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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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居場所

 棺の下から現れた階段。それを前にして、俺たちは顔を見合わせた。


「降りるか」

「そうだな」


 コユキと共に、階段を下る。

 脳裏にはユウリと共に『大食館』のアジトの調査に赴いたときのことが浮かんでいた。

 あの時の記憶を思い返しながら、階段を一段一段降りていく。『大食館』のアジトの調査では何か衝撃的な物が待ち受けているという、漠然とした予感を感じていた。

 そして今。あの時よりも強くその予感を感じている。


 そんな考えを巡らせているうちに、やがて階段を下りきった。そこにあった空間には巨大な魔法陣が描かれていた。魔法陣はどこか禍々しい雰囲気を醸し出している。


「これは・・・?」

「おそらく、死霊術で使用された魔法陣だろうな」


 俺の口から出た疑問に、コユキが答える。


「だが、今は使われていないらしいのう」


 コユキはそう続けた。

 その言葉が本当なのだとすれば、ここには死霊術師がいないということだ。

 となると、ここも空振りということか?


 そんな考えがよぎったところで、部屋の片隅に置かれた長机が目に入る。

 机の上には『日記』と書かれた冊子と、帝都の地図が置かれていた。地図には赤い印が書かれている。


「そこに何かあったのか?」


 後ろから投げかけられたコユキの言葉に、俺は振り向いた。


「日記と地図が」

「なにか手がかりになるかもしれんのう。中に何が書いてあるか確認したのか?」

「それは今から確認する」


 そのやり取りの後、俺は日記を開いた。

 適当に開いたページにはおよそ日記には書かないような事項が記載されていた。書かれていたのは材料、工程、過程、結果の四つのもの。


「日記というよりレポートって感じだな・・・」

「れぽーと?」

「いや気にするな。要は日記らしくないことが書かれてるってことだ」


 なんとなく一番最初のページを開いてみると、何枚か紙を千切った形跡があった。

 そこに何が書かれていたのか。それはなんとなく気にかかるが、それを考えたところで仕方がない。

 分かることはただ一つ。この冊子と魔法陣から考えるに、ここでは死霊術に関する実験が行われていたのだろう、ということだけだった。


 ここで行われていたのは実験。つまり死霊術師はここである程度死霊術を形にしたと考えられる。その後、死霊術師は王都に向かった。しばらくは王都で身を潜めていたが、騎士団の動きに感づき、もう一度帝都に身を移した・・・のだろうか。

 これはあくまで推測の域を出ない。前後関係が合っているかどうかを確かめる術はない。


 そう考えながら、次に地図を手に取った。


「妾にも見せんか」


 俺が見やすいように地図を持っていると、コユキの指摘が飛んでくる。

 確かにコユキには高い位置だったな。

 その場にしゃがみ、地図がコユキにも見えるようにした。

 そして地図に書かれた赤い印がどの場所を指しているのかを確認する。


 死霊術師がかつて使用していたであろうこの部屋。そこに置かれていた地図。そして地図に書かれた赤い印。

 この三つのことを踏まえれば、おのずと分かることがある。それは、赤い印が指すのは死霊術師に繋がる場所であるということ。


「教会はここ・・カシムの家がここだとすると・・・」


 そこで俺は思考が抜け落ちたような、そんな感覚に襲われた。


「・・・これは予想できんかったのう」


 コユキの声音には驚嘆が含まれていた。

 その声を合図に、俺は再び思考を巡らせる。

 

 コユキの言う通り、俺やノアの予想の範囲外にあった場所だ。

 だがその場所は、こと死体を集めるという点においては好条件だ。

 よく考えてみればこの教会も墓地を所有しているという点から死体を集めやすい。

 教会も、この場所も、日常の中で死体を手に入れることが可能なのだ。つまりは死霊術師にとって都合のいい場所ということ。


「少し考えれば分かることだったろうが・・・」


 自らに対する失望に嘆く。


 そして何よりも、俺やコユキやノア。それだけじゃない。カシムやコルナ、それ以外の一般人ですら死霊術師に会っている可能性がある。その事実が俺に強い衝撃を与えた。



 地図の赤い印がある場所。

 それはコルナが陣痛によって運ばれた場所、つまりは町医者が営んでいる診療所だった。

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