十八話 帰る道中。
帰りはすぐ帰れるわけではなくて、時々休憩しながらの帰り道になった。
「はぁ、疲れたーーー!」
と、岩にぐだーと、もたれかかるチユの横に僕は座る。
「疲れるに決まってるさ。初めて浄化したんだ。しかも、二箇所も。それに山道だったしね。お疲れ様、チユ。」
「うん。……あのさ、浄化する時緊張してたんだけど、レンのおかげでほぐれた。マジでありがとう。」
「いや……なんというか放って置けなかったというか……なんというか。」
「そっか。」
二人に沈黙が訪れる。気まずくなったのもあるが、どうしても言いたかったことを僕は、話すために口を開いた。
「綺麗……だったよ。金色の髪と、チユの舞と、周りの光が、綺麗に噛み合ってて。」
「マジで⁉︎えへへ物語の聖女様みたいやった?」
「あぁ。……いつの記憶か分からないが、昔、チユみたいな聖女が出てくる話を見たんだ。その時に出てくる聖女様みたいで、本当に綺麗だったよ。」
「えへへ、ぐへへへ。」
笑い方は全然お話の中の聖女様じゃないけど。えへへからぐへへに変わったよ、この人。
そんなこんなで会話をしていると後ろに人の気配を感じた。チユも感じたようで、
「誰か後ろにいる気がするーー。」
と、僕に小さく言う。
「……誰だ?」
そう、後ろを向くと、黒く長い髪をして、黒い目をこちらに向けて立っていた。その顔は微笑んでいる。
「こんにちは。」
危険……な人ではないだろう。そんな雰囲気は纏っていない。敵意も感じない。
「こんにちは〜!あの、ずっと森にいたんですか?」
「いいえ?ただ、この森に用事があったの。入ったのはあなたが浄化し終わってからよ。」
と、いいながら、こちらにゆっくりと座る。
「……あなたも私が見えるの?」
「え?」
「いいえ、なんでもないわ。」
と、よく分からないことを言っているが、その女性は白い布をかぶるように着ている。
「……これ、着物?」
と、チユがその女性に聞く。
「えぇ!私、この服装大好きで。でも、最近はこの服も流行ってなくて残念だわ。」
「私も好きですよ!着物!」
何やら話が盛り上がってるみたいだ。
「私、ツルっていうの。少し私の話を聞いてくれないかしら。」
「全然いいよーーん!」
と、チユはやけにテンションが高い気がするがあまり気にしないようにしよう。
「あなた、名前は?」
「チユだよー!普通にチユって言って!」
「そう。字は、なんで書くのかしら。」
字を言ったところでここの世界の人には分からないのに、何故かこの人は聞く。チユの格好を見るにすぐに聖女だと分かるのに。俺とチユは首を傾げる。
「……、貴方、聖女でしょ?昔、貴方の国の字を教えてもらったことがあるのよ。で、字は?」
「えーと、むずいんだよね。千円の千に癒しという字。こう書くの!」
と、落ちてた木の枝で地面に書く。
僕はこの字をなんだが懐かしく感じた。
「千癒……そうなの。いい名前ね。」
そう、ツルは一言言い、自分の話をし始めた。
「私ね、魔導士が嫌いなのよ。昔、魔導士に知らないところに連れてこられたことがあるの。それなのに放りっぱなし。訳もわからぬまま、知らない村を徘徊したわ。後からわかったの、私を連れてきたのは魔導士だというのをね。それからは、その村の人に毛嫌いされて……。まともに食べ物が食べれなかったわ。」
「……そんな……。」
チユは口に手を当てて絶句する。
「ご飯食べれんのは、マジで辛い!今だって私焼肉食べたいくらいなのに。」
「ヤキニク……。」
多分だが、肉を焼くのだろう。チユは肉らしきものをひっくり返すような動作をする。ツルさんは、ふふふ、と笑い、焼肉は分からないけれど……、と話を続けた。
「有難う、聞いてくれて。少し聞いて欲しかったの。……また、何処かで。」
そういうと、立ち上がり森の中へ入っていた。すると、チユがあっ、と言い何かを拾う。
「これ、綺麗な櫛……。追いかけて渡してくる!」
「僕も行くよ。まだ近くにいるだろ。」
だが、ツルさんを見つけることはできなかった。あまりにも綺麗に消えたのでチユと二人で幽霊⁉︎なんて騒いだが、もう休憩も終わったので大人しく帰るのだった。
帰った僕たちは、ルテスちゃんを村長と、ダスくんに引渡した。
「この馬鹿‼︎」
ルテスちゃんが、ダスくんの元へ駆け寄ると、ダスくんは溜めてた思いを吐き出した。
「あれだけ危ないって言ったじゃないか!心配……したんだからな!」
と、目に涙を溜めながら。
「そうじゃぞ。次からするでない。今回は聖女様一行がいたからどうにかなったが、いなかったらどうなってたか!」
「ご、ごめんなさい!!」
と、兄弟はわんわん泣き始めて、村長はほっとした目で兄弟を見ていた。
その後、僕たちは村長に今回の件を報告した。
「では、もう森は安全、ということでいいのですか?」
「はい。ただ……ひとつ。お湯が出る湖があり、少しの回復ができるそうなのです。僕たち魔導士が調べようとは思っているのですが……。」
「その湖をどうするか、ということですな。」
すると、村長はむむっ!という顔をする。隣でチユが爪をいじりながら聞いていたが、パッと顔を上げた。
「安全だったら、温泉作ればよくね?」
と、言い始めた。どう?どう?とゴリ押ししてくる。だが、そう簡単には行かないだろ、とポンっと頭を叩く。「ぐへっ!」という声を聞き村長を見ると、その村長は目を輝かていた。
「それはかつて聖女様が作ったという?是非につくりたいものですな。」
と、ノリノリだった。
こうして、僕たちは浄化を終えた。明日は宴などがあるらしい。すぐに帰る予定だったのだが、調べることが増えた為もう少し滞在することになる。僕達は、部屋に戻り爆睡したのだった。




