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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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可能性の芽吹き

 コルナが産気づいた。


 それは俺とコユキが帝都観光から帰還する、ほんの一時間ほど前の事だった。

 コルナは現在、彼女の寝室で出産に直面しているらしい。彼女の元にはカシムと助産師の二人が立ち会っている。ちなみに助産師というのは、とある診療所から派遣されたらしいが、それは死霊術師とは無関係だ。


「ど、どうしましょう!」

「とりあえず落ち着け」


 ノアは活発か冷静か、と言われれば冷静沈着な男だ。もちろん感情的な部分も持ち合わせてはいるが、それがここまで焦っているのは珍しい。


 しかし、俺達には何も出来ないだろう。

 前世を合わせても、俺には出産に立ち会った経験が一切ない。だからこの状況で俺が出来ることは何もない。手も足も出ない。

 そもそも、コルナを元気付けるのはカシムがやるだろうし、出産の手伝いは助産師がやるだろう。必要な役割分担は満遍なく行き届いている。

 そんな中で俺やコユキやノアのような、言ってしまえば第三者に出来ることは待つことだけだろう。


「コユキは出産に立ち会った経験あるか?」

「無い」


 間髪入れず、即座に否定された。

 その会話を最後に、俺たち三人の間に無言の時間が訪れた。


 俺は椅子に座り、コユキはその膝の上に座り、ノアは落ち着かないのかその辺を歩き回っている。

 しかし俺も平然を取り繕っては居るが、内心は結構波立っている。出産というのは基本的に喜ばしいことであるが、結果次第では悲劇にもなり得る。その悲劇に終わる可能性があるからこそ、こうして心がざわついているのだろう。


 このまま無言が続いていては、精神が疲弊してしまう。


「ノアは何時ごろ起きたんだ?」


 他愛もない事を聞いてみる。

 会話で平静を取り戻そうという試みだ。


「あ、え、えーとそうですね。昼過ぎくらいですかね」

「寝すぎではないか」

「ここのところずっと仕事をし続けて、疲れてただろうからな。その疲れが取れるなら目一杯寝ればいい」


 とは言っても、今この瞬間急速に疲れが溜まっているのだろうが。


「そう言えば、死霊術師が言っていた秘術って何だったんでしょう?」


 そんな事を言っていたな、確か。

 奴は死に際に何かを画策していた。それは奴の言動からも分かるし、奴の体に出た変化を見れば一目瞭然だった。


「コユキはなんか分かるか?」

「知らん。死霊術には詳しくないのでな」

「そうか。まあ、今となっては問題ないんじゃないか?」


 秘術だなんだと言ってはいたが、その目論見は奴の命ごとユウリによって切り伏せられた。だったらそれに首を捻るのは無駄ではないか。


 だが、そんな俺の楽観的な思考にコユキは共感しなかった。


「いや、そうとも限らんのではないか。奴の目論みは既に完遂しているかも知れん」


 その言葉に続く言葉は無く、長い静寂がグレイ家の居間を支配した。コユキの言葉に、俺達は唖然としたのだ。もしかしたら完遂されたのかもしれない、という不安が出産という事態と相まって言葉を失わせた。


 それから約九時間後のこと。

 限界が来て眠ってしまったコユキはともかく、静寂を切り裂いたその産声を、俺とノアは確かに耳にした。

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