五十一話 初めて会った日 その一
二人の中になんだか気恥ずかしい空気が流れる。二人は目を合わせ笑う。
この空気を破ったのはチユだった。
「でも、レンの記憶ってどうやって戻したら良いんだろー?」
「うーん、まずは師匠に聞いてみる?僕を最初に見つけたのは師匠なんだ。だから情報を集めるためにも師匠に聞いてみよう」
僕は内心嬉しかった。チユがまた話しかけてくれたこと、一緒に記憶を取り戻そうと言ってくれたこと。思わず告白してしまったのはやってしまったなと思ったが、それでも告白できて今はスッキリしている。結果はダメだったけどね。
なぜ避けていたのか、それは知ることができなかった。でも、記憶を取り戻したら教えてくれるそうだ。それが僕にとって辛い理由だとしても、受け止めよう。
僕とチユは瞬間移動が出来る魔導石で魔導に向かう。
「異世界‼︎」
チユの反応で僕は思わず笑ってしまう。最初に来た時と同じ反応だ。彼女は毎回魔塔に来るたびこのような反応をする。
最初に来たのはチユの髪を魔法で染めるためだったっけ。
僕は美しい金髪を見る。相変わらずメイクは濃いけど、それはそれでチユの魅力の一つだ。勿論メイクしていないチユも可愛い。
僕たちは師匠を探す。研究室にいるかと思ったが、いなかったため、僕たちはザクヤの元へと向かった。
「ザクヤ、師匠を知らないか?」
「……レン、久しぶり。キーラさんは外の空気を吸いに行った」
僕を見て微笑むザクヤだったが、チユを見た瞬間キッと睨んだ。
「あ、えと、お久しぶりです〜、チユです〜」
「何しに来たわけ?」
「えと、キーラさんに会いに……」
するとザクヤはため息をついた。何か小言でぶつぶつ言っているが何を言っているのが聞き取れない。
「ザクヤ、僕記憶を取り戻そうと思うんだ」
「記憶を?少し思い出したの?」
「本当に少しだけどね。そのために師匠に話を聞きに行こうかと思って」
するとザクヤはそう、と一言だけ言ってまた研究をし始めた。
僕とチユは、中庭へと向かった。チユは初めて中庭に来たのかテンションが爆上がり。
外に出るとベンチでだらんと座り込んでいる師匠を見つけた。銀色の長い髪が風に揺れている。
師匠は少しお疲れのようだ。おおむね、あのペガサスの後処理が大変だったのだろう。
僕とチユは師匠の元へと向かった。
「あ、やあやあ、お二人さん。どうかしたのかい?」
僕たちに気づいた師匠はだらんと座ってはいるものの手を振って挨拶をする。その姿に僕は少し呆れるが、いつものことだ、しょうがない。
「ヤッホー!キース!」
「ヤッホー!チユ様!」
二人はイェーイとハイタッチをしている。仲良いなこの二人。
「師匠、聞きたいことがあるんだ」
「なんだい?」
僕は一呼吸置いてから言う。
「僕の記憶について、聞きたいんだ。初めて会った時、僕はどんな感じだった?」
すると、キースは目線だけこちらを見ていたのが真面目な顔になりいそいそと座り直す。
「……中で話そうか」
そう言って、僕たちは師匠の部屋へと案内される。僕たちは目を合わせるが、師匠の元へとついて行った。
部屋に入ると俺たちはベッドに座らされ、師匠は椅子に座った。
「さて、初めて会った時のこと……だったね。その前にレン、君に言いたいことがある」
「なんですか?」
「君は……、召喚されてここにいるんだ」
予想外すぎて俺の思考回路は止まる。だが師匠の話は止まらない。
僕と初めて会ったあの日の話を師匠は話し始めた。




