二十六話 護衛魔導師とチユと。
チユ目線です。
レンが護衛魔導師を外れて数日が経った。今では腕のいい魔導師が代わりばんこで私を見守っていた。と言っても大体みんなと仲良くなることができた。たまに無口で喋らない人もいたが、基本的に、喋りやすかった。
だが、なんだか心がぽかっと空いたような感覚が何日も続いた。
護衛魔導師が代わりばんこと言っても何人か続いて見守る人がいた。私はその人達となかなかに仲良くなることができた。そのうちの一人、ドニーという男だった。
「よっ!ドニー!」
「よっ!チユ様!」
と、挨拶するのが定番になってきている。私より全然年上である。確か……二十九歳とか言ってたような気がする。
いつものように、アーサーとダンスの練習をする。その後の雑談テラスにいる時、アーサーはある事を聞く。
「あの、ドニーとかいう護衛魔導士とは仲が良いのかい?」
「うん、最近仲良くなったよ。」
「ふうん?」
何か含みのあるふうん?だったが特に気にしないようにしておこう。
いつものようにレンの話をしたりして雑談したりしていたが急に少しかしこまった様子でアーサーは話し出す。
「何々?急にどうしたの。」
私がそういうと、アーサーは少し照れたような緊張した様子で、
「女性にプレゼントして喜ぶのは何だろうか。」
と、質問してきた。私は少し呆気に取られた。何故ならそんなこと聞かなくとも簡単に喜ぶものをあげれそうな人だと思っていたからである。
「え?え?それ私に聞きます?」
ついつい聞き返してしまった。
「あぁ、最近、君の爪何か塗っているだろう?それにこの髪。」
そう、今私の髪はサラサラなのである。レンに作ってもらったドライヤーが有能で、タオルドライより髪がサラサラになったのだ。あと、オイルがあれば良いのだが……。だが、残念ながら私にそんな知識がある訳がなく、今度レンに相談しようにも相談できずにいた。
爪は、レンに作ってもらったネイルをつけている。ネイルを落とす液も作ってもらっていたので落としてはネイルをして……というのを繰り返しおしゃれを楽しんでいる。
「それがどうしたの?」
それと、何が関係しているのだろうか。
「今、メイド達が君のことを見てネイルとやらをしてみたいと羨ましがられているのを知っているかい?それにその髪も、メイド達は何故そんなにサラサラなのか気になって仕方がない様子だったよ。」
「そうなの!それならそうと言ってくれたら良かったのに!ネイルとかだったら全然あげたよ!」
「そのネイルと言うものとドライヤーというものは、レンが作ったんだろう?レンのことだ、そのうち商品として提供すると思うよ。」
確かにな。でも、今度メイド達にネイルとかしてあげよう、と決意する私だった。
それでだ、とアーサーは、腕を顎の下で組んで話を続けた。
「君なら、良いアドバイスを貰えると思ったのだよ。」
「そ、そうかな?」
と、少しニヤけながら返事をしてしまう。正直言うとこういうアドバイスは好きではある。褒められているようで嬉しいが、アドバイスするには少し問題がある。それは、
「でも、私そんなにアドバイスした事ないよ?」
すると、アーサーは意外そうな顔をした。
「そうなのか、意外だな。」
「でも、できる限りのことは頑張るよ!で?どうしたらいいかな?」
すると、アーサーはニコッと笑い幾つかの袋を持ってきた。
「これは僕の大切な婚約者にあげようと思っているんだが、いつもあまり嬉しそうな顔をしないんだよ。」
その袋の中には高級そうな髪飾り、ネックレス、香水などがあった。それから机に置いてある深碧色のドレス。
「どれも良さそうじゃんか!」
「そうかい?それなら良いのだが……。」
どうやら、アーサーは婚約者のことで陰で悩んでいるパターンだなっ!と私は直感でビビッときた。
「でも、本当にこのドレス綺麗……もう全部プレゼントしてみては?それでどれが一番良かったか反応を見て次回頑張るとか。」
と、アドバイスになっているか分からないが頑張って絞り出す。
「そうか……、そうしてみるさ。何故かプレゼントをした時だけ微妙な反応になるから気になってしまってね。」
「それは、何が理由が?」
「さぁ?それは分からないよ。前に気に入らなかったか聞いても何も言わなかった。まぁ、それはそれで可愛いのだが。」
と、ふふふと笑う。私はというと少し引いたが。
プレゼントを片付け、私とアーサーはまた話を続ける。
「でも、婚約者ってどんな人?」
「とにかく可愛い人だよ。見た目もだけど中身もね。」
可愛いのか。なんだか、ゆるふわな感じだろうか。確かにお似合いだな。
そんなこんなで、いつもの雑談が終わり別れる。その時、私は立ち上がった瞬間足が、椅子に躓いてしまい、バランスを崩して転けてしまう。
「おっ、うお!」
我ながらバランス力ねぇー!なんて心で叫びながら女子とは思えない声を出してもうすぐで痛みに襲われるだろうと身構える。だが、痛みが襲って来ることはなかった。
「おっと!」
「……あれ?」
アーサーが支えてくれたのだ。いくら親しくなったとはいえ、婚約者のいる人に支えてもらうなんてなんだか少し申し訳なく思ってしまった。
「あ、ありがとう。」
そういって私はアーサーから離れた。
「いえいえ。お気を付けて。」
こうして私達は別れた。このあと、護衛魔導士ドニーに心配されてしまった。
そんな様子を、陰からある女の人が見ていたのだった。
赤い長い縦ロールの髪の毛に少し吊り目で紫色の瞳を持つの彼女の名前は、アイラ・ローレンス。アーサーの婚約者であり公爵家令嬢である。
「あの者、許しませんわ……っ!いくら、アーサー様があの女の面倒をみるからといってあの女、調子に乗っているわ!」
そう呟いて、アイラはチユの元へ向かったのだった。




