三十一話 アイラの話
「アイラちゃん!」
アイラは、王宮の庭の花壇のところでうずくまっていた。
「チユ様……。」
「話は聞いたよ!何か誤解して……。」
「もう、無理だわ。」
アイラはそう言い、ぽつりぽつりと話し始めた。
チユ様に準備をしてもらい、自信満々でアイラはアーサーのところへ向かった。
「アーサー様はどこかしら?」
集合していた場所にアーサーがおらずアイラは彷徨っていた。
その時、ある令嬢達の噂話が聞こえた。
「アイラ様って、短気よね。この前も私何もしていないのにワーワー言われましたのよ。」
「そうそう、そんなんでアーサー様の婚約者が務まるのかしら。」
「家柄だけで努力もしてないくせにね。」
そう笑い始める。
ちなみにだが、私がワーワー言ったというのは、今話していた令嬢が、入るのを禁止されているある庭に入っているのを私が見てしまったので止めただけである。入ってはいけないと伝わってなかったのかしら?
「大体、政略結婚。アーサー様はアイラ様のことなんか愛していないのよ!」
そこは痛いところをつかれてしまった。私はせっかく化粧をしてもらったのに泣きそうになってしまう。その時、
「なんの話をしているんだい?」
と、令嬢達が話している所の奥から見知った声が聞こえた。私は隠れて聞いていたので、令嬢達もその声の主もいるのに気づいていないだろう。
「アーサー様⁉︎」
そう、声の主はアーサー様である。私は噂話を聞かれてしまったのと次の言葉を待つので心臓がドキドキしていた。
「確かに、アイラは怒りっぽいところがあるよね。最近、アイラが何を考えているのか僕も分からない時があるよ。だけど……。」
その言葉を聞いた瞬間、私は走っていた。ただでさえ陰口を言われてしんどかったのに、アーサー様はそんな事を思っていたのだ。いや、今知れてよかったのかもしれない。
私がアーサー様の婚約者など務まるはずがなかったのだから。
昔からそうだった。家柄だけ、私は王子に釣り合っていない、そんな風に沢山言われてきた。
初めてアーサー様と会ったのは十歳の時だった。この頃私は社交界で友達がおらずパーティーでは一人、壁の花になっていた。
そんな時、私に話しかけてくれたのがアーサー様だったのだ。
「君、名前はなんで言うんだい?もし良かったら僕と踊りませんか?」
そう、私に聞いてくれた。その時から私の初恋はアーサー様だった。
それから数日後のことだった。アーサー様の婚約者候補を決めるという事を聞いた私はすぐさま父のところへ行ってアーサー様の婚約者になりたいと言った。
我が家は公爵家だったためか選ばれたのは私だった。
婚約者として選ばれた私は浮かれていた。きっとアーサー様は私を選んでくれたんだと。でも、その期待もすぐ崩れ落ちた。
ある日、アーサー様に会いに行くために王宮へ向かっていた。するとメイド達の陰口が聞こえてきた。私は一人耳をすまして聞いてみると、それは私の話だった。
「アーサー様の婚約者ってアイラ様だそうよ。」
「アイラ様が無理を言って婚約者になられたそうで。」
「そうなの⁉︎どおりで釣り合っていないと思ったわ。地味ですものね、アイラ様。」
そんな話を聞いた時、私は自分がアーサー様に釣り合っていない事を知った。
幸い、その後アーサー様がたまたま通りかかりメイド達は逃げていった。
この日を境に私はアーサー様に釣り合う様に努力をした。毎日、毎日。
気がついたらあの陰口を言っていたメイドは姿を見かけなくなっていたが、それでも私を妬んでか同世代の令嬢の陰口が止むことはなかった。
それでも、最近、少しはアーサー様に釣り合えたと思っていたのに……。
走っていた足が止まったのは、初めのアーサー様トチユ様との集合場所だった。しばらく肩で息をしているとアーサーが後からやってきた。
「アイラ、遅れてごめん……、ってどうしたんだい?」
「さっきの話を聞いてました。」
「そう……か。」
やはり、否定もしないということはそういう事なのだろう。
「やはり、私はアーサー様とは釣り合わなかったのですね。」
「んん?」
「もう、嫌!」
こうして、今に至るのだった。
「なるほどねー、それだけ陰口言われてたらそう思っちゃうよな。」
「……。」
チユ様は腕を組み言う。んーと少し考えてから話し出した。
「とりま、アーサーと話してみようよ。もういっそ今の気持ちとか、今までのことアーサーにぶつけて見たら?」
「え?」
気がつけばチユ様に手を掴まれ走っていた。そしてアーサー様の前に立たされる。
「アイラ……。」
チユ様は軽く背中を押す。
「ほら。」
私は意を決して今までのことを話すのだった。




