三十六話 いきなり失恋⁉︎
青い空、白い雲、汗が額に流れる。季節は完全に夏になった。
チユの護衛魔導士が決まったあの日以降、僕は前と同じ様な日々を送っていた。一つ違うのは、同じ仲間が一人増えたこと。その仲間、ドニーは明るく気さくである。
「でね、チユ様!」
「ほうほう?」
現在、聖女ことチユは友人であるアイラ・ローレンスとお茶をしていた。どうやらアーサーの話をしているらしい。なんでもパーティ話の時喧嘩して以来アーサーと仲睦まじくなったらしく、今では巷で話題になるほどのラブラブっぷりを見せている。ちなみにだが、僕たちはチユの後ろの方で待機していた。
「そういえばチユ様は好きな人はいらっしゃるの?」
それを聞いてからアイラは後悔した。何故ならばチユ様は、異世界から来たわけでそっちの世界で好きな人がいたとしたらそれはとても酷な質問だと気づいたからである。
「ごめんなさい、無理に答えなくても大丈夫ですわ。」
そうアイラは言うがチユは何食わぬ顔で普通に答えた。いつもの方言が混じった言い方で。
「え?普通にいるよ?……そんな焦らんでもいいよ!恋バナしてみたかったし!」
「それなら、お聞きしますわ。ちなみに……どんな方がお聞きしても?」
すると、チユはぽっと顔を赤くして話す。
「いつも気にかけてくれて、優しくて、話が合うの。……レンみたいな感じ。顔も似てるんよ。」
すると、アイラは意外そうな顔をする。
「チユ様は少しはっちゃけた方を好きになるか、もしくはレン様がお好きなのかと思ってましたわ。」
チユも少しびっくりした顔をする。そしてハハッと笑った。
「そんな印象があったのか。おもしろーい!」
と笑うが次にはさびそうな顔をして、紅茶のグラスの縁を触りながら好きな人の話の続きを話し始めた。雰囲気を察したのかアイラも身を引き締める。
「でもさ、その好きな人今意識がないんよね。ずっと寝てるの。」
「それは……、何かのご病気か何かでしょうか……?」
チユは悲しそうに首を振る。
「分からない、急に倒れちゃって……、それっきり。私の世界さ魔法とか魔術とか大それたものはないけど医療技術は発展しててさ、それでなんとか生きてるって感じ。」
「そうなのですね……。」
「まっ、そのうち目が覚めるっしょ!」
と、最後には持ち前の笑顔で話していたが、少し空気は重かった。ドニーが気を利かせて話題を変えなかったらどうなっていたか。ナイス!ドニー!
それにしても……、僕いきなり失恋してない?いやしてるよね。恋心を自覚した直後にこの話は少しきついかも……。でも、チユの好きな人きっと素敵な人だったのだろう。
この思いはまだ、しまっておくべきなんだろう。
すると、ドニーがチラッと僕の顔を見て、
「なんだぁ?失恋した様な顔して。」
と、話してきた。まさにそうです。そう思っていると顔に出てたのか、これは図星だな?と言う様な顔をした。
「レン、まさかチユ様の事が……。」
「皆まで言うなよ。この気持ちはしまう事にしたんだ。今決めた。チユの迷惑になる。」
「レン……、そうゆうのはもっとアタックすべきだと思うけどな。俺ならアタックするぞ?」
そうだろう。だって彼はアタックしてアタックして今の彼女と付き合っているのだから。
「いいんだよ。」
そんな会話をしている中、チユはレンを見ていた。少し寂しげな顔をして。それにレンは気づくことはできなかった。
失恋してからしばらくの日にちが経ち、僕とチユ、そしてドニーは王に召集をかけられた。きっと次の討伐についてだろう。




