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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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招かれるままに

 視界の端で、地面に腰をついていた女性が慌てて逃げ出すのが見えた。逃げ延びたい一心で駆け出し、ただひたすら走り、夜の闇へと姿をくらませた。


 それをアンデッドは気にする様子もなく、俺たちだけに視線を向ける。


「どうするのだ?」


 コユキの質問の意図。それは目の前の立ち尽くす死体から受けた招待を受けるべきか否か。


「俺は行くべきだと思う。明日には向かうつもりだったんだ。相手が歓迎してくれるならそれに乗る」


 俺の腹は既に決まっていた。

 だが、この場で最終的な決定権を持っているのはノアだろう。俺の決断がどうあれ、こいつの判断が俺達の総意だ。そのことに異論はない。


「冒険者のアルマ、その仲間のコユキ、そして騎士団のノア・・・だろう?」


 俺達の会話にアンデッドが割り込む。

 俺やコユキはともかく、ノアの素性が割れているのは不味いな。


「行きましょう。僕たち三人で」


 アンデッドの声から数秒。ノアが答えた。


 その決断に俺は僅かな不安を感じた。

 騎士団であるノアが帝都で戦闘行為を行うことは、王都と帝都の関係の悪化につながる可能性がある。それはここに来てから常に念頭に置いていたことだ。

 それがここに来て戦闘するというのは、危ない橋を渡ることになる。判断ミスではないだろうか。


 いや、それか素性がバレた時点で吹っ切れたとかか?

 それなら納得がいく。しかし、止めなければならない。やはり迂闊な判断だ。


「アルマさん、僕は大丈夫です。死霊術師は僕たち三人を狙っている。ここで僕が退いても無意味でしょう。きっと帝都にいるうちに僕の命を絶とうとするはずです」


 どうやら理性的な判断だったらしい。

 そうであれば、あれがどうこう言うことは無い。


「分かった。行こう」

「早く着いて来い・・・」


 そうして、待ち受ける死霊術師の元へと足を踏み出した。


* * * * *


 帝都の街には夜が満ち、昼間は活気に溢れていたとは思えないほど寂れた面影を見せていた。街には俺たち以外の人影はなく、明かりのない街を進む。


 向かう先は案の定、教会に置いてあった地図の赤い印の場所。つまり診療所。

 アンデッドの先導されていた俺達は、診療所の前で足を止めた。アンデッドは診療所の扉を開き、俺達に入る事を促す。

 扉の先に広がる深く冷たい暗闇は、俺達に手をまねいているようだった。


 俺達は言葉を交わさず、顔を見合わせてその決意を固める。そして扉の奥へと進んだ。


 中はいつか見た時と変わらない、何の変哲もない診療所。

 しかし巨大な何かが引きずられるような音が響くと、目の前に階段が現れた。それは昼に見た教会の仕掛けと同じものだ。


 俺達を先導したアンデッドはいつの間にか姿を消していた。そんな事を気にもせず、階段を下る。三つの足音が冷たい静寂の中に響き、消える。


 やがて階段が終わり、地下空間に降り立つと、壁に仕掛けられた灯りがひとりでに灯された。

 やがて全ての灯りが灯る。しかし未だに空間には薄暗さが残っていた。

 それでも中央に立つ男の顔は視認できた。


 立っていたのは町医者の男。男はどこか不穏な雰囲気を纏ったまま、俺達に笑みを投げかけた。


「ようこそ」


 声を発することはせず、男の話に耳を傾ける。


「君達は私の障害となる、それが今日はっきりした。故にここで死んでもらいたいのだが・・・」


 困った様子で後頭部を掻きむしる男。


「厄介なことに腕が立つようだ。だからこそ、とっておきのおもてなしを用意した。是非、楽しんでくれ」


 男は後退し、俺たちとは距離を取った。そうして手を叩く。その音に呼応するように、部屋に残った暗闇の中から顔を見せるアンデッド達。


「やりましょう」


 ノアの一言に身を構える。

 そうして、死霊術師との戦いは静かに幕を開けた。

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