三十四話 チユの護衛魔導士そのニ
いつも通り僕は魔道具を作っていた。と言っても何かを作るということではなく魔石がどの様に作用するか、どの様な反応を見せるかなどを見ているのである。
夜明けからやっていたのが気がつけば夜になっていた。もちろん食事はとっていたが、それぐらい時間がかかる作業なのである。
やっと周囲が見え始めた時、なんだか周りがバタバタしているのに気づいた。
すると、研究室のドアがドンドンと叩かれる。何事かと出てみると、師匠がただならぬ雰囲気で立っていた。
「レン。ちょっといいか。」
「どうかしたのですか、師匠。」
僕は少し躊躇い気味で聞いた。何があったのだろうか。
「あぁ、チユ様がいなくなったそうだ。」
「え。」
その瞬間、音が止まった。いや、心臓の音だけがドクドクとなっていた。
「それで、今魔塔の方にも連絡があったんだ。捜索を手伝ってくれと。特にレン、お前は元護衛魔導士だっただろう?チユ様が行きそうな場所とかなかったか?」
僕は師匠の説明をただ聞いていた。
「……行きそうな場所の候補をいくつか出します。そこを重点的に探してください。」
「分かった。」
こうして、魔塔にいる魔導士達もチユの捜索をすることになったのだった。
だが、行きそうなところにチユはいなかった。
僕は焦りながらもチユの部屋のベランダの下に立っていた。
これは事件性も考慮して捜索をしなければならないと報告しようと歩き出した時、ベランダの近くにある木に変な足跡があるのを見つけた。僕はその方向の方へ行く。
だが、一度見たところである。だが少しの希望を持って僕はその方向へと足を進めた。
「やっぱり、いない……。」
と、引き返した時、ふと道があるのに気づいた。
ここはあまり使われていない裏道である。僕もすっかり忘れていた。僕はそこへ行く。歩いていた足はどんどん速くなり気がつけば走っていた。
ある木のところまで行くとそこには、チユが木の上に座っていた。
「チユ⁉︎なんでこんなところに……!」
すると、こちらに気づいたチユも少し安心した表情でこちらに向かって叫ぶ。
「ちょっと猫と格闘してて!」
「何言って……。」
チユの腕に猫が抱かれているのに気づく。
「どう降りようか悩んでるんだよね……!」
と、チユは困っている様だった。僕は、そんないつものチユの様子にホッとしつつ、声を掛ける。
「チユ、今降ろすから……。」
その時、猫が急に暴れ出し木の下へと降りて走って逃げていった。その拍子でチユはバランスを崩し木から落ちそうになっていった。
「えっ、わっ、わっ!」
そして、チユは木下からバランスを崩して落ちてしまう。僕は一瞬だったが、詠唱と唱え、どうにかチユを浮かし自分の腕の中に収める。
「びっびっくりしたぁ。あ、ありがとう、レン。」
と、お礼を言われる。だが素直に喜べなかった。
「なんで、こんな所で、木の上にいたんだ?」
「れ、レン?」
僕は怒っていた。何故怒りが湧いているのかはよく分からない。あんなに心配していたはずなのに。
「心配したんだよ……。すごく……。」
そう、心配していたのだ。
「ごめん、これを猫に取られてつい……。」
と、チユの手のひらから出てきたのは前にチユにあげた魔導石である。といってもあげたことすら忘れてたくらい簡単にあげたものである。
「これだけの為に……?」
「これだけじゃないよ。私、レンからもらったものならなんでも大事なの。」
と、魔導石を大事そうに持つ。僕は、チユの手に自分の手を重ねる。
「ねぇ、レン。明日、護衛魔導士を決める日じゃん?私、レンがいいと思ってるんだ。」
「僕も、また護衛魔導士がしたい。チユの隣で守りたい。チユは本当に僕でいいの?」
「ふふっ!勿論!」
と、笑う千癒。僕は月光に照らされるチユのを見て、美しいと思った。それと同時にに胸が熱くなる。
その時何故かアーサーの言葉を思い出す。
「それとチユ様に対してどう思っているんだい?」
もしかしたら、僕はチユのことが好きなのかもしれない。
こうして、無事、チユを見つけることができたのだった。チユはこの後王と、アーサーに怒られ、僕はというと、気づいてしまった恋心をどうすべきか整理できないまま、次の日を迎えてしまった。
今日は、聖女様の護衛魔導士が決まる日である。




