三十二話 アイラの叫び
「私は……、辛かった!」
涙を流しながら話すアイラのことをアーサーは静かに見ていた。
「昔から、みんなに釣り合っていないと言われ続けてた、言われるたびに努力してきた!でも、アーサー様だけは、私の味方でいて欲しかった!なのに……!」
そう、静かに泣き崩れるアイラ。
ここはパーティー会場の裏のため、あまり人は来ないのが幸いだった。婚約者がこの様に泣き崩れていたら良からぬ噂が流れてしまうからである。
アーサーは、アイラを強く抱きしめた。
「すまなかった。アイラ。あの瞬間、僕は君を傷つけてしまったんだね。」
そうして、真っ直ぐとアイラの瞳を見る。
「だが、どうか僕の話を聞いてほしい。」
そうして話し始める。
令嬢達が悪口を言い、アーサーが、
「確かに、アイラは怒りっぽいところがあるよね。最近、アイラが何を考えているのか僕も分からない時があるよ。だけど……。」
と言い、アイラが逃げた後の話を。
「だけど、アイラは努力をしているよ。君たちが見ていないところでね。一人で、マナーの勉強したり、政治の勉強したりしてるんだよ。それにさ、君たち知らないでしょ。」
すると、令嬢達はビクッとする。それ程までにアーサーの目は笑っていなかった。口では笑っているのに。
「愛してないって言ったね、それは違う。僕はアイラを愛しているんだ。怒りっぽいところも、泣き虫なところまで情けないなんて思ってない。それどころか可愛いと思ってるんだよ。だから、これ以上アイラのことを悪く言ってみろ。……分かってるよな?」
コクコクコクと令嬢達は頷いて、青ざめながらパーティー会場を後にしたのだった。
その話を聞いたアイラは顔を赤くしてボーと
「だから、君の思っていることは違う。僕は君のことを釣り合ってないだなんて思っていない。」
「わ、私は勘違いをっ……!」
「でも、君を傷つけてしまったのは事実だ。申し訳なかった。」
すると、アイラは少し一呼吸おいて話し始めた。
「私はずっと、ただの政略結婚だと……。」
「あれは、僕から婚約を申し込んだんだよ。それに、覚えていないかい?僕たち十歳の時のダンスパーティーより前にあっているんだよ。」
え、とアイラはポカンとする。思い当たる節がない様だ。
ダンスパーティーより前、アーサーは一人でこっそりと城下へお忍びで出たことがあるそうだ。その時、偶然にもアイラもこっそり一人で町に出ていた。
町に出たはいいもののアーサーは一人で迷っていた。その時、何度も町へ出たことのあるアイラが、
「迷ってるの?一緒に行こう!」
と、笑顔で手を差し伸べた。その時のアイラの顔が忘れられなかったそうだ。そう、一目惚れをしたのであった。
それからしばらく経ちダンスパーティーがあり、またアイラを見つけることができ、ダンスを申し込んだ。それから数日後、アイラに婚約を申し込んだのだった。
「お、覚えてないですわ……。」
「だから、僕はアイラを愛しているんだ。君は?」
アイラは顔を真っ赤にしてしばらくポカンとしてしまったが、乾いた口で頑張って行った。
「私だって、愛してますわ!」
こうして、仲直りすることができたのだった。
さて、ここまでチユは何をしていたかと言うと、この二人の後ろで途中からニヤニヤしながら見ていたのだった。
「ぐふっ、まるで漫画みたい!」
と、思っていたのは秘密である。ちなみにだが、彼女は正式に聖女である。
「さて、お二人とも!とくにアイラちゃん!パーティ会場にそろそろ入らないとヤバない?メイク直して行こう!」
そう、チユは気を取り直して言った。
こうして、パーティーは無事に終わることができたのだった。




