18.ソフィアの想いと、精霊の帰還
すべての準備が整い、生徒会メンバー全員が聖なる大樹のもとに集結した。
大地の病は王国を蝕み続けており、これが最後の希望だった。
エレノアは、大樹に手を触れ、目を閉じた。
彼女の加護は、生徒会メンバーの協力によって強化されている。
微かな精霊たちの声が、今、はっきりと聞こえてくる。
『……怖い……』『……戻りたくない……』
精霊たちは、一度傷ついた大樹に戻ることを恐れていた。
エレノアの呼びかけだけでは、彼らを動かすには力不足だった。
その時、エレノアの隣にいたソフィアが、静かに彼女の手を握った。
「エレノア、あなたは一人じゃないわ。みんなの想いを、一つにしましょう」
ソフィアの言葉に、エレノアは目を開けた。
彼女の視線の先には、エレノアを信じ、共に戦ってきた仲間たちの姿があった。
「エレノア。君の力を、僕たちに預けてほしい」
フェリックスが、真っ直ぐな瞳でエレノアを見つめる。
彼の魔力には、王族の責務を超えた、エレノアへの信頼と、民への温かい愛情が満ちていた。
「……僕の完璧な理論では、君の力は理解できない。だが、君の『感覚』がなければ、この世界は完璧にならない」
クロードが、初めて感情を露わに告げる。
彼の言葉は、エレノアの存在が、彼にとって不可欠な「真実」であることを示していた。
「貴女の正義は、私の規律に勝る。この力は、貴女が思うように使いなさい。私が、盾となる」
ライエルが、固い決意を表情に浮かべ、エレノアを守るように前に立つ。
彼の正義は、規律ではなく、エレノアという存在を守ることになっていた。
「君の力は、僕の理論を超越した『解析不能な謎』だ。その謎の解明を、君にしかできない。
だから、僕の傍にいてくれ」
ノアが、エレノアの手を握りしめ、まるで告白のように独占欲に満ちた言葉を囁く。
それぞれの想いが、エレノアの心に流れ込んでくる。
それは、生徒会メンバーそれぞれの、エレノアに対する「愛」の言葉だった。
エレノアは、彼らの想いを全て受け入れた。
彼女は、自身の加護を、最大限に高めた。
「精霊さん……私たちは、ここにいます。みんなの『想い』が、あなたたちの温かい『家』です!」
エレノアの言葉に、生徒会メンバーの魔力が呼応する。
フェリックスの希望の光、クロードの完璧な調和、ライエルの規律の盾、ノアの真実の解析……そして、ソフィアの友情。
彼らの力が一つに束ねられ、エレノアの加護に流れ込む。
大樹が、まばゆい光を放ち始めた。
その光は、王国中に散らばっていた精霊たちを優しく包み込み、大樹へと導いていく。
「……ああ、聞こえる! 戻ってくる!」
エレノアの耳に、精霊たちの喜びに満ちた歌声が響き渡る。
大地の病は癒え、枯れていた植物が次々と生命力を取り戻していく。
この日、ユニティ魔法学園の名は、王国中に響き渡った。
エレノアは、生徒会という「乙女ゲーム」のような日常の中で、それぞれのキャラクターが持つ魅力に触れ、彼らと「ユニティ」を成し遂げた。
彼女の平々凡々な日常は、もうそこにはなかった。
代わりに、彼女の傍には、かけがえのない仲間たちがいた。
この物語は、今、ようやく本当のプロローグを終えたのだ。
エレノアは、生徒会メンバーに囲まれながら、夜空に輝く満月を見上げていた。
「これで、もう畑仕事、しなくていいんじゃない?」
ソフィアが優しく尋ねると、エレノアは笑って首を横に振った。
「いいえ。みんなで育てた作物は、きっともっと美味しいから」
その言葉に、生徒会メンバー全員が、優しい笑顔を浮かべるのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
少しでもエレノアたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は、閑話を挟む予定です。お楽しみに!
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