや攻撃をかわし切れずにボロボロな状態となって、私はピンチを向かえていました。
「はァ……卑怯なんて言葉を使うのハ、ただの力無き弱者ですヨ。そんな弱者は強者に喰われル、この世の摂理ですヨ」
「ぐっ」
「僕はたダ、勝つためには手段を選ばなイ。それだけの話でス。貴方達のように甘い性格をしている強者ではなク、僕は強者を喰らうただの力無き弱者なのでネ」
「さぁ怪人ニワトール! 魔法少女をこの世から消しなさイ!」
「しまっ」
ニワヨウの攻撃の体勢を取ろうとしていました。私は身体を動かそうとしましたが、私は既にボロボロな状態。頭では理解していても身体は動かず、このままではと、私は思わず目を瞑りました。
「止めるセイ!」
「ペンヨウ!?」
しかしそんな諦め掛けていた私を庇うように、ペンヨウが目の前まで飛んできます。後ろに下がってもらっていましたが、私のピンチに思わず飛び出してきてしまったようです。
「ニワヨウ、ペンヨウセイよ。もしかして、忘れたちゃったセイか?」
「無駄ですヨ。ただの力無き弱者の言葉、怪人へと改造された妖精に届くわけ無いじゃないですカ」
「無駄なんかじゃないセイ! ペンヨウは信じてるセイ、ニワヨウならきっと」
「見苦しいゾ! ただの弱者の言葉ごときで何かが変わるわけ無いだろうガ!」
「いえ、変わります」
まるで自分自身に言い聞かせるような叫びを出すスリュウに、私は力強く言葉を返します。力が無くても言葉で変われることを、私は勇子ちゃんから学びました。いえ、正確には勇子ちゃんを励ましてくれた咲黄ちゃん達から、と言った方が正しいでしょうか。
今でこそ咲黄ちゃんは魔法少女として一緒に戦ってくれていますが、私達がコマツールに敗北して心が折れていた時、咲黄ちゃんは私達が魔法少女なんて知りませんでした。
それでも気に掛けてくれた。咲黄ちゃんだけでなく、ランちゃんや力男さんもそうです。例え力が無くても、誰しもが人を変える力を持っています!
「力が無くても、思いさえあればきっと」
「現実を見れない弱者ですネ。怪人ニワトール、奴らヲ、吠えるだけの弱者を消しなさイ!」
「ペンヨウ!」
私は今にも倒れそうな身体を無理矢理動かし、ペンヨウを抱き抱えて庇いました。私が倒されても、せめてペンヨウだけは……!
「どうしました怪人ニワトール。動きなさイ!」
「ニワ、ヨウ?」
「ペ……ヨ……」
「「ニヨウイ!」」
ニワヨウは一瞬だけ、それも微かに聞こえる程度でしたがペンヨウの名前を呼びました。意識を取り戻したのかと思いましたが、それ以降ニワヨウは動かなくなりました。
私達を攻撃する訳でも、スリュウに対して暴れる訳でもなく、糸が切れた人形のように、まるで置物のようにポツンと。辺りには静寂が訪れ、私とペンヨウはただ、動かなくなったニワヨウを眺めていました。
「…………はァ。運良く命拾いしましたネ、貴方達ハ。興が醒めましタ、決着は後日にしましょうカ」
「ま、待ちなさい!」
スリュウはニワ余を見てから溜め息を付きました。そして何も無い所に黒い空間を出現させて、その空間にニワヨウと一緒に入って姿を消しました。
私は停めようとしますが身体に痛みが走り、その場に倒れこんで顔が地面につきます。なんとか顔だけでも起こした私が見た光景には何も無かったです。
怪人と化したニワヨウも、スリュウも、そして戦いによって折れた木も無くなっており、私の目の前にはスリュウが現れる前、戦いが起こる前に見た光景とまったく同じでした。
「行っちゃったセイ」
「ペンヨウ……」
完全敗北。コマツールの時も合わせるとこれで2回目です。しかし今回は前と違って実力が原因ではなく、ニワヨウが人質のような状態にされているのが原因でした。
それでも私は、自分の無力さを後悔していました。コマツールに完敗してから次は勝てるようにと、力を付けるよう努力はしてきましたが、力だけではどうにもならないですね。
「マホ、どうしてペンヨウ達は怪人と戦ってるセイ?」
「それは」
私はペンヨウの問いに言葉を詰まらせます。私達は今まで怪人が何処から来たかなんて考えたことが無かったです。ただ街で暴れてるからそれを止める、それしか考えていなかったです。
でも怪人と正体は妖精で、私達は妖精を浄化させていた。なら浄化された妖精達は何処に行くんでしょうか。地獄か天国か、はたまた……消滅、するんですかね。長生きしているライヨウなら何か知っているかもしれませんが、それを聞く気力は今の私には無いです。
「ペンヨウはワルインダーの手先だから、街を暴れる悪い奴らだと思ってたセイ。それを魔法少女っていう伝説上の奇跡の力で止める、それが戦う理由だったセイ」
「でも、本当はペンヨウ達と同じ妖精で、ただワルインダーによって操られていただけだったセイ。こんなのって無いセイ、あんまりセイ!」
「…………」
私は言葉が出てこず、ただただペンヨウの叫びを聞き続けます。心が折れようと、力不足だろうとも立ち上がってここまで頑張ってきましたが、待っていたのは絶望でした。
ペンヨウの友達を見捨てて街で暴れるのを指を咥えて見てるか、ペンヨウの友達を消してまで街を守るか。選べるのはどちらか一つだけです。
「ペンヨウは、ペンヨウはもう戦えないセイ。こんなのもう嫌セイ。マホ、これまで世話になったセイ」
「待って、待ってくださいペンヨウ!」
「これ以上はペンヨウの我が儘に付き合わせられないセイ。マホはペンヨウの事を忘れて、勇子達と楽しく過ごした方が良いセイ」
私は空を飛んで何処かへ行こうとするペンヨウを止めようとしますが、身体を起き上がらせようとしますが、ペンヨウは止まることなく、私から離れていきます。
「バイバイセイ」
「あっ」
悔しさと後悔でクシャクシャになりながらも、最後に笑顔を見せてきたペンヨウを見て、私は身体の力が抜けて地面へと倒れこみます。
その表情と共に私は悟りました。ペンヨウも私と同じように無力さを感じていた、故郷を思い出して寂しくなっていた、みんなの力になりたいと思っていた。でも私は気付けなかった。
全て乗り越えたと思っていたけど、ペンヨウは乗り越えられていなかった。私だけが出来たと思ってた、ペンヨウは私達やワルインダーに対して何も出来ず、守られて指を咥えて見てるだけになっていた。
「ペンヨウ、ペンヨウゥ……」
どうして相談してくれなかったのだろう。相談さえしてくれれば、そう思ったが答えは簡単に導き出せた。私達にこれ以上背負ってほしくなった、迷惑を掛けなくなったのだろうと。
ペンヨウからすれば私達は騒動に巻き込まれた人間。自分の行動に巻き込まれて傷付くのが見てられなかったのだろう、だからこれ以上は駄目だと抱えている思いを話せなかった。話したくなかった。
「ぐっ、ううっ! ペンヨウ、ペンヨウゥ……!」
迷惑だなんて、巻き込まれたなんて一度も思ったことはない。私はただ、友達としてペンヨウを助けたかっただけです。貴方の抱えているものを私にも背負わせてほしい、戻ってきてほしい。またペンヨウと話したい。
「はぁ、はぁ! マホちゃん大きな音がしたけど大丈夫!?」
「はぁ、はぁ……勇子ちゃん、ちょっと待ってぇ」
「うっ、うう。うわあああああん!」
悔し涙を流す私の元に、変身した勇子ちゃんと咲黄ちゃんが息も絶え絶えの状態でやってきました。何があったのか聞いてくる勇子ちゃんでしたが、私は答えられずに嗚咽を繰り返すだけでした。
書いた感想:やっべ、やりすぎた。
ペンヨウ曇らせまでの経緯
・1話時点で妖精の語尾は『妖精』と言う言葉の後ろ半分を抜いて、適当に「〇〇セイ」にする。
・可愛いからとモチーフをペンギンにする。
・怪人のモチーフ思い付かない。ニチアサ全然知らないから参考例も無い。あ、そうえばわんぷりの怪人は動物モチーフだな。よし、それ採用。
・やっべ。何話か書いて気付いたけど妖精と怪人のモチーフ被っちまった……あ、そだ。同じ種族にしよ。
めっちゃ適当に決めた結果、なんか良い感じに噛み合いました。こんな綺麗に噛み合うことってあるんですね……ちなみにですが、この作品は適当な設定同士をくっつけて、いかにも「最初から伏線ありましたよ?」ってすっとぼけてたり、最初から最後までをちゃんと考えてある伏線だったりがあります。




