表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
92/148

立ち塞がる壁

「ヌール・・・!?」


 時間にしてみれば、王都から神都へ向かう道のりを共にしただけの短い仲だ。

 だがアンデッドと化した両親を前に、俺の決断の一押しをしてくれた。そういう意味では思い入れが深い男だ。

 そんな男が死霊術師に与している。その事実が視界を揺らすほど衝撃的だった。


「知り合いですか?」

「どうしてお前が!?」


 ノアを無視してヌールに問いかける。動揺で思わず声が大きくなる。


「私はいつ、どんな時でも『愛』の使徒、いえ奴隷と言った方がいいでしょうか。私は、彼の内に宿る歪曲した『愛』に惹かれたのですよ」


 そう言って、死霊術師を見るヌール。


 死霊術師に愛がある?

 教会で神父も言っていたが、とても俺にはそうは思えない。死体を利用するそいつは、人の命を愚弄していると言っても過言ではない。


「お前は間違ってるぞ」


 困惑と憤りが混ざり、声が震える。ヌールの理解が及ばない思考に、それ以外に返す言葉が見つからなかった。

 そんな俺の言葉は届くわけもなく、ヌールは不敵に口角を吊り上げた。


「ええ、ええ!そうです!私がここにいるのは貴方を阻む障害となってその『愛』を見届けるために他ならない!!」


 理解できない。こいつが何故そこまで愛とやらに固執するのか、何故それが戦うに値する理由になるのか。ヌールという男は、俺の理解の範疇から大きく外れている。今の俺にはただただ愕然とする事しか出来ない。


「ただ・・・それには邪魔な者がいる様ですね」


 狂気的な雰囲気は消え、冷酷な表情を浮かべたヌールは視線をノアに向ける。俺はその様子に何かを感じ、すかさずノアの前に移動した。


「グッ!!」


 その瞬間、俺は背後にいたノアごと後方に吹っ飛んだ。なんとか持ち堪えるも、あまりの衝撃に脚に力が入らない。


 一体何が起こったんだ?何も無い場所から腹を殴られた様な、そんな感覚だった。


 ヌールを目をやると、その顔に余裕の笑みを浮かべたまま佇んでいる。かかってこいとでも言いたげな様子だ。

 その様子に、俺とノアは同時にヌールとの距離を詰める。しかしその途中で、ノアが吹っ飛ばされる。それを確認しながらも、俺はそのまま肉薄した。


 勢い殺さずに剣を振り抜く。一切の躊躇を切り捨て、首を飛ばすつもりで繰り出した剣はその手前で止められる。剣は空間に固定されたかのように微動だにしない。


「どうやら大丈夫そうだな。後は任せるぞ、『愛の教祖』」


 そう言って、死霊術師は一歩下がった。俺たちに視線を向けたままにしている様子を見るに、どうやら俺たちがやられる様を見届けたいらしい。すぐさま奴をぶちのめしたいが、そうもいかない。


「動揺と躊躇をすぐさま振り切り、殺しにかかる。やはり貴方は素晴らしい」


 その言葉の後、固定されていた剣が動くようになった。ヌールは首元を狙う剣を軽く回避し、次に拳を俺の腹に打ち込んだ。

 それから続くヌールの猛攻。剣でそれを防ぎ続けるも、手に痺れが残る。


「普通に近接も出来んのか・・・!」

「これでも二つ名持ちですので。戦闘には少しですが覚えがあります」


 少しどころでは無い。重く鋭い打撃はダグラスやギルダの攻撃と遜色無いほど強力だ。

 だが、二つ名持ちとなると分が悪すぎる。このままでは敗色濃厚だ。とにかく攻撃を逃れる必要がある。

 攻撃と攻撃の僅かな合間をつき、素早く後退する。吹っ飛ばされていたノアもどうやら復帰したらしく、後退した俺の隣に並んだ。


「ノア、大丈夫か?」

「アルマさんこそ」

「俺は大丈夫だ」

「あの人を倒さないといけないらしいですね」


 二つ名相手に数的有利があるこの状況、勝てるか?いや難しいだろう。何処までの範囲か分からないが、距離があっても攻撃でき、近接も出来る。俺たちでは難しい相手だ。

 何か策は・・・。


 そういえば、今ならあの時と同じことが出来るのではないか?


「ノア、死なないように自滅覚悟で攻撃するぞ」

「は?」


 ノアが何言ってんだ、という目を向けてくる。そう感じるのも無理はない。自分でも支離滅裂な事を言っているのは分かっている。

 少々情けない策ではあるが、これに賭ける他無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ