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17.ノアと「真実の解析」

 ライエルの加護によって、大樹の治癒作業は妨害を受けることなく進んでいた。


 しかし、ノアは、その回復の波長に、再びわずかな乱れが生じていることに気づいた。


「……おかしい。この波形は、精霊の力が、どこかに留まっていることを示している」


 ノアは、魔法の解析装置を手に、大樹の魔力を測定していた。


 彼の完璧な理論と解析魔法は、精霊たちの力の源が、大樹に完全に戻っていないことを示していた。

 そして、その力が留まっている場所を突き止めた。


 それは、エレノアが隠れて畑仕事をしていた、学園の片隅の畑だった。


「なぜだ……なぜ、あのような土に、精霊の力が留まる?」


 ノアは、理解不能な事態に、焦燥感を募らせていた。

 彼の頭の中では、あらゆる論理が組み合わされるが、答えは導き出せない。


 その時、エレノアはノアに話しかけた。


「あの畑の精霊さんたちは、とても穏やかです。

 きっと、あそこが気に入ったんだと思います」


 ノアは、エレノアの言葉を「非論理的」だと一蹴しようとしたが、彼女の言葉の裏にある「真実」に、彼の解析魔法が反応していることに気づいた。


「君は……どうやって、精霊の気持ちがわかる?」


「えっと…言葉じゃなくて、心で感じるんです。

 ポカポカ温かいとか、ふわふわするとか……」


 エレノアは、ノアにとって曖昧な言葉で、精霊の感覚を説明した。


 ノアは、その言葉を一つ一つメモに取り、解析装置に入力していく。


「『ポカポカ温かい』……魔力反応、+3.7。『ふわふわする』……魔力振動、-2.1……」


 ノアは、エレノアの「感覚」を、自身の「論理」に無理やり当てはめていく。

 そして、一つの結論にたどり着いた。


「……君の加護は、精霊にとっての『家』のような存在だ。

 精霊たちは、君の加護に触れることで、安心感を得ている。

 だから、君の畑に留まっているんだ」


 ノアの言葉に、エレノアは目を見開いた。

 自分の加護が、精霊たちにとっての「居場所」だったなんて、考えたこともなかったからだ。


「エレノア、君が、精霊たちに大樹に戻るように、説得してくれ」


 ノアは、エレノアにそう頼んだ。


 エレノアは、畑に向かい、精霊たちに話しかけた。


「お願い、大樹に戻ってあげて。王国のみんなが困っているの…」


 しかし、精霊たちは『ここが一番心地いい』と、頑として聞き入れない。


 その時、ノアは、エレノアの傍に立ち、彼女の能力を解析していた。


「……どうやら、君の『共感』の力を使えば、精霊たちを大樹へ導くことができるようだ」


 ノアは、エレノアの手を握りしめた。


「君の力は、僕の理論を超えている。君の温かさだけが、精霊たちを動かせる」


 ノアにとって、エレノアはもはや単なる研究対象ではなかった。

 彼の知的好奇心を満たす「謎」であり、彼の孤独を埋めてくれる唯一無二の「真実」だったのだ。


 彼は、エレノアの能力だけでなく、その優しさと温かさに、深く惹かれていた。


 この日、ノアの「完璧な世界」に、エレノアという「非論理的な愛」が、確かに刻み込まれたのだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


少しでもエレノアたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回は、ソフィアとの友情が深まる場面が描かれる予定です。お楽しみに!


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