三十五話 チユの護衛魔導士その三
「レン君、ーーよかったね!」
黒髪の少女が、僕にそう笑顔を向けていた。いや、そう予想した。口元は、笑っているように見えるが、なんせ顔だけが見えないのだ、靄がかかったように。いや、少し見えたような気がした。黒い瞳、見たことがないはずなのになんだか見たことがあるようだ。
君は、誰なんだ?そう、今度こそ声を掛けようとして、目が覚めた。またこの夢。久しぶりに見た気がする。
チユがこの国に召喚された時以来だから……、軽くふた月は超えているだろう。チユがこの国に来てから、怒涛の日々だったように思う。きっと、これから僕が護衛魔導士となったら、それはきっと変わらないのだろう。
「いけない、急がないと。」
そう、僕は口に出し切り替える。なんせ今日は大事な日なのだ。遅れてはならない。僕は王宮に行くため、準備を始めた。
それにしても、あの夢は一体、なんの夢なのか。だが、そんな思考は準備をしていくうちに忘れていった。
今日は、この国、ランネス王国の聖女チユの護衛魔導士を決める日である。僕は今まで臨時として、この護衛魔導士をしてきたが、この度、正式に護衛魔導士が決まるのだ。
王宮の廊下を歩く。白基調としているこの城はいつも綺麗に清掃されていてゴミ一つもない。
目的地に着くと、騎士たちが一礼し、部屋の中まで案内してくれる。僕以外にも数人、護衛魔導士候補がもう待機していた。皆、腕のいいと噂の魔導士ばかりである。
ちなみに師匠は護衛魔導士候補ではない。というのも、師匠は、魔塔トップレベルであり、師匠しか出来ない仕事が多いというのもあるのだが、今やらなければいけない仕事が多いという理由で不参加である。
しばらく経ち全員護衛魔導士候補が集まったところで、ゾロゾロと貴族たちも入ってきた。どんな護衛魔導士を選ぶのか気になるのだろう。
しばらく時間が経ち、チユがこの部屋に入ってくる。
貴族達は、この前のパーティーで一度見ているようだ。だが不参加だった貴族は、数人いたようで、うっとり見入る人もいるようだ。
ちなみにだが、この前のパーティーでチユはダンスをアーサーと踊ったようだ。無事足を踏まれずに済んだと、後になってアーサーが報告してきたのを思い出す。
チユは僕が知っているチユではない様な雰囲気を纏っている。いつものあのアホさがまるでない様だ。
チユは王の前にたち、一礼する。
「チユ様、よく来てくれた。護衛魔導士はもうお決まりかな?人数は、最低でも二人は選んで欲しいところだが……。」
「はい。決まっております。」
そう言い、一人目の名前を呼んだ。
「ドニーです。」
そう言い、チユは護衛魔導士の称号でもあるバッジを胸あたりにつける。このバッジの模様はヒイラギの葉をモチーフに作られている。
昔、聖女様がこの葉をヒイラギと名づけた。この葉には意味もあるらしく魔除けという意味だそうで、で聖女様が育てていたそうだ。以降、そこから派生して聖女様の護衛魔導士のバッジにヒイラギの葉が使われたそうだ。
それにしても、ドニー。彼はなかなかに腕の立つ魔導士として有名で、コミュ力が高く、明るいと話に聞いたことがある。確か、仲が良かったんだったよな。少し嫉妬するが納得だ。
「二人目は……、レンです。」
とうとう僕の名前が呼ばれる。
チユは僕に近づきバッジをつける。王様もだろうなという目をしていて、アーサーもうんうんと頷いている。隣の婚約者様はニコニコとチユを見ていた。
「守ってよ?」
「勿論さ。」
僕とチユは笑う。
僕は正式に護衛魔導士になることになったのだった。
お久しぶりです。忙しくて全然上げれていませんでしたが、また上げていくのでよろしくお願いします!




