ED.フェリックス・ド・ラ・ヴァル「二人のユニティ」
王国の危機を救った後、エレノアはフェリックスとの公的な関わりが増えていた。
王族としての彼は、多忙な日々を送っている。
ある日、生徒会室で書類仕事を終えたエレノアは、フェリックスが窓辺で静かに月を見上げていることに気づいた。
「フェリックス様、お疲れですか?」
声をかけると、彼は優しく微笑んだ。
「いや。君がいてくれると、心が安らぐんだ。君の畑の土に触れている時みたいに……」
フェリックスは、エレノアの手をそっと取り、その指先にキスを落とした。
「君は、僕に『一人の人間』として生きる喜びを教えてくれた。
王族としてではなく…ただ、君の隣で、君の笑顔を守る男として、生きていきたい」
彼の瞳は、王子のそれではなく、一人の男性としての真剣な愛に満ちていた。
「エレノア、君を……僕の『希望』として、隣にいてほしい」
彼の告白に、エレノアの心臓は高鳴る。
彼の指が、エレノアの頬を優しく撫でた。
「愛している、エレノア」
フェリックスの唇が、エレノアの唇に、そっと触れた。
王国の未来を背負う王子と、土を愛する貧乏貴族の少女の、甘い誓いが、月の光に照らされていた。
卒業を目前に控えたある日。
第一王子が正式に王位を継承し、フェリックスは王位継承権から離れることになった。
彼の公的な立場に、大きな変化が訪れたのだ。
「エレノア。僕の兄上が、僕に新しい爵位を授けてくださる」
フェリックスは、エレノアの手を握りしめ、優しく微笑んだ。
「その名は、『セント・ユニティ公爵』。学園の名を冠した、特別な公爵位だ。
君と僕が、この王国に『協調』をもたらした功績を称えて、与えられた」
それは、王族としての重圧から解放され、エレノアと共に生きる道を選んだフェリックスと、土と共に生きるエレノアの、二人の未来を象徴する称号だった。
「僕の公爵領は、王国の中でも特に土地が痩せていた場所だ。
だが、君の加護があれば、きっとそこを豊かな土地にできる」
フェリックスの瞳は、王子のそれではなく、一人の男性として、愛する人と共に未来を築く決意に満ちていた。
そして、卒業の日。
フェリックスは、王族としてのすべての儀礼を終えた後、エレノアを聖なる大樹のもとへと連れて行った。
「エレノア。僕はもう、王子ではない。ただのフェリックスだ。
君を、僕の公爵夫人として、隣にいてほしい」
彼は、エレノアの手を取り、王家の紋章が入った指輪ではなく、ユニティ魔法学園の校章が刻まれた、シンプルな指輪を贈った。
「君と僕が出会ったこの場所で、君と僕の『ユニティ』を誓いたい」
エレノアは、彼の真っ直ぐな瞳に、涙を浮かべながら頷いた。
貧乏貴族の少女は、土を愛する心と、愛する人への想いを胸に、公爵夫人として新たな道を歩み始めるのだった。
彼女の加護によって、公爵領は豊かな大地へと変わり、二人は、愛と協調に満ちた幸せな日々を、永遠に築いていく。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
少しでもエレノアたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は、クロードとのエンディングが描かれる予定です。お楽しみに!
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