五十話 秘め事
私は走った。自分の部屋からレンの部屋まではそう遠くはなかったはずだ。トトが通り過ぎた気もするが私は挨拶もする余裕もなくただ走る。
レンの部屋に辿り着き、私は息を整える。走っているうちに私の頭は興奮状態から冷静になったようだ。
まだ記憶が戻ってないレンになんていえばいい?むしろ言っていいのだろうか?混乱してしまうのではないか。
私はあの日、星を見に行った時のことを思い出す。
「うっ……!」
「レン?」
もしあの時に記憶が戻っていたのなら。あの時、一瞬レンはとても苦しそうな顔をしていた。もし、記憶を取り戻すのが苦しみをともなうのなら。
それにまだ蓮がレンだと決まったわけではない。ただ、私の直感がレンだと叫んでいるだけ。それはアーサーも同じなのだろう。だから、レンの過去を話してくれたのだと思う。
私はノックをしようとして手を上げる。とその時、ドアが開く。私はノックを空振りというわけにはいかず思いっきり手をぶつけてしまう。
「いっだ!」
「え、大丈夫か?」
私は手を押さえながらレンをチラリと見る。レンは少し焦った顔をする。
そして、レンは私の手を取る。
「少し赤いな……。冷やすか?」
「いや、大したことないから大丈夫。それより、どこかに行くの?」
「いや、ドアの前に気配を感じて……」
「あぁ、それで……」
私達は気まずい雰囲気になる。それは、私のせいでもある。ずっと避けてきたのだから、レンもどう接したらいいのか分からないのだろう。それは私も同じ。この恋愛感情はまだ整理出来てはいないし。
「それで?僕に用事があったんでしょう?何かあったの?」
「あ、それは……」
私はおもわず俯く。話してもいいものなのだろうか。
すると、レンは少しクスッと笑う。そして、少し意地悪に笑う。
「もう、避けなくていいのか?」
「あれはっ!……ごめん」
避けてた理由をいうわけにもいかず、ただ謝る。
「とりあえず、中に入る?」
私は頷く。レンの部屋は相変わらず綺麗に整頓されていた。私も部屋は綺麗な方だけど、物が多いから散らかりやすい。それに比べてレンの部屋は物が少ないからか、それとも私よりも整理整頓が上手いのか、いずれにせよ私の部屋より綺麗だ。
「で?なんの用事?」
私はソファーに座り対面にレンが座る。
「アーサーから聞いたの。レンは昔の記憶が無いって……。だから、私と出会った頃、この世界についてあまり分からないって言っていたんよね?」
私はこの世界に来た頃、引きこもっていた時のことを思い出す。
「でも、この前星を見に行ったとき少し記憶が戻ったって聞いて、どんな記憶か気になって……」
本当はどんな記憶かアーサーから聞いて知っている。だけど、レンの口から聞きたかった。レンは口を開く。
「チユが来る前から見る夢があるんだ。長い黒髪の子が、僕に笑いかける夢。顔はよく見えない。でも、星を見入った日、いつもとは違う記憶が流れた。大きな部屋みたいなところで星を見て、隣にはその黒髪の子がいる。それで僕にいうんだ、星が綺麗だねって。その記憶が僕にとっては大切な記憶な気がして……、胸が苦しくなった」
やっぱり、蓮なんじゃないの?私は思わず口に出しそうになって咄嗟に口を閉じた。
「そっか……」
ふと、開いていた窓から風が吹く。じーとレンを見ていると髪が風に靡いて額に小さく傷が見えた。
私はその傷を見てあることを思い出す。
それは、私の部屋で蓮と話していた時のこと。
「ねぇ、やっぱり前髪あげてみたら?分けるとか……」
「うーん、でも僕、額に傷があるんだよ。昔、公園でこけた時に遊具があって切ったんだ。ほら」
それで見せてもらった傷。その傷は確か、レンと同じところにあった。
そういえば、レンと出会った頃、同じように風に吹かれて傷が見えた。あの時は蓮と同じ位置にあるなってぐらいにしか思わなかったけれど、やっぱり蓮なんだ。
私は確信する。ここまで一致するなんて同一人物いがないでしょ。少し声は低い気がするけれど。
でもなんで、ここに蓮がいるのだろうか。
「で、僕からも一ついいかな?」
唐突にレンが私に聞く。私は何か検討もつかず頷く。
「なんで避けてたの?」
私は顔が引き攣るのを肌で感じる。レンはからかっているわけでもなく本気で聞いているようだ。
「結構、辛かったんだ。避けられるの」
「そんなに辛かったの?」
すると、レンは頷く。そして、レンは一呼吸おいて私を見つめる。
「だって、僕は君が好きだから」
私は目を見開く。レンが……私を好き?これは予想外だ。だが、レンは苦笑いする。
「本当はこの気持ちは秘めておこうって思っていたんだ。だから、安心して。僕はチユのことが好きってだけで、今までと変わらない。ただ、避けれるのは寂しいかな、それは護衛魔導士としても。」
あぁ、この人は本当に。自分の気持ちをを優先するんじゃなくて、私を気遣ってくれる。昔から変わらない。
この気持ちはまだ、蓮のことを重ねているのか、レンとして好きなのか。答えが見つからない。
でも一つ言えるのは、私は蓮のことが好き。そして、レンのことも好き。蓮が私のことを覚えてなくても、私のことが好きになったように。私もまたレンのことが好きになる。
「……ごめん、余計な話をしたね」
「ううん!余計な話なんかじゃない。でも、私はまだなんで避けていたのか説明することはできない」
レンは少し悲しそうな顔をする。私は続けて言う。
「ねぇ、レン。私からお願いがあるの。記憶を思い出して欲しい。」
「記憶を?」
「レンが記憶を思い出した時、私はなぜ避けていたのか理由を言う、たとえ、その記憶が私の思っている記憶と違っても、約束する」
いつにも増して真面目な顔をして言う私に戸惑っているのか、レンは難しい顔をする。
「でも、どうやったら記憶が戻るのか、僕にも分からないよ?」
「一緒に探そ!」
するとレンはすこし不安が解けたのかそうだね、と笑った。
だいぶ更新があいてしまいました。本当にごめんなさい……。別の小説を書いてました。書き終わったと思ったら、インフルにかかり……、と色々忙しくて聖ギャル(私が勝手につけた略称「聖女はギャル!」)に手をつけれず、づるづると時が経ち、やっと手をつけれました!Xの方では予告をしていましたが、改めてお久しぶりです!またちょくちょくと更新していこうと思っております。基本水曜日更新する予定ですが、私の都合だったり、かけていなかったりと木曜日から金曜日と曜日が変わるかと思います。その時はXで予告しますね。よかったらXの方もフォローお願いします!@f8RdyAuZOL25232です。名前は如月冬香です。




