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6.魔法の種子の研究しちゃいます!

 生徒会の新しい一員として加わったエレノアに、生徒会の面子はそれぞれのやり方で接し始めた。


 中でも一番奇妙だったのは、会計のノア・フォーチュンだった。


 彼はエレノアに話しかけるでもなく、ただじっと彼女を観察している。

 その視線はまるで、珍しい標本を眺める研究者のようだった。


 ある日、生徒会室の図書館で古文書を読んでいたノアは、エレノアに声をかけた。


「エレノア、君の加護について聞きたいことがある」


 ノアは、無表情にそう切り出した。


 彼がエレノアに興味を示したことは、生徒会メンバー全員にとって驚きだった。


 ノアは、魔法の効率や経済的価値にしか興味がない人物だと思われていたからだ。


「この古文書に記されている『大地の巫女』……その能力は、君の加護に酷似している。

 だが、論理的な解析が不可能だ」


 ノアは、持っていた古文書の一ページを指差した。


 そこには、幻の魔法植物‘スターライト・シード’の記述があった。

 その種子は魔力を吸収し、周囲の土地を肥沃にするというが、いかなる魔法使いも発芽させることができなかった。


「この種子を育てたいんだ」


 ノアは、宝石のように輝く小さな種子を見せた。


 エレノアは、彼の真っ直ぐな好奇心に圧倒されながら頷く。


「わかりました。お手伝いしますね」


 ノアとエレノアの「実験」は難航した。


 ノアは‘スターライト・シード’の種を鉢植えに蒔いた。

 魔力の流れや温度、湿度を完璧にコントロールし、あらゆる魔法を試すが、種子はピクリともしない。


「なぜだ……論理は完璧なはずなのに」


 焦燥感を露わにするノアに、エレノアはそっと種子に触れる。


「精霊さんが……寂しいって言ってます」


 ノアは、その言葉に鼻で笑った。


「そんなの非論理的だ。精霊など、ただの魔力の集合体だろう」


 だが、エレノアは気にせず、優しく種子に話しかけ、加護を注ぐ。

 彼女の指先から、温かい光が種子に流れ込んでいった。


 それから毎日、万策尽きたノアを横目にエレノアは根気よく加護の力を注ぎ続けた。


 数日たった頃、種子から、かすかに光を放つ小さな芽が顔を出した。


 ノアは、信じられないものを見るように、その芽を見つめていた。

 彼の表情には、完璧な理論が覆された驚きと、未知の現象に対する純粋な興奮が浮かんでいた。


「……君の力は、僕の知らない法則で動いている!」


 ノアは、エレノアに一歩近づき、彼女の手を取った。


「君は、僕の研究対象だ! 僕が君の能力を解析する。君は、僕のそばにいて、その力を示し続けてくれ」


 その言葉は、まるで告白のようでありながら、研究者としての独占欲に満ちていた。


 ノアにとって、エレノアは単なる生徒会の一員というだけではなく、彼の知的好奇心を永遠に満たしてくれる唯一無二の存在となったのだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


少しでもエレノアたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回は、ソフィアとの絆が深まる場面が描かれる予定です。お楽しみに!


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