一話 召喚した聖女はギャルでした。
「レン君、ーーよかったね!」
黒髪の少女が、僕に笑顔を向けていた。いや、そう予想した。口元は笑っているように見えるが、なんせ靄がかかったように顔だけが見えないのだ。君は誰なんだ?そう、今度こそ声をかけようとして目が覚めた。あぁ、またこの夢。君は一体誰なのか。
「いけない、急がないと。」
そう、僕は呟き思考を切り替えた。なんせ今日は大事な日なのだ。遅れてはいけない。僕は王宮に行くため、準備を始めたのだった。
この日ランネス王国では、ある儀式が行われようとしていた。その儀式とは聖女召喚だ。最近、各国で魔物が湧いている。その魔物は、代々聖女様が浄化や封印をして国を守っていた。だが現在、どこの国にも聖女はいない。前回の聖女様も、もう亡くなられている。なので、今日我が国が、各国を代表して聖女召喚をすることになったのだ。さて、聖女召喚をするには、魔塔の力が絶対に必要だ。何故なら聖女を呼び出すのは魔塔に所属している魔導士だと昔から決まっているからだ。今回、魔導士四人が聖女召喚を行う。
僕、レン・ユーリスはその魔導士の一人に選ばれてしまった。これで出世は間違いないのだが、やっぱり王宮というのはなんだか苦手で気だるくなる。エディー先輩にも「大丈夫かー?」と心配されてしまった。あの、オレンジの髪が揺れる。ちなみにこの先輩、見た目髭があり、怖い感じなのによくニコニコしている。しかも、見た目の割にまだ三十代なため、みんなからニコ先輩と呼ばれ、親まれている。
「……はい、とりあえずは大丈夫です。頑張ります。」
「まぁ、落ち着いてやれば大丈夫だと思うよ。」
そう、キーラ師匠は言う。彼は、僕の師匠だ。キーラ師匠は唯一生き残った第二代目聖女様の子孫で、とても優秀だと有名だ。
「こちらです。」
王宮を案内してくれたメイドの声で現実に戻される。いよいよ聖女召喚の儀が始まるのだ。
「よく来てくれた。」
目の前には国王ゼルド・ランネス様、第一王子アーサ・ランネス様、第二王子ダニエル・ランネス様がいる。僕らは頭を下げる。ふと、アーサーを見ると、よっ!と、手を少し上げていた。ちなみに僕とアーサーは学園時代の親友だ。かれこれ六年は一緒にいるだろう。
「我らランネス王国が三つの国を代表し、これから聖女召喚の儀を始める。準備はよろしいかな?我らが誇る魔導士よ。」
そう、ニコッと笑う。だが、その笑顔の裏には絶対失敗するなよ?成功しろよ?という圧を感じる。
「はい、勿論ですとも。では、そろそろ始めましょう。」
と、僕らを代表し一番年上かつ現段階、党のトップ、ハインリヒが返事をした。
さぁ、聖女召喚が始まる。僕らは円状に並び呪文を唱える。すると、光が溢れ出した。
「これが……。」
そう言ったのは国王か、それとも周りにいた騎士か。光は暖かく周りを包んだ。あまりの眩しさに皆目をつぶった。
再び目を開けると、そこには金髪ロングを三つ編みに、そして見たことがないような服を着た少女が座り込んでいた。僕はなんだか懐かしいような感じがした。今日、夢で見たような……。
少女は、突然のことで驚いているようだ。当たり前だ、無理もない。急に知らない世界に連れてこられたのだから。国王が声をかけようとする。その時、少女と僕は目が合った。その瞬間、少女は目を見開き初めて言葉を放った。
「ねぇねぇ、君‼︎名前は?」
誰のことをいっているのか。……ん?この感じを見るに、僕か?
「そうそう君君!当ててみようか?なんだか当てられそう。……レン、みたいな名前だったりして。」
……当たっている。聖女様は、エスパーか何かか?それにしても、これは名乗っていいのだろうか。チラッと国王とアーサーを見ると頷いた。いいのか。
「正解、僕の名前はレン・ユーリス。君はこの状況分かってる?」
すると、少女は少し涙目になりながら、
「マ、マジで?まさか、当たるなんて……!」
と、どうやら話を聞いていないようだ。なんだかよく分からない独り言を言っている。
「……君は、いつもこんな感じなの?」
そう質問せざるおえない。だって今まで記述に召喚されてすぐに聖女が魔導士に声をかけるだけでなく、こんなに動じないのは初めての事例だからだ。
「んんー?だって、私……。」
ギャルだもん‼︎
そう彼女は言った。ギャルとは何なのか分からない……が、この世界を救う聖女様は、ギャルだった。
初めまして!如月冬香と申します。初投稿です。気軽に読んで下さい!