vs僕
「でもまだ2日間残ってるんだよね。」
ゲーム内の今日が終わり僕はつぶやいた。
今日一日は自由に無双し続けたが、
多分だけど明日からは僕を集中狙いするだろう。
「明日になってから考えよ。」
そして僕は明日になるまで、
素材を回収していたのだった。
朝日が登る時間帯、
『それでは死者復活でーす。』
という声が鳴り響きわたった。
「もうそろそろかな?」
ドッペルゲンガーが戻ってきた。
「素材はここに置いておいてね。」
僕はドッペルゲンガーが集めた素材をインベントリに入れ、
そしてまたドッペルゲンガーに素材集めをさせたのだった。
「今日はもっと面白いことをするか。
そうだねぇ。書物術<神典:正義の味方>
書物術<神典:滅びるは悪>」
隠しステータスの一つであるカルマ値。
それが1以上のプレイヤーには全ステータス、全スキル効果2倍。
−1以下のプレイヤーは全ステータス半減、スキルクールタイム2倍が付与された。
カルマ値とはNPCがそのプレイヤーに対して負の感情を抱いた分減っていき、
良い感情を抱くと数値が加算されていく。
ちなみに僕は0で固定。
理由はNCPと絡まないから。
絡んでもクエスト消化など故にカルマ値が変動することは無くなった。
「これでどうなるだろうか。」
僕はそう言って見守るのだった。
時間が経つにつれてカルマ値の値が大きいプレイヤーが有利になっていた。
「これじゃ偏りすぎだよね?
書物術<神典:反転していく世界>」
プラス効果はマイナス効果に、
マイナス効果はプラス効果に変換されるスキルとなった。
「それと書物術<悪の為の正義>
書物術<悪の為の世界>」
カルマ値が低ければ低いほど強化されていき、
高ければ高いほど弱化する。
そしてカルマ値の低いものには毎秒10再生し、
スキル効果も上昇する。
「夜の世界の始まりだなんてね。」
僕はそう言った。
僕は今まさに最高に気分がよかった。
僕をいじめてくるものはおらず、
僕の描いた世界に踊らされる人々。
見ていて楽しかった。
「壊れてきちゃったのかな僕。」
人前に出ると何もできなくなる。
だけど人前に出てこなければ自由なままの姿でいられた。
「もうそろそろだね。」
防衛設備のサーチが反応する。
敵が僕に向かってくるということ。
そしてその人数は数千を有に超えているということ。
「それじゃ最後は綺麗に舞うことにしましょっか。」
僕はそう言ってステージを用意する。
僕が作り上げた世界。
イベントの世界とはいえ僕が作り僕だけが楽しめる世界にした。
その世界は終わらせることができるのは僕だけ。
だから終わらそう。
最後のエンディングは楽しい方がいい。
「書物術<神典:戦争開始の合図>」
一面が草原にかわった。
山だった風景も。
流れていたはずの川も。
全てを飲み込むかのように草原が侵食していった。
「諸君たち僕と戦お?」
僕はそう言って書物を広げる。
「書物<偽典:堕ちてゆく世界>
まずはこれに抗ってみて。」
闇属性の範囲魔法。
いわゆる弱化。
「これくらいでくたばるんだ。
ダサいね。
一対数千で負けるなんて。」
僕は偽る。
いつものように。
キャラを個性を思いも全て偽る。
偽りの上で出来上がった。
それは本物と呼んでいいのではないか?
「書物術<偽典:フレイムアロー・レイン>」
フレイムアローの雨が降り注ぐ。
無属性と炎属性の融合魔法。
「魔王!!」
そのものがそう叫んだ。
「だからどうしたの?
非力で無能な自分を恨んでみたら。」
現実の僕のように、
「弱いね。
だから負けちゃうんだよいつでも。
そして誰にだっても。
勝つためには手段は選んじゃダメだよ。
小汚く、愚直で醜くてもいい。
だって最後には笑っているのは勝者なのだから。」
いつも笑われる側だった僕のように、
「だから立ち上がって見せてよ。
足掻いてみてよ。
その姿がきっと1番輝いているから。」
僕ができなかったように、
でもゲームという壁を挟むことにより、
自分の本性をより出せるそんな場所だからこそ。
「さぁ始めよう。
今からが本当の試合だよ。」
僕はそう言ったのだった。




