第2話 俺のクラスメイトが身体能力高すぎな件
「マホちゃんマホちゃん、次は体力測定だよ! 早速着替えに行こー!」
「え、えっと何処で着替えれば」
スカイブルー改め、マホ・ツカエールの正体を知ってから早数日。スカイブルーとワニ男の戦いは、ワニ男の出した怪人がスカイブルーに倒されると共に、ワニ男が撤退してスカイブルーの勝ちとなった。
ワニ男が去ったからか、みんな元気になっていた。ご都合主義と言うべきか、若干記憶が曖昧になっているようで、ワニ男やスカイブルーの存在は覚えていないようであった。
「此方だよ此方!」
次の授業は体力測定のため、更衣室で着替える必要がある。マホは更衣室の場所が分からなかったが、赤元に案内してもらうようだ。
もしかしたら着替えと言う言葉を聞いて、誰かが「超能力使って着替えを覗かないの?」と思われるかもしれないが、俺の超能力はそんな便利なものでもないし、覗きに使おうとは思わない。
遠くのモノを見ると言えば千里眼であるが、そもそも俺の千里眼はあくまで指定した相手の現在地を知る程度しか出来ない。イメージとしては、マップアプリの現在地表示に近いだろう。
「更衣室に全速前進だ!」
「いや、廊下は走るなよ」
例の陸上部が廊下を走ろうとしたのを止めながら、俺も更衣室へと向かって着替えるのであった。
「まずは50m走だぜ。適当にペアを作って走るんだぜ」
「マホちゃん、一緒に走ろ!」
「はい!」
最初の種目は50m走。スタートからゴールまで全力で走るシンプルなモノである。そういえば、マホの身体能力はどのぐらい高いのだろうか。
変身すると身体能力が上がるのはお約束ではあるが、俺はマホの元の身体能力を知らない。変身後と同じように運動神経抜群なのか、それとも運動音痴なのか。少し気になってきた。
おっと、あまりマホについて考えていては、ペアが作れずハブれてしまう。しかし行動するのが遅かったのか、既に「だぜ」が口癖の先生の指示通り、大半のクラスメイトがペアを作っていた。あとペアを作ってないので言えば……
「お、力男ペア決まってないのか? なら陸上部のオレと組もうぜ!」
以前マホを部活に勧誘していた、この頭のおかしい陸上部ぐらいだろう。一応言うと陸上部を貶しているのではなく、コイツ個人がおかしいのだ。おかしいと言っているのは、言動が半分近くを占めているが、それ以上に……
「記録4.8秒! 凄いぜ!」
「強靭! 無敵! 最高!」
その運動神経にある。記録だけ言われてもピンと来ないだろうから、補足として12歳女子の平均が9.1秒、17歳男子の平均が7.2秒、世界記録が5.5秒と言えばその凄さが伝わるだろうか。
一時期、コイツは本当に人間なのか気になって超能力で心を読んだり透視で身体の構造を確認してみたが、正真正銘ただの人間であった。しかもこの前ワニ男が『元気パワー』とやらを吸い取っていたが、コイツには効いてないと後日判明した。
なんなら本人が「ワニが現れてからみんな突然動かなくなって心配した」と言っていた。記憶もちゃんと残っているようで、本当に人間か再度疑った。性別も女性だし、もしかして魔法少女の追加枠だったりするのだろうか。
「マホ6.8秒。赤元9秒! 中々速いんだぜ!」
「私の勝ちです」
「うわー! 負けたー!」
いつの間にか二人も走り終わっていたようで、それと共にマホの脚が速いことが証明された。証明されたのだが……
「オレの顔に何か付いてる?」
「いや、なんでもない」
コイツの記録の前ではどうしても霞んで見えるんだよなぁ。てか脚の速いマホについて何か思ったりしないのだろうか。ちょっと心を読んでみるとしよう。
❴(やはりマホちゃんは陸上部に入れ! 陸上部は良いぞ! 陸上部しか勝たん! 陸上部に5人の人間を入れなければ貴方は呪われるでしょう! 陸上部気持ちよすぎるだろ! 貴方は今幸せですか?)❵
よし、何も見なかったことにしよう。それほどまでに陸上部の事が好きなのは分かったが、これ以上見ていると頭がおかしくなりそうだ。
そんなこんなありつつも、体力測定は次の種目へと進んでいく。握力測定、反復横跳び、長座対前屈、幅跳び、etc……全てを話すと長くなるので、ダイジェストに見ていくとしよう。
「オレの握力サンタナの2倍だって。書いといて~」
「お前はゴリラかよ」
数字で言うと1950kg/cm2である。実際にサンタナのそれは指の力ではあるが、あまり細かい所は気にしない方が良いだろう。
「勇子ちゃん、握力計振り切ってしまったんですが……」
「えぇ!?」
マホが何か不安そうに赤元に話しかけているが、安心してほしい。ここに握力計を何周もさせた人物が居るのだから。
「赤くて通常の3倍とはオレの事さ!」
「お前の髪は茶色だろ?」
「勇子ちゃん、凄いですね、この世界の人はああやって分身出来るなんて」
「普通出来ないよ!?」
通常の3倍と言って軽々と分身して、マホが人が分身出来るのはこの世界の常識だと思い込みそうになっていた。分身して目で追えなかったので、記録には無限と書いておいた。
「ボールを相手のゴールにシュート! 超エキサイティング!」
「ゴール何処だよ」
ソフトボール投げでは引いてあった線を軽々と越えて、ボールは星となった。ゴールにシュートと言っているが、そのゴールとはいったい何を指しているのだろうか。
「あまり飛ばなかったなぁ……マホちゃんはどうだった?」
「やりましたよ勇子ちゃん、ボールが枠を越えました!」
マホが枠を越えたと言う超人的な内容を話しているが、どうしてもボールを星にしたコイツの前では霞んで見えてしまう。
「第三部完!」
「終わったのは三部じゃなくて曲だけどな」
最後の種目である20mシャトルランも息一つ切らすことなく軽々としていき、一定の回数走り終わった頃にはシャトルラン中に流れる曲が終わってしまった。
「はぁ、はぁ……勇子ちゃん体力ありますね」
「マホちゃん大丈夫? ほら、水だよ」
一方のマホは身体能力は抜群であったが、体力があまり無いようでこれまでの種目で体力を使っていたのもあってか、30回辺りでギブアップとなった。
ちなみにだが俺は全て平均的な記録であった。俺はあくまで超能力を持っているだけで、身体能力自体はそこまで突出している訳ではない。超能力を使えば一時的に身体能力を上げられるが、ズルをしてまで記録を狙いたい訳ではないので使っていない。
❴(私も陸上部に入れば、あんな風に動けるようになるでしょうか)❵
誰かマホにこの世界の常識を教えてやってくれ。俺は乱れた息を整えながら、そんな事を考えていた。
【例の陸上部】
身体能力が高いだけの一般人。誰がなんと言おうとただの一般人である。あまり新キャラ出しすぎるとだれが誰か分からなくなるので、名前はまだ未定。
最初に変な勧誘させたことでキャラは既に立っているだろうと判断して、再登場。魔法少女とも関係なく「なんなんだお前」枠として採用した。身体能力化け物かてめぇ。




