表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/59

14、覚醒の夜

 再び夜が訪れた。

 暗闇の中、静まり返ったはずの屋敷に、かすかな物音が混ざる。



 ――ガタッ……ギシ……。



 それに続くように、低く押し殺した呻き声が聞こえてきた。



 「……っ、う……ゔあ……」



 (……! やっぱり……また!)



 間違えようのない、ノエルの声。

 苦しそうなその響きに、胸の奥がざわめく。



 私は慌ててベッドから降り、ドアへ駆け寄った。

 ノブに手をかけ、力いっぱい回す。



 ――ガチリ。



 外側から鍵がかかっている。

 偶然じゃない。明らかに、故意だ。



 「ノエル! 大丈夫!? 返事をして!」



 私は、ドアを激しく叩く。

 返事の代わりに、壁を叩きつけるような鈍い音が響く。

 心臓が嫌な音を立てた。



 (……今は、理由なんてどうでもいい)



 ノエルは何かを隠している。

 それはきっと、私にとっても危ういことなのかもしれない。

 でも――あの時、抱きしめられた温もりは、嘘じゃなかった。


 


 「……っ、セレナ……っ!!」

 「よかった、本当によかった……!」



 震えた声。必死な抱擁。

 思い出すだけで胸が熱くなる。


 全部、本物だった。



 ……それなのに。


 

 (私は......何も、返せていない)



 心臓が、どくんと重く響く。



 守られるだけじゃ、いやだ。



 (あんなに、苦しそう......!)



 無力なまま、彼を見ているなんて――もう嫌だ。



 

 私は......助けたい。

 たとえ何を隠していても、どんな理由があっても――



 その手を、離したくはないの......!



 その瞬間、胸の奥がじん、と熱を帯びた。

 脈打つたびに光がにじみ、視界の端から零れ落ちる。



 「……ノエル……!」



 名前を呼ぶと同時に、眩い光が弾ける。



 その瞬間。



 ――ドンッ!!!!



 轟音とともに、私の手から放たれた力がドアを打ち砕いた。

 木片が舞い、床に散らばる。



 「……え……」



 ドアが壊れた?

 そんな実感も追いつかない。



 


 ――「……っ、は……」


 微かに漏れる、苦しげな息。



 


 (ノエル......!)



 待っていて。今、行くわ。


 



ブクマ&評価ありがとうございます!

とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ