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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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形勢逆転

 ヌールという壁を前にして、俺が立てた情けない策。それは帝都に滞在しているユウリに助けてもらうというもの。


 思いつくきっかけになったのは、現状がニエ村の時と重なったからだ。

 ユウリの持つ二つ名の能力ならば、俺たちの窮地に駆けつけてくれるとそう思った。


 情けない、というのは確信があった訳ではないという点。ユウリがどれだけの範囲の窮地を察知出来るのか、それが分からない以上絶対的な確信など無かった。あったのは期待だ。何より一度ユウリの助けを拒否しておきながら、結局手を借りてしまった事が情けなくてしょうがない。


 来てくれるかどうかは期待、しかし確信もあった。

 それはユウリならばヌールに勝利するだろうということ。それだけは揺るがなかった。


「『愛』が実を結んだ、という事ですか。しかし彼は本当に貴方の信頼に値する者なのでしょうか?」


 品定めするかのような、そんな眼差しがユウリに向けられる。


「こと戦闘においてこいつ以上に信頼できる奴は居ないと思うぞ。それなりに有名だしな」


 ユウリは『英雄』の二つ名を持っている。それなり、などという言葉では不十分だったかもしれない。


「有名ですか。ですが私は俗世には疎いもので、申し訳ありませんが知りませんね」

「だが俺はお前を知ってる」


 ユウリはヌールを知っているようだ。


「ヌール・ドグラズマ、二つ名は『愛の教祖』。範囲内の空間を掌握し、その中であれば衝撃波を利用した攻撃、空気の層による防御をこなす事ができる。厄介な相手だと認識している」


 目の前のユウリはやけに真剣な様子だ。ニエ村の時はディールを相手取り、挑発するような態度を見せていたが、今はそれほどの余裕は無いということか。それほどまでにヌールは強いという事だ。


 思えば死霊術師の活動が活発だと感じたのは、ヌールが味方についたからだったのだろう。これほどまでに強大な仲間が居れば、仮に自らの居場所がバレたとしても何とかなると思ってしまうのも頷ける。故に行動から慎重さが欠けた。


「大丈夫か?アルマよ」

「コユキ・・・」


 どうやらコユキはアンデッドの相手を終えたようで、俺の隣に立った。


「あのおかしな髪型の男があんでっど、とやらを全て粉微塵に吹き飛ばしてのう」


 階段から俺の元まで辿り着く一瞬であのアンデッド達を倒したのか。いや、コユキの口ぶりからして通り過ぎただけで吹き飛ばした?

 何というか、ユウリは底が知れないな。


「どれ、お前は楽にしておれ。妾に体を預けても良いぞ」


 小さいこいつに体を預けるのは逆に疲れそうだから遠慮しておこう。

 それよりも今はヌールとユウリが気になる。


「『英雄』とやら、そしてそこの少女を相手にするのは少々厳しいですね」

「おい待て!私を見捨てるというのか!?」


 ヌールの冷静な判断に、死霊術師は声を荒げた。死霊術師からすれば、今ここでヌールが去ってしまえば絶体絶命。それは避けたいだろう。

 確かにヌールは現状に対して、諦めにも似た言葉を口にした。だがそれは言葉だけ、その目には未だに闘争心が宿っているのがはっきりと分かる。


 そしてその事をユウリが最も早く理解しただろう。俺がヌールにはまだ戦う意志があると理解したその瞬間に、ユウリは既に行動していた。

 ユウリが踏み出した一歩は、爆発音のように耳を劈く。

 俺が気づいた頃には、ヌールが居た場所にユウリが剣を抜いて立っていた。剣からは血が滴り、ヌールを退けた事が分かる。


「な!?」


 その声は死霊術師のもの。余裕を帯びたこれまでの声音とは全く異なった焦りと絶望を混ぜたような声。

 そんな死霊術師の隣に立つユウリは、その場を離れ俺の元へ近づいた。


「ちょっとジッとしてろよ。治癒魔法かけるから」


 そう言うとユウリは俺の胸部に手を置いた。


「『キュア』」


 体の内から暖かい何かが溢れ出す。次第に全身から痛みが引いていく。やがて戦闘前よりも調子が良くなった。


「悪い、ユウリ。あそこで寝てるノアにもかけてやってくれ」

「分かった」


 俺の言葉通り、ユウリはノアの方へ向かった。

 数秒して、ノアは何事もなかったかのように立ち上がる。


 そしてユウリを含めた全員で死霊術師へと向き直った。


「お前を懲らしめる・・・その前に少し話をしよう」


 俺は死霊術師へそう告げた。

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