第10話 俺のクラスメイトがテスト中な件
「これが、こうだから……あぁいや違う」
「神様仏様暇人様お願いします。オレっちの点数を上げてください」
テスト本番。朝のHRが始まるまでに、少しでも点数を上げようと教科書を読んで勉強する者。神頼みをして良い点数を取れるよう祈る者が居たりと、みんなテストにのみ意識を向けていた。
「微分! 積分! 二次関数!」
「そんなのテストに出ねぇよ」
一方でランは謎の言葉を言っていた。それが出るのは高校からだから、中学のテストで出ることは無いだろう。逆に出たら先生を訴えたい。
これがおふざけなのか、ランなりの神頼みなのかは見当がつかないが、テストに対して緊張はしているのだろう。俺の耳元で言われ続けるのは若干鬱陶しくはあるが、放置しておこう。
「マホちゃん、勇子ちゃん。テスト大丈夫そう?」
「咲黄さんに教えてもらいましたからバッチリです!」
「私はものすごい不安だよ~、咲黄ちゃんは自信あるの?」
「何回も復習はしたけど、自信はあまり無いかな」
後ろから抱きつかれて、積分だの、二次関数だの言われて鬱陶しい此方とは違い、あの三人は微笑ましい光景である。
「なぁ、力男」
「どうした?」
そうして3人の方を眺めていると、ふと背中に居たランが俺の前に回り込んできて、真剣な顔と共に重い声で俺の名前を呼んだ。
「オレ、このテストが終わったらお前と飯食いに行くんだ」
「死亡フラグ立てんな」
飯ぐらいいつでも行ってやるから、フラグ立てるのはマジで止めろ。やけに真剣そうだから、先にテレパシーで言おうとしてること知るのはズルいと思って、テレパシー使わなかったのがバカみたいじゃないか。
「朝のHRを始めるんだぜ~」
飯行く約束をしていると、先生が教室へとやって来た。テスト直前だからなのもあってか、話す内容はテストに関する注意事項ぐらいであった。
さて、中学校生活を2回も経験しているんだ。俺も多少のプライドはある、大人げないかもしれないがテストに手を抜くつもりも、わざと間違えるつもりも無い。全力で行かせてもらうとするか。
「終わっっっっった~!」
勇子が伸びをすると共に、大きな声を出す。授業中なら先生から注意の1つくらい飛んできても不思議ではないが、今はテストが終わった状態、つまりは放課後である。
先生はテストを回収して教室に居ないし、クラスには勇子と同じように伸びをしたり、机に身体を預けている者も居る。みんなテストが終わって嬉しい気持ちは同じなのだろう。
「み、みんな。テストどうだった……?」
遊ぶのも我慢して勉強をしていたのだろう。我先にと教室から出ていく生徒達が居る中、唯一教室へと入ってきた人物が居た。長神である。
長神はオドオドとした様子で、教室に入ってくると俺たちにテストの自信について聞いてきた。テスト自体は終わったが、自分の教え方で身に付いていたのか心配なのだろう。
教えた責任と自分に自信が持てない性格もあってか、テストが終わったと言うのに、長神の肩には力が入っていた。しかしそんな不安もすぐに晴れた。
「バッチリだったよ!」
「自信ありです!」
「良かったぁ」
2人が自信満々に問題ないと言ったからである。その言葉を聞いてようやく肩の力が抜けたようで、長神は胸に手を当てて大きく息をついた。
「ランはどうだったんだ?」
「分からない選択肢問題は全て勘で書いた。オレの勘が当たる確率は100%、外れるなんて有り得ないのさ」
「データキャラ止めろ」
ランは相変わらずであったが。あとデータキャラの真似をしたいならデータを揃えてくれ。勘を頼りにするキャラなんて、巫女だけで充分なんだよ。
「テストも終わりましたし、今の私に怖いものは無いです!」
「うん、そうだね!」
「あ、あの~」
テストが終わって嬉しそうなマホと勇子であるが、そんな二人に気まずそうに声をかける長神。今から長神が言うことは二人を上げて落とす事にはなってしまうが、今知っていた方がダメージは少ないだろう。
「どうしたの? 咲黄ちゃん。そんなに暗い顔して。テストはもう終わったんだから、そんな顔しなくても大丈夫だよ!」
「テスト、来月もあるけど大丈夫そう?」
空気が凍った。悪は追い払ったと言わんばかりの笑顔で、声をかけてきた長神を元気つけようとした勇子とマホとランがその場で固まる。
勇子のその台詞は魔法少女してる時に頼みたいものだ。大丈夫だの、暗い顔をしなくて良いだの、シリアス時に言えばカッコいいのだが、これではただのギャグである。
「は、ははは。う、嘘ですよね。今終わったばかりですよ」
「定期テストは、1年間の間に中間テスト2回、期末テスト2回、学期末テスト1回の計5回あるんだ。それで今回やったのが中間テストだ」
「期末テストは出題の範囲が狭いけど、その分難しくて教科数も増えるよ?」
3人は机に突っ伏して耳を塞いだ。聞こえないフリをするな。つーかマホは異世界人だから兎も角として、勇子とランはテストの事知らなかったのかよ。
「次のテストも私が勉強教えるから、一緒に頑張ろう……?」
「「「…………はい」」」
どう頑張ってもテストからは逃げられないと悟ったのか、3人は諦めたかのように重苦しく声を出すのであった。




