四十二話 事件の前の日は
「うおっ!」
ドニーが声をあげる。ニコ先輩もここに僕たちがいるのに驚いているようだ。
「お前ら、なんでここにいるんだ⁉︎」
いつものニコ先輩になった。ヒメルはそんな普段の様子のニコ先輩を見て驚いているようだった。
「弟を助けてくれたんだよ。」
と、ぶっきらぼうに言うヒメル。すると、一瞬空気が悪くなったと思いきや、
「そうか。」
と、ニコ先輩は一言、それ以降はヒメルとは話さず、僕たちを送ってくれたのだった。
それからしばらくはニコ先輩とも、ヒメルとも、師匠とも会う事はなかった。
浄化の三日前になり、僕たちも準備を進めていた。
「どうっ?調子は。」
と、チユが騎士や魔導士に聞き回る。聖女直々にここに来るのは珍しくはない為、騎士や魔導士は最初のように緊張した様子もなく、いつものように接している。
「全然大丈夫っすよ!聖女様、浄化、頑張ってくださいね!」
と、応援されることもある。
「もちろんよ!」
チユは自信満々である。すると、話していた騎士は、
「おっ!さっすが、聖女様!」
と持ち上げ、周りの騎士は魔導士もノリ始める。すると、どんどん調子に乗るチユは何故か、変な踊りを踊りながらこちらの方へ来る。いや、来なくていいぞ?一応言っておこう。彼女は正真正銘のこの国、いやこの世界の聖女様である。
「いや〜、持ち上げられたわ!いい気分!」
と、チユは僕に話しかける。
「あんま調子乗るなよ。」
僕は忠告しておく。こういうのは調子乗るとすぐ失敗してしまうからな。
ぶー、とチユは不貞腐れが僕は知らない顔をする。
「こういうとこ、似てるよなぁー。」
と、チユがつぶやいているのを僕は聞こえたが、聞こえないふりをした。
ふと、僕はある事に気づく。チユの警備態勢が少し変だと言う事に。いつもと人が違うような……?僕はここについてきているメイドこと元王族の暗殺部隊のトトと、ララに一応報告する事にした。すると、ララは調べておくわ、と一言姿を消して、トトはチユのそばで警護をする事になったのだった。
こうして、僕とドニーも一応夜は交代で眠る事になったのだった。この点では僕一人の時よりだいぶ負担が減って楽になった。
その夜ば何も起きなかった。ここは貴族が案内してくれた屋敷である。ララはその貴族に警備態勢について聞いたそうだが、やはりあの時見かけた男は存在しないものだったようだ。やはり……チユを狙った者たちだろうか。賊か、もしくは暗殺者か……。
チユを狙う者はどこでもいる。聖女となると、価値が高くなる。しかも異世界から来た女なのだ、興味があるものは多いだろう。
事件は、浄化の二日前の夜に起こった。




