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気付けばすぐ近くに

あれから僕は少しずつは変われたと思う。

いや思うことにした。

トラウマは消えないけど。

悔やんでいても仕方がなかった。


「大丈夫だよ。

 僕はできる子。」


自分にそう言い聞かせて玄関から足を伸ばす。

昨日までは玄関から一歩も足を動かせなかったのが、

一歩踏み出せた。

僕にとってその一歩は勇気の一歩だった。


「歩けた。」


僕はそう言った。

部屋の中には玄関の扉を開けた時太陽光で部屋の中かが照らされた。


「僕はこんなところにいたんだ。」


僕は気づいた。

ずっと暗いところでこもっていた。

自分が殻に篭り外敵から身を守るかのように。

でもそんな外敵は少なく。

僕がビビり過ぎていたということだった。


「大丈夫だよ。」


僕はジャージを着ていたので、

運動のために外でランニングしようと思った。


「・・・・」


何も言わずに空を眺める。

これほどまでに綺麗と思ったのは初めてだった。

いつもみていた光景。

けれども今日は違うように見えた。

どこか輝いているそんな気配がした。


「よし。」


僕はそう言ってマンションからでて走り出した。


「体が思った以上に軽い。」


性転換してから体のスペックは総合的に上がったとは思う。

けれどもここまで体が軽く感じるのは心の整理ができたおかげなのだろうか?


「大丈夫だよね。きっと。」


僕はこの街の至る所を走り回った。

近くの駅。

有名なお店。

などいつもみていた光景を走りながらみる。

何かが吹っ切れたのか、

全てが新鮮に感じた。

そして1時間ほど走り僕は帰宅した。


「気分はいいね。」


どうしてだろうか?

いつもの道を走っただけ。

それだけなのに心はまだワクワクしていた。


「自分の世界か。」


ゲームでは自分の為だけの世界を作り上げ、

僕はそこにこもっている。

そこで完結できるようにしたからだった。

でも動くことでいつもは気が付かなかったことや、

何気ない日常に気がつく。


「きっと僕は気づいていなかっただけなんだ。」


普通らしく。

僕にはわからなかった。

だから流されるままに生きていた。

でも今日街を走っていると気がついた。

何かに流されるのではなく、

自分という個性が存在し、

その個性にあった生き方をしていた。

今までの僕は透明で色を持っていなかった。

みんなは色をもち全て十人十色。

個性という色で塗り固められたものに、

透明なもので勝てるわけがない。


「自分らしさか」


自分らしさが何かよくわからないが僕が今日分かったことは、

誰かと一緒に楽しむだけでも人生は変わるということだった。

拒絶をするのではなく流されるのではなく受け入れる。

それだけでも世界は変わってみえる。

だから楽しもうじゃないか。


「そうだよね。

 きっと楽しむ方がいいよね。」


そう。

どんな小さなことでもいい。

幸せを見つけていけば自分のことを不幸だなんて思わなくなる。

苦手なことは苦手なままでいい。

それを上回る何かを持てばいいだけだから。


「難しく考えなくていいんだ。」


そして僕は気がつけば手にスマホを持っていたのだった。

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