13 商会作ろうぜ (1)
アルヴィス様と婚約して半年が経った。
この半年で幾つか変わったことがある。
まず、アルヴィス様の態度だ。
始めは警戒心むき出しだったアルヴィス様も体調が回復してからは、信じてくれたのか今では優しく接してくれる。
「ティナリア、考え事かい?」
「ごめんなさい、アルヴィス様」
「よく聞こえなかったなぁ」
「ごめんなさい、アル様」
2つ目は、呼び方だ。
アルヴィス様の方から愛称で呼んで欲しいと、頼まれたのだが、慣れない。最近は、アルヴィス様と呼んでしまうと、愛称で呼ぶまで聞こえない振りをしてくる。
3つ目は、私が魔法を使えることを明かしたことだ。
正直、伯爵家の父親などは信用出来ない。もし、明かしたなら、私は死ぬまで使い潰されてしまうだろう。
だが、ランチェスター公爵家は、信用出来る。
公爵家なら私程度の魔法師などいくらでも知っているだろうし、公爵夫妻も私に友好的だ。
事実、私が魔法を使えること話すと公爵家の図書室の本をいくらでも呼んでいいと言ってくれたし、魔道具なども作りたいと相談すると、材料の提供など協力してくれる。ありがたい限りだ。
「それで、ティナリアは僕とのティータイムに何を考えていたんだい?」
あぁ、いけないアルヴィス様とお茶をしてるんだった。
「アル様と出会ってからいろいろ変わったなぁと、思っていました。」
「へぇ、僕とのことか。それは嬉しいな。だけど、今は、君の目の前にいる僕との時間に集中して欲しいな。」
アルヴィス様は、時折こういうことを言ってくる。
もうちょい、自分の顔の良さを自覚して欲しい。心臓がバクバクして爆発しそうだ。
「あっ、そうだ。ティナリアに話したいことがあってね。ティナリアは、作った魔道具を売る気はないかい?」
「魔道具の販売ですか?いいですね。ですが、私一人では作れる量に限りがありますよ。」
私一人で生産するとなると販売は、難しい。
何より、販売する時はより多くの人に買って欲しい。これは、私のポリシーだ。
前世で商業系の高校に通ったことで商売の心得はある。売るのなら、そこら辺は徹底して行いたい。
「そこは、大丈夫。腕のいい職人は見つけてあるんだ。」
「あら、仕事が速い。さすが、アルヴィス様。それで、アルヴィス様販売するのはどこの商会ですか。
流通ルートや販売価格など気になるので、話してみたいのですが....」
「さっきから、呼び方が気になるけど、今はまぁいいか。販売する商会はね、これから作ろうと思って。」