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聖女はギャル!  作者: 如月冬香
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五話 引きこもる聖女その二

 どれくらいの時間が経ったのだろうか。カーテンの隙間からオレンジ色の光が見える。夕方だろうか。ここにきた時は朝だったから……ほぼ二日ぐらいここにいる。ずっと泣いてたし、もうメイクボロボロ……。せっかくメイクしてたのに。とりあえず、メイクを落としておこう。大体落として鏡を見ると、泣いた為か目が赤いし…肌も荒れてる。

「はぁ……。こんなんじゃ、メイクもやる気起きないね。」

と独り言を呟く。すると、コンコンと急にドアの音がした。

「……っ!」

そして声が聞こえる。男の人の声だ。

「レン•ユーリスと申します。本日より一時的ではありますが、聖女様の護衛に任命されました。」

私は、びっくりして椅子に小指をぶつけてしまった。

「ったぁ!」

声を抑えた私を褒めて欲しい。それにしてもレンってあの時いた人だよね。

 またこの人も外に出てこいというのだろうか。

「聖女様、せめて、お食事を……。」

「聖女様、少しでも外でも……。」

聖女様、聖女様、……しばらく一人にして欲しかった。だから、ドア越しに

「しばらく一人にして。」

といった。言ったっきり、メイドさんは来なくなった。


「お食事を……とられていないと聞きました。良ければ召し上がってください。」

……確かにお腹すいた。少しドアから覗くと、

「お。」

と、言われてしまう。そこから黙っているので気まずくなって閉めてしまう。

「え。」

え。とはなんだ。え。とは。私はまだドアから覗く。

「聖女様?」

「ご飯……。」

 こちらから避けたとはいえお腹は空いているのだ。私は少しドアを開けて手を差し出した。

「中に、入ってもよろしいですか?」

「え、やだ。」

「ですが、部屋も散らばっているようですし……それに空気の入れ替えをした方がいいかと思いまして。」

むむむ!しつこい!私は我慢ができずトレーを掴み部屋に入れる。それに!部屋ぐらい自分で片付けれるし!多分……。ていうかいつのまにかこんなに汚くなっていたんだろう。

   

 そう疑問に思う千癒だが、それは千癒が散々暴れてからである。


「じ、自分でやるし〜?」

私は強がるがレンはまだ食いつく。


「ですが、聖女様はまだこの地に来たばかり。片付けなどはしんどいでしょう?」

「め、メイドさんみたいな人たちがやるんじゃない?」

「彼女らを入れなかったのは誰でしょう。」

「ゔっ。」

痛いところを突かれてしまう。何にもいえねぇ。元々語彙力皆無だからしょうがないけど。

「僕が嫌だったのなら、他の人に致しましょうか?」

それを言われて瞬間、急にそれは嫌だと思ってしまう。それは、レンが彼に似ていたからなのか。実は心の底では誰かそばにいて欲しかったからなのか。

「え、嫌!」

私は気がついたらこのドアを開けていた。ずっと暗かった部屋にいたので眩しかったっが、黒色の髪に黒色の瞳、やっぱり似ていた。なんて考えているばっかでなんにもいうこと考えてなかった。ワタワタしているうちにレンは部屋に入りカーテンと窓を開け、服を片付け始める。

「え、ちょ。」

私はあたふたしていたが、さっきから私はある点を思い出す。私今すっぴんじゃね?泣いてたからビジュ最悪じゃね?思い出したらもう終わりだ、みるみる体が熱くなっていく。

「み、見るなぁぁ!」

と私は叫び顔を手のひらで覆った。

「メイク、メイクしてない!泣いててぐしゃぐしゃー!あーもう、分かったけん!レン!メイク道具ってどこにあるん⁉︎」

「メイク、道具ですか、大体ここら辺にありそうですが……あった。」

めっちゃ冷静にメイク道具を出す。神か?この人。

「え、え、どれどれ?うん、これだけあったら……。レン!ちょっと向こう向いとって!」

「う、うん?」


 


 失敗した。いくら落ち込んでいたとはいえ……メイクをしてないなんて!私眉毛剃ってるから、バケモノよ⁉︎と、心の中でぷりぷりしながらメイクをものすごーいスピードで終わらす。

「できたー!もう向いていいよ?」

そう言って振り向くと途端に、

「まゆげ、ある。」

と言われる。うん、分かってた、けど直接言わなくてもいいやんか⁉︎

「あ、当たり前でしょー?書くに決まっとるやんか!にしてもビューラーないからまつ毛全然上がらない……。」

絶っ対この人、眉毛書いてたんだ、って思ってるぅ!と思っているとぐぅぅ〜と音が聞こえる。これは、私のお腹の音だろうか。自覚したらお腹すいてきた……。まだ食べてなかったよね、ご飯。私はご飯を見ながら、

「食べていい?」

と思わず聞くと、

「いいに決まってるじゃないですか。」

と返される。スープを一口飲むと、コンソメみたいな……少し違う気がするけど、

「!美味しい!」

とても美味しかった。


 


 開けた窓から風が吹く。じーとレンを見ていると髪が風に靡いて額に小さく傷が見えた。

「レン、って呼んでもいい?てかもう呼んじゃってるけど。」

なんだか仲良くなりたくなった。

「いいですよ。聖女様。」

聖女様って硬いな……。ていうか、なんか聖女って呼ばれるの嫌だわ。顔がもう、彼に似てるんだもん。

「私のことは千癒って呼んで!聖女様ってなんか息苦しい!」

「ですが……。」

 それから敬語も禁止にした。しばらく困ってはいたが、返事は?と圧をかけると諦めてくれた。



「よし!私、レンとは仲良くなれると思ってるの。」

というと、何故?というふうに首をかしげる。

「なんでそう思ったんだ?」

「似てるの、同級生に。」

「そう、なんだ。似てることなんてあるんだな。」

「うん。顔とかそっくり!」 

顔かよ、と言われるけど、それだけじゃないよ、と心の中で思う。すると、大丈夫か?と心配される。

「最初はさ、どうして自分がって思ってたの。私は地元でもう一度話したい人がいるの。彼に会いたいけど今は会えない、だから待ってた。なのに急に知らない世界に飛ばされて……ふざけるなって思った。でもさ、一日中泣きながら思った、今嘆いても何も現実は変わらない。今出来ることをしようって。きっと彼もそう言うだろうなー、って。でもまだ気持ちの整理はつかないかな。頭では分かってるのにね。」

そう、頭では分かっているんだ。でも心が追いつかない。



 スープとパンを食べ終わった私はある疑問をレンに問いかけた。それは一時的な護衛とは何かというものだった。


 レンの話で言うと、護衛の主な仕事はそれは聖女様を守ることらしい。聖女様は国中から注目を浴びる存在、過去の事例だと、暗殺まではいかなくとも誘拐騒ぎなどがあったらしい。それから……、危険な場所へ浄化しに行かとなると魔獣が出る。それを守るためにも主にパッと対応ができる魔術師が任されるらしいし、あとあと!聖女とも相性がいいらしい。

「成程……。じゃぁレンはずっと一緒にいるってこと?」

「いや、流石にずっとは無理だよ。僕はあくまで一時的。本来、護衛は聖女様本人が選ぶものなんだよ。」

そっか、ずっとは無理なのか。結構レンといると落ち着くんだけど、しょうがないよね。

「そう、なんだ。いやー、成程ね!ありがとね!教えてくれて‼︎」

「いや、別に大したことは教えてないよ。僕もあまりよく分かってないことが多いんだ。」

「そうなの?この世界の人なのに??」

「うん。あまり覚えていないんだ。」

「……ふぅーん。」

レンにも何かあるのだろう。だからと言って私が急に深く聞くにも関係性はないし、少し状況が似ててちょっとだけ、ちょっとだけだよ?安心してしまった。

「ちなみに今からでも護衛は変えられるよ。」

「え、変えなくていいよー!まだ慣れてないからさっ。」

「そうか。なら良いけど。」

「そろそろ部屋からは出れそう?」

言われると思ったけど……まだ無理だ。もう少しだけ心の整理がしたい。そう言うとあっさり納得してくれた。帰る時ある球体を渡された。これがあればレンの名前を言えばいつでも私ところに来れるらしい。すごいな、異世界。それに、レンがこれを作ったと言うのだからもっと驚いた。レンはそれから……と続ける。他にも何かあるのだろうか……?と思っていると、

「部屋……勝手に入ってごめん。」

と、予想外のことを言われる。私的には結果良かったけど、気にしていたらしい。

「え、……い、今更?ふ、ふひ、ふははは!」

私は思わず吹き出してしまったのだった。



あれから四日間、レンは、私の元へ来てくれた。来てはこの国のことなどを聞いていたのだが、あまり詳しくないのかすぐに話題が尽きてしまった。それからというもの私の国の話をする様になった。

「自動で移動できる乗りもの、板の中で色々なものが見れる……いやこれは同じとはまではいかないが出来なくもなさそう……。」

とレンは魅力的なことを呟く。

「レンは、魔導石?ってやつの研究をしてるんよね?」

「そうだよ。」

「ふうーん。」

これは、もしかしたら……。なんて少し前向きなアイディアも思いつく。機会があったら話してみよう。




初めて会ってから今日で五日目だろうか。


「師匠って人に魔術のこと教えてもらったんよね。レンもこの世界のことあまり知らないんでしょ?どう思ったの?」

と、私はレンに聞いた。唐突だったかもしれないけど、私は気になっていたのだ。レンはあまりこの世界のこと知らないと言うより覚えていないらしい。それってなかなかにしんどいのではないのだろうか。そんな中、新しいことをするってどう思ったのだろうか。


「この経験が、糧になると思った。……本当は嫌だったけどね。でもこの世界を知るには必要だと思ったんだ。だから目の前のことをコツコツとやったよ。」

「この世界を知るには……。目の前のことを、コツコツと。」



 この言葉を聞いて、私は彼を思い出す。彼は転校生だった。私が文化祭で発表をするかでウジウジしていた時似た様な言葉をかけて貰った。

「きっとこの経験が糧になるよ!目の前のことをコツコツしてこ!」

と言っていた彼の言葉と重なる。

そうだよね、この世界を知ることが大事だよね。目の前のことをコツコツとしていこう、気がつけば私はそう思える様になっていた。



六日後、私はメイクをバッチリし、気合を入れて部屋から出る。


「出てみた。凄くない⁉︎」


そう、今日もいつも通りきたレンに向かって叫ぶ。


 私はこの世界を知る為に、目の前のことをコツコツとすることにしたのだった。

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