2 響子のアルバイト
女子大生の響子は週に一回ここ池袋にあるガールズバーでアルバイトをしている。響子は青森の裕福な家で箱入り娘という、ある意味純粋培養という感じで育ってきたし、毎月親から十分な仕送りがあるので、お金には困っていないのだが、社会勉強として親には内緒でバイトしているのだ。
小学校から大学まで女子校だったこともあり、男性とはこれまでほとんど接したことが無く、言わば免疫は無いに等しいのだが、ここは対面でカウンターを挟んで話す安全なちゃんとした店であり、様々な客と話しながら響子は男性というものを観察というか大袈裟に言うと研究していたのだ。
本を読んだり、映画を観たり友達の話を聞いていると、総じて女性は真面目な男よりも不良やグズが好きなのではないかと思えてしまう。良くも悪くも退屈しないしワクワクドキドキするらしい。でも自分は違うと響子は思っている。
真面目で誠実な中にもちょっとしたワイルドな面とユーモアとほんの少しの悪の要素を持っていて、いい加減なように見えて女性のことやこれからのことをちゃんと考えている男がいいなと思っているのだが、まだ男性と付き合ったことさえない自分にとっては幻想に過ぎないかなと思ったりもしてしまうのだ。彼女はそんなとりとめのないことを考えたりしながら毎週土曜日のこのバイトで男たちを観察しているのだ。
興味津々で始めたバイトだったが、話していてつまらない男が多いと感じる。自慢話ばかりしている男や、横柄で未だに女を見下したような傲慢な話し方をする男とか、無趣味だったりお下劣な話ばっかりしているとか、愚痴ばかり言ってるとか、極めてレベルが低かったりとか期待外れもいいところだった。
店の他の女の子を見ていると、大して面白くない話でも大袈裟にキャーコラ騒いで盛り上げているが、響子にはとてもそんな芸当はできない。最近は何となく諦めモードであり、お金をいただくわけだからそうと割り切ってやるしかないなと思っていた。自分は理想が高過ぎるのかななんて考えてしまったりもする。