16.ライエルと「規律の盾」
大樹の回復が進むにつれ、学園には不穏な空気が漂い始めた。
大地の病を悪化させようとする、不純な魔力の気配。
その魔力は、生徒会メンバーの作業を妨害し、大樹の治癒を阻もうとしている。
「この魔力……明らかに悪意がある。目的は、我々の作業の妨害だ」
クロードが解析魔法で不純な魔力の正体を突き止める。
その魔力は、生徒会メンバーに狙いを定め、彼らを攻撃しようとしていた。
ライエルは、静かに剣に手をかけた。
「私が防ぎます。規律と正義に反する存在は、私が排除する」
彼は、一瞬の迷いもなく、エレノアたちの前に立ちはだかり、強固な防御結界を張り巡らせた。
彼の魔法は、風紀委員長としての揺るぎない信念に支えられていた。
不純な魔力が、結界に激しくぶつかる。結界は揺らぎ、ライエルの顔に緊張が走る。
「このままでは……!」
エレノアは、その様子を見て、ライエルが一人で皆を守ろうとしていることを悟った。
彼は、誰にも頼ることなく、規律という名の重い責務を、一人で背負おうとしていたのだ。
「ライエル様! その結界……少しでも、私に手伝わせてください!」
エレノアは、ライエルの後ろから、彼の背中にそっと手を触れた。
「何をする! 今は規律を守るのが……」
ライエルは振り向こうとするが、エレノアは構わず、彼の魔力に自分の加護を重ねていく。
「大丈夫です! 私の精霊さんが……ライエル様を応援していますから!」
エレノアの加護がライエルの魔力に注ぎ込まれると、彼の防御結界は、これまでにないほどの温かさと、力強い光を放ち始めた。
その光は、不純な魔力を弾き返し、やがてその存在を消滅させた。
ライエルは、自分の魔力に宿ったエレノアの優しさに、驚いた。
規律とは、他を排除することで秩序を守るものだと思っていた。
だが、エレノアの力は、「誰かを守りたい」という純粋な想いを、力に変えていたのだ。
「貴女は……なぜ、そこまで……」
ライエルは、エレノアに顔を向けた。
彼女は、ライエルが剣の稽古を頑張っていると知って、こっそりハーブを育ててくれていた。
彼女の行動は、いつも誰かのためだった。
「規律を守るのが、私の役目です。だから、誰かを傷つける魔法なんて……使いたくないんです」
エレノアの言葉に、ライエルは心を揺さぶられた。
彼は、エレノアのひたむきな優しさと、誰かを守ろうとする強さを知ったのだ。
「……貴女は、私が守る」
ライエルは、規律を破る者を罰する風紀委員長ではなく、エレノアという存在を「正義」として、自らの盾で守ることを決意した。
彼の心の中で、エレノアは特別な存在になったのだ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
少しでもエレノアたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は、ノアとの絆が深まる場面が描かれる予定です。お楽しみに!
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