四十七話 また会いましたね
浄化も終わり、賊も捕まえることができた。師匠は、ニコニコしながらこちらにやってくる。
「いや〜、さすが聖女様!この生物を大人しくさせるだけでなく、懐かれるとは!俺でも無理だったのに!」
「いやぁ〜、それほどでもぉ〜!って、キーラが元凶でしょ⁉︎反省して!」
「はっはー!」
全く反省していない師匠に僕はニコニコしながら近づく。
「師匠?」
「はい。すみませんでした。」
僕の目が笑っていなかったのだろう。師匠は血の気の引いた顔で謝ってきた。
「帰って国王に報告!」
「分かった、分かったよ……。」
そうこうしているうちにヒメルがこちらにやってきた。先程まで事情聴取をやっていた。それが終わったのだろう。こちらにやってきた。
「なぜ、女児ばかりを誘拐していたのか、分かりましたよ。」
やはり、あの賊達はペガサスと関係していたらしい。昔からこの賊は人身売買をしていたそうだ。そんな中、ある日羽を持った謎の馬を見つけた賊達は、その生物を売ろうと考えた。だが、うまくいかない。師匠も言っていたがこの生物、いや、ペガサスは気性が荒く、なかなか近づけない。その時、たまたま人身売買をするために捕まえていた女児が逃げ出した時、なぜかその生物はおとなしくなったそうだ。それからというもの、女の子を連れ去り、ペガサスに近づけ、大人しくさせてたそうだ。だが、なかなかペガサスを動かせない。その時、聖女が来ているという噂を耳にした賊は、聖女を誘拐しようとした。という事らしい。
「……師匠?」
「はい、本当に申し訳ありません。」
こうしてこの事件は幕を下ろした。そしてメーア町に戻った。
「レン!ちょっと外行かない?」
帰った頃には、もう夜だった。部屋に戻ってからしばらくした後、チユが僕の元にやってきた。散歩に行かないかというお誘いだった。僕はその誘いに応じた。
「それにしても今日は疲れたねぇ。」
「そうだね。」
僕たちは町を歩き回る。そして、小さな公園のベンチに座った。あたりは暗く、星が綺麗に見えていた。
「今日……。」
チユが話し始めた時、急に後ろに気配を感じた。ばっ!と後ろを向くとそこには、ブルーメ村の時に会ったツルだった。僕が急に後ろを向いたためか、チユも驚いたようで舌を噛んだようだ。
「いてっ!舌噛んじゃった!」
「あら、それは大変。大丈夫?」
ツルさんが心配する。チユは大丈夫、大丈夫、と繰り返し言った。
「それにしても、ツルさんもこの町に来てたんですね。」
「ね、びっくり。」
すると、ツルさんはまた僕の顔を凝視する。
「あなた、本当に私が見えるのね。」
「え?」
するとツルさんは僕たちの座るベンチの座り直した。
「いいえなんでもないわ。また少し話しましょう?千癒さん。」
「いいよーん。そういえば、この前の話の続きってあるの?」
すると、ツルさんは話し始めた。あの時の話の続きを。魔導士に連れて行かれ、村の人に毛嫌いされ、まともに食べ物が食べられなかった後のことを。
「ええ。あるわよ。その話をするつもりだったの。私は連れ去られた時、あるものを持ってたの。私は、村に連れ去られた後、嫌がらせされていたの。時には、その持ってきたもので、殺そうとも思ったわ。でもできなかった。ふふ、さて、その持ってきたものとはなーんだ。」
チユと僕は頭を悩ます。するとツルさんはまた、ふふと笑い、すくっと立ち言った。
「私はそろそろいくわ。また会いましょう?あぁ、それと、あなた。」
「レンです。」
「そう。あなたのは私からのプレゼント。」
そう言って、ツルさんは僕の額にキスをする。それを見たチユはなぜか固まっていた。そこでチユはあることを思い出した。
「つ、ツルさん!櫛!この前落としてたから。」
「あぁ、それいらないから、あげるわ。そうだ、東の国に行くといいわよ。」
そう言ってツルさんは去って行った。
しばらく、静かな空気になっていた。そして、チユがゆっくりとこちらを向いてムッとした顔で、話し始める。
「何、キスされてんのよ。」
となにやら怒っているようだ。僕は動揺する。キスされたからではない。チユが怒っている、その事象に動揺しているのだ。
「な、なに怒っているんだよ。」
「な、なんで、だろう。」
チユも動揺している。この謎現象に僕も疑問が残る。取り敢えず、話を戻そう。
「で?チユの話したかったことって何?」
「あ、あぁ。いやなんでもない。それより、レン!星、見よう!ここの世界の星は綺麗やね。ほら、こっち見ない!」
なんだか、チユの様子がおかしい。僕は大人しく星を見ることにした。
「私、双子座ー、って分からないか。私の国には星座っていうのがあるの。昔、好きな人と見に行ったなー。」
「ふ、ふうん?」
ここにきて、好きな人の話をされるのか。チユの方を見る。チユは全然こちらを見ない。まだ動揺しているようだ。なぜそんなに動揺しているのか分からない。そんなに、僕がキスされたの、嫌だったのかな。それはそれで少し嬉しいような気がした。
「星……、綺麗だね。」
そう言って、こちらを向くチユ。僕はそれがすごく懐かしく感じた。それと同時に、僕の知らない記憶が流れ込んでくる。
「うっ……!」
「レン?」
流れてきた記憶。それは身に覚えのないものだった。あたりは真っ暗で、何やら大きな部屋のなかにいるようだ。天井に星が見える。すると、夢の中で見ていた黒髪の少女が、座ったままこちらを向く。それで僕も座っていることに気づいた。
「星、綺麗だね。」
その時、僕はなんて言ったっけ。
「レン!大丈夫?」
チユの声で現実に戻される。さっきのは、一体なんだったんだ?とても大切な記憶のような……。
「大丈夫だよ。」
こうして、なんだかギクシャクしながら、僕たちは部屋の戻った。
この数日後、僕たちは王都に戻ったのだった。




