1.魔法植物育ててみました
※この物語は、一人の少女が、かけがえのない仲間たちと共に、運命を切り開き、自身の力と愛を見つけていくお話です。
乙女ゲームのような、きらめく学園生活が描かれていきます。
よろしければ、エレノアたちの学園生活をのぞいてみてください。
ユニティ魔法学園の校舎に、魔法の植物の甘い香りが満ち始める頃、エレノア・アースフィールドの心は少しばかり沈んでいた。
「魔法植物栽培コンテストか……」
学園では年に一度、各クラスが魔法植物を育て、その出来栄えを競う一大イベントが開催される。
しかし、エレノアのクラスが割り当てられたのは、‘グリム・ポテト’という、成長が遅く、魔法の力も扱いにくいことで有名な植物だった。
「どうせうちのクラスじゃ無理だよね…」
「やるだけ無駄だよ」
クラスメイトたちの落胆の声が響く中、エレノアは一人、学園の片隅にある小さな温室へと向かった。
彼女の指先が土に触れると、じんわりと温かい感触が伝わってくる。
土の精霊の加護。それは、彼女の家系に代々受け継がれてきた、花や作物を育む力。
貴族としての体裁を保つため、家計を助けるための、地味で地道な力だった。
エレノアは、誰にも見られないように‘グリム・ポテト’にそっと語りかける。
「元気に育ってね…」
すると、彼女の指先から柔らかな光が溢れ出し、植物の苗はみるみるうちに活力を取り戻していく。
彼女にとって、それは日常の些細な魔法だった。
そして、コンテスト当日。
豪華な装飾が施された温室には、生徒会メンバーの姿があった。
生徒会長のフェリックス・ド・ラ・ヴァルは優雅に、副会長のクロード・ソレルは冷たい視線で、書記のソフィアは優しい眼差しで、そして風紀委員長のライエル・フォン・アイゼンは鋭い目で、並べられた魔法植物を審査していく。
「……これは……」
フェリックスの視線が、エレノアのクラスのブースで止まる。
彼女の‘グリム・ポテト’は、他のどの植物よりも青々とした葉を広げ、鮮やかな紫色の花を咲かせていたのだ。
その異様な成長ぶりに、ライエルが厳しい声で問う。
「アースフィールド嬢。これは、貴女の…魔法ですか?」
エレノアは思わず息を飲む。地味な力だと思っていた加護が、まさかこんなにも注目を集めることになるとは。
その時、フェリックスがエレノアに近づき、その花を優しく見つめた。
「…素晴らしい。こんな力、見たことがない」
彼の言葉に、エレノアの心臓は跳ね上がる。
そして、フェリックスは、彼女に手を差し伸べる。
「君のその力…ぜひ、生徒会で活かしてくれないか?」
平々凡々だった私の日常は、この瞬間、まるで乙女ゲームのヒロインになったかのように、きらびやかに色づき始めたのだ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
少しでもエレノアたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は、エレノアが生徒会室に呼び出される場面が描かれる予定です。お楽しみに!
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