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3 響子と英介

そんなある日お店のママから

「響子ちゃん、2番カウンターのお客さんについてちょうだい」

と言われ、どうせまたつまらない話を聞かされるんだろうなと思って行くと、ややお坊ちゃんタイプの精悍な感じの男がいた。


男としてはまあ平均的な背丈でやや肩幅が広めで頼もしい感じ。顔は割と整っているがイケメンと言えるかどうか微妙なところで、人によってはイケメンだと思うだろうし、人によってはそう思わないだろうと思われる、そんな感じの人で、メガネをかけている。


話し始めるとなかなか気さくで話しやすいし、基本的に紳士っていう感じがいい。この店では女の子の方からドリンクをおねだりしたりしてはいけないことになっているのだが、少し話しているとすぐに響子の気持ちを察したのかどうかわからないが、女の子ドリンクをどうぞと言ってくれた。


響子は今お店で流行っているゴディバチョコソース入りのラム酒を頼んだ。口に含んだ途端口の中で幸せが広がった。男の名は津島英介。最初はビールを飲んでいたが次にマッカランを飲んでいる。見かけによらずアルコール好きで強いようだ。


あっという間に一時間が過ぎ、お勘定を済ませると彼はすたすたとエレベーターの方へ歩き始めた。響子は「お客様お帰りです」と大きな声で言うと英介を見送りについてきた。英介は「じゃ、また来るからね」

と言ってエレベーターに乗り、帰った。また来るというのがいつなのか不明だが、早く会いたいなと響子は思った。こんな気持ちになるのはこのお店で働き始めてというか人生で初めてだ。


 響子はだいたい物事は期待しているとうまくいかないことが多いと思っているので、翌週土曜日に出勤した時、英介の事はなるべく考えないようにしていた。お店は夕方6時からスタートだが、スタートと同時にお店の扉が開いたと思ったら、そこには英介がいた。


まさかこんなに早く会えるとは思っていなかったので、響子は嬉しいというより驚きを隠せなかった。お店のリーダーの子が「ご指名の女の子はいますか」と聞くと英介は「響子ちゃん」とすぐに言ってくれたのだ。


リーダーが「響子ちゃん2番シートへ行ってちょうだい」と指示したので、本当は嬉しいのにそれは隠して何となく気の進まないような顔つきを作って2番シートへ向かった。2番シートはもちろん英介のいる席だ。「やあ、こんばんは」英介は笑顔だ。彼は前回に続いて今回も紺のジャケットに同じ色のズボンをはいている。


ちょっと見ると会社帰りかなんて感じがしてしまうけど、ネクタイはしていないしワイシャツではなくて前回は紺、そして今回はやや派手なワインカラーのシャツを着ている。見方によっては少々キザとさえ見えなくもない。襟には丸くて17色のカラーが並んでいるSDGsバッチだ。


そうか、「これ何なの?」なんて聞いちゃったら世界の抱えている環境問題やジェンダーの問題に無関心だと思われちゃう、つまりそこで目の前にいる女の子の姿勢が分かるという仕掛けかもしれない。まあともかく他の多くのお客さんと違ってビシッと決めてるっていうのはいいなと思う。


席につくとすぐに女の子ドリンクをどうぞと言って自分はとりあえずビールを飲み始めた。まだどんな職業なのかは不明だ。まだ会うのは2回目だし少しずつどんな人なのかをさりげなく探っていこうと思う。好きな食べ物の話になった。女の子は食べることが好きだから、まだ出会って間もない異性と話すにはもってこいのトピックだと思っているようだ。

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