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15 高まるヴァイオリン愛

響子たちとのベートーベンの「春」は半年で終わった。英介は一応曲が完成したのは嬉しかったのだが、完成してみるとこの曲の速いテンポの感じは自分には合わないという感じがしてきてもいた。


自分にはもう少しゆっくりなテンポの曲が合っていると思い、ブルッフのコンチェルトのうち最も美しいと言われている第二楽章の幻想曲をやろうと提案した。


響子もメロディーが大好きだと言って賛成してくれた。この曲も持っている楽譜では5枚になり、ベートーベンの「春」と同じくらい長い曲であり、また始めてみるとかなり難しい曲であることが分かってきたが、いつものヴァイオリンレッスンで先生が少しずつ丁寧に教えてくださるし、先生自身もかなり難しいと言って時々どう教えたらいいのか試行錯誤しているほど難しい部分もあるほどではあったが、難しいところも練習して弾けるようになると満足度が上がり、ますますヴァイオリンが好きになってきたのだ。


しかも憧れの美しいビブラート、以前教わった、8年間もお世話になった先生が何度頼んでも、音程がちゃんと取れないが人がビブラートをやるとメチャクチャになってしまうと言ってどうしても教えてくれなかったビブラートを、やっと現在の先生に教えてもらえて、とは言っても半年以上かかってやっと少しできるようになったのだが、やっとかけられるようになって、ますますヴァイオリン愛が高まってきたのだ。


一度は自分は一生ビブラートはできないというか、ビブラート無しでやっていけばいいや、と思ったりしたこともあるのだが、その筋の本を読んでいたら、ヴァイオリンはビブラートをかけて初めてヴァイオリンの真髄を味わえるのだとかいう文章があったので、是非ともできるようになりたいと思ったのだ。


そして当然ではあるが、ヴァイオリンだけよりもピアノとのアンサンブルの方がずっと楽しい。それも美人姉妹と一緒だと更に楽しい。そうこうしているうちに始めてもう2年近くになる。


3人で楽しく合奏している時、それはまるで3人兄弟であるかのように見えるだろう。英介が最年長者で響子が妹といった感じにさえ見えるのではないだろうか。


兄であれば当然妹に対して性欲を感じたりはしないからだ。英介は響子や瑠璃子と一緒にいる時は紳士というか聖人君子を演じ続けていた。それはまるである意味子供の時のように、または人畜無害で淡白な、女性には興味の無い男、といった感じでもあった。


ただそれは相当無理をしているというわけでもなかった。世の中には女性をただの性欲の対象、便利な道具、はたまたヒモという人種に至ってはただの財布だと思っている連中がいるようだが、英介はまるで違ったのだ。英介は物心ついた頃から女性に対しては一種の憧れがあり、騎士道的な精神の持ち主でもあったのだ。


愛する女性に対しては一途な愛を貫き、辛く苦しい時でも彼女の為なら己を犠牲にしてでも尽くす、といった古典的な考え方を持っていた。ただ誰に対しても思いやりがあり優しいというわけではなかった。


女性をまるで女神のように理想化しているというのはあくまでその女性が美人で彼のタイプの場合であった。従って美形でない女子、または美形であっても好みのタイプでない女子に対しては愛想なく、冷たいとさえ言えるほど素っ気なかった。

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