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2.畑仕事と生徒会活動、どうしよう?!

 温室で見せたエレノアの才能開花と生徒たち憧れの生徒会の絶賛はエレノアを一般生徒から、一躍脚光を集めることとなっていた。


 魔法植物栽培コンテストから数日後、エレノアは生徒会室に呼び出された。


 生徒会室は学園の中央棟の最上階にあり、窓からは広大な学園の景色が一望できる位置にあった。


 一般生徒がその部屋に足を踏み入れることはほぼない。重厚な扉を前にエレノアは大きく深呼吸して、ノックした。


 中から、副会長のクロードが扉を開けてくれた。室内に誘われ、エレノアはゆっくり足を踏み入れた。


 部屋の中央には大きな円卓が置かれ、その周りに座り心地が良さそうな椅子が等間隔に配置されていた。

 壁一面には歴代生徒会長の肖像画が飾られ、その中にフェリックス会長のものも並んでいる。


 部屋の片隅には大きな暖炉があり、そのそばにはソファセットが置かれていた。


 円卓の上には書類が整然と積み上げられている。書類の上には様々な色のインクでサインやメモが書き込まれ、生徒会の活発な活動ぶりがうかがえた。


「やあ、エレノア・アースフィールド嬢。本来、こちらから出向かなくてはならないところ、足を運んでもらうことになって申し訳ないね」

 フェリックスは甘い笑みを浮かべて、顔を上げた。


 ソファを進められ、フェリックスの正面に座ると、書紀であるソフィアが良い香りのする紅茶をエレノアの前においた。


「早速で申し訳ない」

 促され紅茶を飲んでひと心地ついたところで、フェリックスは真剣な表情を浮かべ、エレノアを見つめ口を開いた。


「今日来てもらったのは、他でもない。君のその力についてだ。君の土魔法はすばらしい。

 ユニティ魔法学園にとって、そして王国にとって大きな財産となる。ぜひ、生徒会に入って、学園の発展に貢献してもらえないだろうか」


 そう言うとフェリックスはエレノアに手を差し伸べた。


 エレノアは、驚きと戸惑いで固まってしまう。生徒会に勧誘されるなんて想像もしてなかったのだ。


「……わ、私なんかが、生徒会にですか……?」


 クロードやライエルといった名だたる生徒会メンバーの視線を感じ、思わず俯いてしまう。


 しんと静まりかえる生徒会室でエレノアはどうしようか思案にくれる。


 生徒会に誘われるなんてとても光栄なことだった。

 しかし、簡単に頷くことはできなかった。彼女には放課後、やらなくてはいけないことがあるのだ。


「……お気持ちはとても嬉しいのですが、私には、生徒会に入ることはできません」


 心苦しかったが、断るしかなかった。家族全員の食事がかかっているのだ。


「君は貴族の務めを放棄するつもりなのか」


 頭上から、ライエルの厳しい声が聞こえてきた。

 エレノアの断りに、生徒会メンバーは戸惑っているようだった。


 理由を言えばいいのかもしれない。

 でも、家族のために畑仕事をする必要があるなんて言えなかった。それは貴族であるアースフィールド家の恥を公にしてしまうことだから。


「あの」事情を察したソフィアが間に入った。「エレノアには、どうしても外せない用事があるんです」


 エレノアの級友であるソフィアは断りの理由を薄々勘付いていた。彼女が魔法学園で育てている植物たちを知っていたから。


「君の事情を聞かせてはくれないか? 我々は力になりたい」

 エレノアとソフィアの様子に何か事情があると察したフェリックスは優しく問いかけた。


 少し逡巡して、エレノアは意を決する。

 生徒会活動に時間を割くことが難しい理由を、曖昧にだったが正直に伝えることにした。


「……学費を稼ぐために、どうしても放課後は畑仕事をしなければならないのです。生徒会活動に十分な時間を割くことはできません」


(この学園の生徒が、なぜ学費を…?)


 その言葉に、生徒会メンバーは驚きを隠せなかった。貴族階級が大半を占めるこの学園の生徒がそのような理由を口にするをは思っても見なかったのだ。


「――なるほど。では、君の畑仕事の時間を確保した上で、生徒会活動に参加してほしいのだがどうだろう。生徒会としての業務は、君の能力を活かせるものに限って構わない」


 エレノアの事情を汲んで、フェリックスは改めて勧誘の言葉を口にする。


「……無駄な時間になりかねません。しかし、会長がそこまで仰るのならば……」


 ため息混じりではあったが、クロードも賛同の意を表した。


「……」


 ライエルも無言で頷いた。彼女の行動が「務め」であると知り、その評定は少し和らげる。


 そして、ソフィアがエレノアの背中を押す。


「ありがとうございます。――どうぞよろしくお願いします」

 エレノアは深く頭を下げた。


 こうして、エレノアは「放課後の畑仕事の時間を確保すること」を条件に、生徒会への参加を承諾したのだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


少しでもエレノアたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回は、フェリックス王子との絆が深まる場面が描かれる予定です。お楽しみに!


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ソフィア君いきなりエレノアの級友であることになりもうした。前回名前しか出てない優しい眼差し以外何も活躍してなかったけど級友としてそれで良かったのかな?もっとエレノアの観察したり手伝いしたり魔法植物の品…
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