第101話 ワルインダーの側近が学校に侵入な件です
今回はシリアス回です。ギャグパートは終了しました。
「体育祭、楽しかったですね」
体育祭が終わり、殆どの生徒は帰宅しましたが、未だ学校には体育祭の後片付けをする生徒会や運動部の姿、自分の子どもの記念撮影をする保護者がチラホラと残っています。
私は部活にも生徒会にも所属していていないので、後片付けする必要が無くてすぐにでも帰れますが、咲黄ちゃんは生徒会ですからね。
咲黄ちゃんだけ残して帰るのは悪いので、私達も後片付けをする事にしました。
ただ私はその、えっと……少しお手洗いに寄っていたため、咲黄ちゃん達が後片付けをしている校庭ではなく、校舎内へと居ました。
もう咲黄ちゃん達は後片付けを進めているでしょうからね。早く戻って手伝わなければ!
あ、そうえば保健室に寄るのを忘れていました。力男さん、ランちゃんに引き摺られていましたからね。
怪我こそは無くて土まみれになっただけのようでしたが、念には念を体育祭が終わってから保健室に行ってもらいました。
ルールの穴を突くような卑怯な作戦をした罰、とでも言うべきなのでしょうが、友達が保健室に行ったとなると少し心配ですね。
後片付けよりも先に、様子を見に行きましょうか。
「失礼」
「え? はい。どうし……ッ!」
私は校庭から保健室へと目的地を変えて、下駄箱から取り出そうとした外履きを仕舞おうとした時、後ろから声を掛けられます。
何処か聞き覚えのある声、話しかけられるまで一切分からなかった気配。
私は疑問と緊張を胸に抱きながら、ゆっくりと後ろを振り向いて目を見開きます。
「コマツール、どうしてここに!」
「どうしても何も、今日は貴方達に用事がありましてね。体育祭と言うイベント事に乗じて、学校に入らせて頂きました」
私に声を掛けてきた人物はコマツールでした。
咄嗟にコマツールと距離を取りますが、今の私はペンヨウを連れていません。
片付けをしている最中、ずっと外で待たせるのは暑いだろうと、荷物ごと一緒に教室へと置いてきてしまいました。
この学校は校庭から下駄箱は見えない構造となっているので、勇子ちゃん達はコマツールが居るのに気付けないでしょうし、ペンヨウ達は教室に居るので魔法少女に変身する事が出来ません。
仮に変身出来たとしても私1人ではコマツールを押さえきれないでしょう。
「そんな警戒しないでください。今回は戦いに来たのではなく、1つ予告をしに来たのですよ」
「予告、ですか?」
「ええ。2日後の夜、この学校を破壊します」
「なっ!」
今までワルインダーはペンヨウ達妖精や私達を狙ってきましたが、直接建物を狙うような事は無かったです。
建物自体が傷付いたり、崩れたりする事自体はありましたが、それはあくまで戦った際に投げ飛ばされて建物に激突した衝撃が理由だったり、ショッピングモールの時のように建物内で戦闘した場合です。
まさか直接建物、しかも学校を狙ってくるなんて。
私はそんな事させないと、コマツールに向かってパンチを繰り出そうとしますが、それよりも先にコマツールが私に向かって開いた手を出して「動くな」と静止してきます。
「変身してない貴方程度、簡単に倒せますが……もしここで戦うとなればこの学校に居る人間達はどうなるでしょうかね」
「くっ……」
そうでした。頭に血が昇ってそこまで考えていなかったですが、体育祭が終わったとは言え、まだ学校には多くの人達が残っています。
その人達を庇ってまで戦うとなれば、例えこの場に4人居てもコマツールと渡り合う所の話ではないでしょう。
不幸中の幸いと言うべきなのは、少なくともコマツールはこの場では手を出すつもりはない事でしょう。
私達程度余裕で倒れると言う余裕の現れなのか、それとも別の目的があるのかは分かりませんが、下手に刺激しないようにすべきですね。
「破壊を止めたければ方法は1つ。私は倒すことです」
「…………何故、わざわざ警告なんかを?」
「私が貴方達の実力を確かめたいからですよ」
「どういうことですか?」
コマツール、いやワルインダーからすれば私達は倒すべき相手。それなのに「実力を確かめたい」とは、いったい何を考えているのでしょうか。
私達が脅威であるのか確かめたいのでしょうか、それともリュウさんのように総帥を止めてほしくて実力を測っているのか……むむむ、コマツールの考えが読めませんね。
「質問には答えました。それでは2日後、もう一度この学校で」
「待ちなさいッ!」
私の静止を無視し、コマツールは眩しい光と共にその姿を消してしまいました。
まるで最初からその場に居なかったかのように。
「コマツール……!」
私はコマツールの名前を呟き、強く拳を握ります。
何度戦っても手も足も出なかった記憶が甦りますが、今の私達はあの時とは違います。
例え醜いほどボロボロにされても、力の差が埋まらなくとも、私はこの学校を守ります。私は貴方なんかに倒されたりしません!
「ん? あれマホ、そんな所で何やってんだ?」
「え? あ、力男さん。な、なんでもないですよ」
私が既にその場を去ったコマツールへ、内心啖呵を切っていると、保健室で身体を見てもらった後の下駄箱に力男さんが現れました。
もしここで私が「下駄箱でコマツールに会って2日後の夜に学校を破壊する予告され、それを止めたければ夜の学校に来て自身を倒せ」なんて言われた。と喋れば、力男さんを心配させてしまいますからね。口が裂けても今あった事は喋れません。
お口チャックですよお口チャック。そうすれば力男さんにはなにがあったのは分かりませんからね。
それこそ私の心が読まれない限りは力男さんにバレないでしょうね。ええ!
「ふーん……そっか」
「そ、それより身体の調子はどうですか?」
「特に問題ないな。ただ、後でランに元気な所を見せておかないとなぁ。事故とは言え、俺を土まみれにしてちょっとショボくれてたし」
「そうですね、そうした方が良いかと。では力男さん、私用事があるので。それでは!」
「おう、じゃあな~」
なんとか誤魔化せました。
これ以上ここに居ては口が滑ってしまいそうですからね。急いでこの場を離れるとしましょうか。
力男さんの元気な様子を確認し終わった私は、そそくさと逃げるようにしてその場を後にして、勇子ちゃん達にさっきの出来事を伝えようと、校庭へと向かいます。
そして私が居なくなった下駄箱には力男さんが1人だけ残っており、私が去った後を見て困ったような顔をして後ろ髪を掻きます。
「はぁ……なぁんか大変な事になってるな。ひとまず、テレパシーで読んだ内容をガク先輩に伝えて、その後でランの所行くか」
そう独り言を呟いた力男さんは、校庭へ向かうとした脚を、科学部の部室へと方向を変えるのでした。
マホは「まぁ心の中なんて読まれないですからね!」と思ってるけど、力男からすれば「いや、全部心で言ってるから」と言う。マホ達は超能力の事知らないからね、仕方ないね。




