7 アルヴィスの病気(1)
「ランチェスター様は、どのような病気なのでしょうか?」
そう質問したティナリアに返ってきたのは、アルヴィスの拒絶するような言葉だった。
「それを知ってどうするのです?」
そんなアルヴィスの様子に慌てた公爵夫妻は、アルヴィスをたしなめる
「せっかく、アルヴィスのことを知ろうとしてくれているんだ。そんなこと言うんじゃない。」
「そうよ、彼女は今までの人達とは違うと思ったから、あなたのとこに連れて来たのよ。」
それでも、アルヴィスは納得出来ないようだ。
(いままでの婚約者となにかあったのか?)
ティナリアは疑問に思ったが、今はそれどころではない。
「病気のことを知りたいと思ったのは、ランチェスター様に婚約者として歩み寄りたいと思ったのと、私は、医学書や薬や薬草の本を読むのが趣味だったのでなにか役に立てないかと思いまして。」
そんなティナリアにアルヴィスは、なおも言い返す。
「公爵家の優秀な医者でさえ、分からなかった病気を君が?」
確かにそれはそうだ。だが、ティナリアには、前世の知識がある。まだ見つかっていないような、病気だって知っているのだ。
なので、ティナリアは、
「優秀なお医者様だとしても、知っているのは一般的な病気の治療法だけの場合、知らない病気の場合やあまり知られていない病気の場合だってあるでしょう」
と言った。これで信じてもらえるかは、賭けではあったが公爵夫妻も病気については藁にもすがる思いなのか、アルヴィスを説得して教えてくれた。
「アルヴィスは11歳の頃から頭痛や目眩を起こして体調が悪くなることがあったのだが、今では吐き気や腹痛なども起こしていてね」
「最近では、起き上がることを考えただけで、症状が悪化したりして」
その話を聞いたティナリアには、病気の予想がついた。
なぜなら、ティナリアはこの病気で前世は苦しい思いをした。
この病気は、絶対に治る。そう知っていたティナリアは、おもむろに口を開いた。
「ランチェスター様の病気、分かりました。」
それを知った公爵夫妻は驚いたように
「ほんとうか!?」
「アルヴィスは元気になれるの!?」
と質問した。
「ランチェスター様の病気は‥‥‥起立性調節障害です。」