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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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再び、墓地へ

 それはコルナから魔導石の話をされる数分前のこと。


「アルマさん。僕たちはこれまでの調査方針を変える必要があるかもしれません」


 俺はいつものようにノアと会議を行っていた。今回の議題は、これまでの方針を大きく変えることについて、とのことだ。


「僕たちはこれまで聞き込みという調査方法を取ってきました。しかしそれではいつまでたっても死霊術師を捕らえることは出来ないと、そう思うのです」


 どこか弱々しい印象を受ける口ぶりに、俺の中にあった不安が息を吹き返す。

 どこかで考えないようにしていたケース。死霊術師を捕らえることが出来ないという最悪の結末。それは最も避けたい未来だ。

 俺たちが帝都に来たのは二週間前。俺もノアもできる限り秘密裏に動いていたつもりだ。だが、どこかから俺たちが死霊術師の後を追っていることに感づき、この二週間のうちに帝都を出たという可能性もあるのだ。

 事実、俺はアンデッドとの接触もとい戦闘を行い撃破している。そのことが死霊術師に露呈していたとしてもなんら不思議ではない。


 そんな軟弱な思考を俺は振り払う。

 この調査には必ず価値がある。すでに帝都に居ないという可能性に捕らわれていては、目的の達成は出来ない、と思う。


「だから、調査方法を変えることが今重要だと思うんです」

「具体的には?」

「これまでは聞き込みで得られた情報を元に、怪しいと思われる場所に調査に赴いていました」


 ノアの言う通り、俺がこれまで墓地などに向かったのは聞き込みによる情報ありきの行動だ。


「ですがこれからは僕たちで怪しい場所を推測し、その場に調査に行くという方法をとるべきです」

「なるほど」

「早速明日から実践しようと思うのですが、どうでしょう?」


 考えるまでもない。


「俺も賛成だ」

「ありがとうございます。ではどこに向かうべきか考えましょう。まあ、言うまでもないと思いますが」

「そうだな」


 いうまでもなく、怪しいのは墓地だ。

 俺が帝都に来て初めて調査に赴き、アンデッドと遭遇した場所。あそこには俺が見落とした何かがあるかもしれない。


「では明日は墓地に向かってくれますか?」

「分かった」


 俺がそう返事すると、ノアは急に背もたれに体を預けた。


「しかし中々思い切った決断だな」

「これまでは王都と帝都の関係が悪化しないことを考慮して大胆な行動をしないようにしてきました。でもそれを気にするばかりでは、このまま足踏みを繰り返すだけだと思ったんです。これが原因で帝都の軍が進軍してきたら、僕一人の首では足りないですけどね」


 重荷を背負い精神をすり減らし、それでもノアは振り絞るように笑みを浮かべた。


「お前の首が飛ばないよう尽力しよう」

「その時になったら、一緒に首を晒しましょうね」


 冗談めかして言うには言葉の重みが尋常じゃない。


「それは困る。まあ、その時は一緒に旅をしよう」

「亡命の旅ですか」

「そうだ」


 本当にシャレにならない洒落だ。そんな洒落を俺たちは笑い飛ばした。


* * * * *


 そうして朝を迎え、俺とノアとコユキはグレイ家を出た。


「では僕は今日も聞き込みをします」

「墓地の方は任せろ」

「おう、任せておけ。行くぞアルマ」


 昨夜ノアとの話し合いで決まったことをコユキに伝えると、コユキは意気揚々と同行することを口にした。理由を聞くと、俺一人では死んでもおかしくない、とのことだった。

 確かに戦闘の度に命の危機に晒されているが、俺だってそう簡単にこの命をくれてやる気はない。とは言っても、コユキが同行してくれるのは単純に頼もしい。


 そうしてノアと別れた俺とコユキは、墓地への道を歩いた。


「おや」


 その道中、見覚えのある顔と出くわした。

 それはコルナが陣痛で運ばれた時、診察した医者だった。


「どうも」

「ええ、こんにちは。お二人はどちらに向かうのですか?」

「あー、いや墓地の方に」


 誤魔化そうか迷ったが、墓地に行くこと自体は別に隠すほどのことでもないため、そのまま伝えた。


「そうですか。では私はこれで」

「おう、またの」


 遠ざかる医者の背に声をかけるコユキ。

 やがてその背中が見えなくなると、俺たちもまた歩き出した。

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