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無頼派

(犬という知恵のかたまりはもちろんニャアと鳴く獣でもわかる話)


 プロレタリア文学の革命戦士・社会不適合者たちがヨコの関係とかどうでもいいと言っていたら、タテの関係で人格が統合できていない人たちの存在に無頼派は行きついた。

 無頼派。

 頼るべき財産がない人たちの気持ちを書く。

 プロレタリア文学からの流れです。


 無頼派の技術的な特徴は、登場人物が人間的な弱さから余計なことをすることでしょう。

 たとえば、太宰治の『走れメロス』とか。


 ━━祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺こらえ、陽気に歌をうたい、手を拍うった。メロスも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った━━


 もしも、メロスが早めに祝宴から退出して、明日に備えて寝ていれば「南無三、寝過したか」はないのです。


 ━━約束を忘れる━━

 ━━一生このままここにいたい、と思う━━


 間に合わなければ友人が死ぬという状況で、余計なことです。

 しかし、そういう余計なことをする人間的な弱さを無産階級(頼るべき財産のない人たち)は多く持ち合わせています。

 これは小説技術上に人格(パーソナリティ)の問題となります。


 写実主義・・・社会というヨコの関係で人格を扱う。

 浪漫主義・・・過去現在未来というタテの関係で人格を扱う。

 山田美妙・・・人格を持てとか弱い僕に厳しい要求をしないでヨ。

 自然主義・・・当今は客観的な人格を完成している者が多い。

(高踏派・・・タテでもヨコでもどちらでもいい)

(耽美派・・・そんなことよりも場面構成の話をしよう)

 白樺派・・・人格修養とかしなくても、みんな違ってみんな良い。

 プロレタリア文学・・・人格修養とかしないぞ。党の正しい指導に従なければ収容所送り。

 無頼派・・・無産階級の人格は統合されていない。


 文章技術よりもテーマを問題にしたグループの多くは、人格の問題を扱いました。

 人格が統合されている登場人物が多いということは、わかりやすいけれどもリアリティに欠けるのです。

 もちろん、リアリティに欠けるけれどもわかりやすいのです。

 自分の書きたいことの種類によっては、「余計なことをする人間的な弱さ」という要素を作品に取り入れてもよいでしょう。


 ・余計なことをする人間的な弱さを持つ人格


 これが無頼派から学ぶべき技術だと思います。






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