二十七話 アイラと聖女 その一
「ちょっとお待ちなさい‼︎」
アーサーと別れたあと、私は今日担当の護衛魔導士ドニーと歩いていた。そんな時、後ろから何やら声が聞こえた。これは、私に言ってるんだよね?え、そうだよね?
恐る恐る振り向く。謎に幽霊みたいなポーズで振り向いてしまった為か後ろでドニーがぷぷっ!と笑っているのが聞こえてしまった。何故幽霊ポーズなのかは私にもわからない。何故か手がそうなってしまっていた。
「わ、私のこと?」
どうやら、私のことを呼んだのは、この赤髪の縦ロールをしていて、少しつり目で紫色の瞳をしていて、とても高貴なお嬢様だった。
「そうよ!それ以外に誰がいるのよ!」
と、前で腕を組みふんっ!と言ったような感じで立っていた。周りを見渡すと他に人はいなかった。
「確かに、私しかいないやん。」
でも、私に何の用があるのだろうか。なんか怒っとるし。私なんかいけないことしたんかな?
「それで、私になんの用があるの?」
そう聞くと、その女性はまず名乗りを上げた。
「私の名前は、アイラ・ローレンス。この国の第一王子、アーサー様と婚約している者ですわ!」
この人が、アーサーの婚約者か!思っていた雰囲気とは全然違かったが、めっちゃ綺麗!可愛いというよりかは綺麗な人だなぁ!そんなことを私は心で思っていた。
「貴方が、聖女様だと言うことは分かっています。それに、パーティーの件でアーサー様が貴方の面倒を見ているのも知っています。ですが!」
と、下を向いていた顔が、ばっ!と上がる。
「婚約者がいる者にあんなにベタベタと触ったり!呼び捨てで呼ぶのはどうかと思いますわ!それにやけに親しそうですし!貴方、アーサー様に好意でもあるの⁉︎」
と、少し涙目で言う。
成程、成程、この名探偵千癒は、分かりましたよ?これは嫉妬というやつなのでは?と心でドヤる。
それはそうとして親しくしてしまったのはレンの話とかで盛り上がってしまっていたのでそれは申し訳ない。だが、ベタベタはしてないし、好意もないぞ?
「いや、ないないない。アーサーに好意なんてない。親しくしているのは少し話が盛り上がってしまっただけ。それはなんか申し訳ないけど、ベタベタ触ってはないはずだよ?」
「してたじゃない、抱き合ってたじゃない!貴方がよりかかる感じで!」
抱き合う?はてはて?わたしは記憶を思いかえす。一つ当てはまるとしたら……。
「さっきの転けた時のやつ⁉︎」
「そう、さっきのよ!って、こ、転けた?」
と、少し困惑しているようだ。
「そう!さっきバランス崩して転けちゃった時に受け止めてくれたんだよね!勘違いするようなことしてマジでごめん!」
「マジでっていう意味がよく分かりませんが、そういうことならまぁ良いですわ。こちらこそ勘違いしてしまって申し訳なかったわ。」
「良いんだよ!それほど好きなんだね!」
私が素直にそう言うとアイラさんはみるみる顔が赤くなって、
「そ、そうね!す、すすす好きよ⁉︎何か問題が⁉︎」
「別に問題はないと思うけど。」
と、ドニーがツッコミを入れるくらいにはテンパっていた。だが、しばらくして落ち着いたのか少し悲しそうな顔をして呟いた。
「だけどアーサー様は……。」
およよ?これは何か行き違いがありそうだな?これは、なんだか嫌な予感。
「本当にごめんなさい、勘違いをしてしまって。……私も冷静にならないと、こんなんじゃ、全然ダメだわ。これで失礼しますわ。」
「待って!良かったら明日お茶でもしませんか⁉︎」
なんだか、アーサーとアイラさんはあまり噛み合ってない気がしてならない。
「え、ええ。大丈夫ですわよ。」
それに、私は現在メイドしか友達がいない、なので、友達作りをしようかと思う。
かくして、私はアーサーの婚約者とお茶をする事になったのだった。




