二十話 帰宅
馬車に揺られる。僕たちは今日、ブルーメ村から王都へ帰っている。
村を離れる時、ルテスちゃんやダスくんが駆け寄って元気になるクッキーをお礼として受け取った。僕とチユは若干、顔が引き攣ったが、二人のあの崇敬の眼差しを向けられると笑顔で受け取るしかなかった。また、村の人にも随分と感謝されると同時に寂しがられ、村を出るのに二十分もかかってしまった。
「食べるかい?」
と、ニカっと笑うチユ。
「チユこそ食べなよ。」
と、言いながら二人で食べる。普通に美味しかった。
「やっと、着いた……。」
と、げっそりとしているチユ。今回は吐かなかったので全然マシだと思う、が結構しんどい様だ。
「ははっ、お疲れ様。チユ。」
「うむ。私は疲れた。寝る!」
そう言ってフラフラと自分の部屋へと戻るチユ。僕もチユの部屋まで送る。もちろんトトとララも着いてくるが。
「ひっさしぶりの私のお部屋ー!なんかこうなると懐かしく感じるもんやねーー!」
と、部屋に戻るや否やベッドにダイブし爆睡し始めるチユ。
なんと言うか、自由ではっちゃけているけれど実はそうでもない。今回の旅をしてもそこの印象は変わらなかった。不思議な人だなチユは。……そういえば、ルテスちゃんを可愛くしてた日、なんで僕の部屋に来たのだろうか。明日にでも聞いてみるか。こうして僕らはブルーメ村から帰宅したのだった。
次の日、いつもの様に護衛の為チユのところへ向かう。チユはこちらを見つけるとバタバタと駆け寄りある紙を渡してきた。チユの部屋の前の出来事だった。
「これ!ドライヤーの絵!あの時、ルテスちゃんの事でいっぱいになっちゃって、完成図を渡し忘れたんよね。」
「だから、あの時意味不明に僕の部屋に来たんだね。」
「い、意味不明って。」
と、チユの顔が少し引き攣っているうちに図を見る。
「……なんだかどっかで見た事がある気がする。」
そう、見た事がある気がしたのだ。それに、「ドライヤー」と言う言葉、やはり耳馴染みがあるような。
「え?」
「あぁ、いや、でも気のせいだと思う。」
「そう。」
でも、この形、どっかで見た事がある様な気がしたんだよな。……でも、チユの世界のものを知るわけが無いよな。
「まぁ、頑張ってみるよ。あと、ネイルってやつもね。」
「サンキュー!」
「軽いな……。」
その後は庭に行ったりと、まったり過ごした。そんな僕たちを窓から見てた人物がいた。その人は、この国の第一王子アーサー・ランネス、レンの友人だ。
チユから完成図を見せられてから約二週間。試作品が完全し、ついこないだトトやララ、それから同僚のザクラにも手伝ってもらい完成した。そして今日チユにお披露目をする日である。最近、少し何かを考え込んでいたようだったので喜んでもらえると良いのだが……。
「ど、ドライヤーやん!え?しかも高そうなドライヤーって感じやし!……レン、君は天才か?」
「いえいえ、それほどでも。あ、ネイルもどうぞ。」
「うっひゃぁー!ネイル!しかも色んな色があるやん!赤?青?黒?茶色〜〜!レン!天才!」
「いえいえ、それほどでも。」
「謙遜しすぎー。」
なんて会話をしたが、喜んでもらえたようで良かった。チユが喜びの舞をわしゃわしゃ踊ってたところでコンコンと、ララが部屋に入る。
「どったのー?」
と、チユが聞く。
「国王がお呼びです。」
と、ララは言う。ちなみに僕もらしい。まぁそうか。
国王が待つ部屋に着くと、第一王子のアーサーも一緒にいた。すると、チユは、
「…‥来ちゃったか。」
と、呟いてアーサーの方を向いていた。いつ知り合ったのだろうか。
「よく来たな。チユ様、それにレン。」
僕とチユは頭を下げて挨拶をするが、かしこまらんでいい、と言う言葉に甘えて頭を上げる。
「この前の浄化、誠に助かった。村の住民も助かったとの報告があった。急で戸惑った事もあったであろう。わしも今回のことは異例じゃった。普通もうちょっと順序を踏むんだがな。」
と、国王は笑い、話を続ける。
「ブルーメ村に新しくできた湖は
温泉やらになった様で、観光名所にもなりそうだと村長がホクホクしていた。それもこれもチユ様と魔導士、騎士団のおかげだ。チユ様、そしてレン、感謝する。」
「いえ、当然のことをしたまでです。」
と、僕が言うとチユもです。と何故かそこだけ繰り返した。
「次のパーティにでも魔導士や騎士団に伝えようと思う。それで本題だが……。レン、臨時の護衛魔導師を降りてもらう。そしてチユ様、一ヶ月後に貴族が集まるパーティがあるのだがチユ様のお披露目パーティとして開催しようと思う。それまでに魔導士の中から、護衛魔魔導士を決める様に。」
「それは、レンでも良いんですよね?」
と、チユは国王に聞く。勿論、と国王は頷いた上で言う。
「だが、他にも色んな魔導士がおる。その人達を見て、知ってから決めてもいいと思う。」
「……分かりました。」
と、渋々と言った様にチユは頷いた。何となく護衛魔導士の話だとは思っていたが、気づかないふりをしていた。もしかしたらこの生活が案外気に入っていたからからもしれないな。
「アーサー、それまでの間、チユ様をサポートしてくれるかい?」
「勿論です。」
こうして、僕とチユは会う事がなくなった。と言ってもあれからチユは魔塔にちょくちょく来てはいるのだが。僕の希望としてはまた護衛魔導士としてチユのそばに居たいと思っているのだが……、僕のわがままが通る問題ではない。僕は淡々と元の仕事をこなすのだった。




