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はたして温泉の素で異世界無双はできるのか?

作者: 夜月 浮音

 俺は目覚めると、異世界に転生していた。

 ここから、俺の無双生活が始ま――らない。


 森の中で目覚めた俺は、運良く親切な夫婦に拾ってもらえた。

 そのおかげでなんとか生きていくことは出来そうだが、特に魔法が使える様子もなく、身体能力に変化もない。


 よくある異世界転生のようにステータスは開けるようだが、これといった能力もなさそうだ。


 唯一あるとすれば……。


 俺の特殊能力欄に書かれているのは、「温泉の素」という文字。


 なんなんだ。

 能力が「温泉の素」とか意味が分からないんだが。



……でもまぁ、俺も考えたよ?


 温泉の素を売って儲けようとか、温泉の素になんか特別な効果でもついてんじゃね、とか。


 でも、現実そうはうまくいかない。


 別に温泉の素に「防御力めっちゃあがる!」とかの付加価値ついてないし。

 一番いい温泉の素を出すぞ! と思って頑張ったら普通に日本三代温泉の素が出てきたし。


 嬉しいけど。



 というかそもそも温泉の素の発生方法が謎すぎる。


 なんだよ、詠唱したら何もない空中から唐突に温泉の素が降ってくるとか。


 もう少しこう、手の上に出るとかなかったのだろうか。


 しかも律儀にちゃんと一回分の温泉の素しか出てこない。



 そのせいで、売ろうにも袋詰めの作業が必要でお金がかかるし。

 量り売りみたいにしようかとも思ったが、一回分しか出てこないうえ次にもう一度出すまで10分程度空いてしまうなどの条件のせいで量の確保が難しいし。



 と、いうことで、俺は転生して一週間ほどで早々に無双を諦めていたのだ。


 なので俺は今、俺を拾ってくれた夫婦の畑を一生懸命耕している。


 恩もあるし、前世は会社に勤めていてこういった農作業みたいなことをする暇がなく、憧れで終わってしまったから結構楽しめていると思う。


 このまま、平々凡々に田舎町でのんびりと暮らしていきたい。



……あ、そうそう、俺の特殊能力の話だけど。


 一つだけ、有効活用の方法見つけたんだよね。


 それが、俺を拾ってくれた夫婦の入るお風呂にその温泉の素を入れること。


 自分だけ使うのもなんだしと、許可を取った上で入れてみたら物凄い喜んでくれた。



 大切な人達の、農作業で疲れた体を癒やす、少しの手助け。


 無双まではいかないけど、手に入れた「温泉の素」という能力で、恩返しをする。


 これが俺なりの、異世界の楽しみ方だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルがついつい読みたくなるお話で、温泉の素に使われている物質を使って火薬とか悪臭スプレー(または匂い消し)を作る話かと身構えれば、なんともまあ素朴で心温まる終わりかたで、私自身の汚れた…
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