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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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遠い死霊術師の背中

 帝都に来てから約二週間。

 コルナが産気づいたあの日以降、俺とノアの結束はより強くなった。

 しかし現実はそう甘くはない。頑強な意思を持って捜索したところで死霊術師の背中が俺たちと遠いところにあるというのは変わらない。

 変わったことがあるとすれば、調査にコユキが加わったことだ。


 その日も空振りに終わった調査に気を落としつつも、翌日の調査に期待にも似た熱い感情を向けていた。

 そんな最近では当たり前になりつつあった日の帰り道、俺は意図せずそいつと出くわした。


「アルマ?」

「ユウリ」


 そう、ユウリである。


 道端でばったりユウリと出くわした俺は、そのまま立ち話を開始した。


「ユウリは何でここに居るんだ?」

「それはこっちのセリフだ」

「俺は死霊術師を追ってここまで」


 ユウリには闘技大会の後に、死霊術師について話しているから詳しいことは言わずとも分かるだろう。


「なるほどな。ああ、俺は旅で来てるだけだ」

「『大食館』の調査は良いのか?」

「闘技大会以降、ソフィア様と会えてないんだ。事実上、調査は打ち止めだ。ソフィア様と意見を交わすことも出来ないからな」


 ソフィアが・・・。だいぶ前から疑わしく思っていたが、それではますます怪しいな。彼女の目的は一体なんだ?

 いや、いま重要なのはそこではない。死霊術師を追うことこそが優先事項だ。


「ユウリはどのくらいの間帝都に居るんだ?」

「少なくとも一週間は居るだろうな。その間で良ければ、お前の手伝いしてやろうか?」


 突然の提案に硬直する。

 調査が停滞している今、協力してくれる人員が増えるのは喜ばしいことだ。それに『大食館』の残党探しという終わりの見えない調査に精を出していたユウリが仲間に加わるのは大歓迎。

 だが


「嬉しいが、遠慮しておく」

「そうか。ま、無理すんなよ。声かけてくれりゃ手伝ってやる」


 それじゃあな、とユウリは走り去っていく。夕暮れ時の帰りゆく人々でごった返している道を、神業の如き足運びで通り抜けていく。まるでそよ風のようだ。人を避けるために使う技術では無いだろう。

 

 どうしてユウリの協力を断ったのか。

 神都で召喚された『英雄』が帝都で戦闘行為をしたとなれば面倒ごとになりそう、だとか色々と言い訳はできるが、一番は個人的な意思だ。死霊術師を討つことは俺の復讐だ。その手助けをされるのは若干の嫌悪がある。

 多分、ユウリが居たら一瞬で死霊術師との一件にかたが着く。それは俺としては好ましくはない。理由は自分でもよくわからないが。

 まあ、本当に手も足も出なくなったその時は多分あいつの力を借りるだろう。

 とにかく、できる限り俺自身の力で死霊術師を追い詰めたい。そんなつまらないエゴだ。


 その後はグレイ家まで一直線で帰り、ノアとの会議を終わらせた。会議の内容は実に空虚だった。だからと言ってとことん落ち込むことはしない。次の日調査に向けて、気を引き締めた。


「無理しないでね」


 そんな俺とノアの決意も知らず、コルナは心配そうに告げた。


「いえ、ってそれなんですか?」


 コルナの言葉に返事をするノアが、同時に疑問を口にした。

 その疑問はコルナの手に握られた小さな石を見たからだろう。俺も気になっていた。ノアが質問しないようなら俺が質問していたところだ。


「ああ、これね。これは魔導石。魔力をよく通す性質を持った石、らしいの」

「うちで取引してる承認がね、おまけって言って渡してきたんだ」


 コルナの背後からカシムが顔を出した。


「これを商品として使えないか考えてたんだけど、どうすればいいか分からなくて」

「これが加工前の魔導石ですか。建築資材としては使われてるって聞きますけど、魔道具としては難しいのでは?」

「そういえば神殿もそれを使っておったな」


 コルナの困ったような言葉にノアが返す。そのやり取りにコユキが口をはさんだ。神殿と言うのはデュオクスの神殿のことか?それと一体どこから現れたんだこいつ。


 様子から見るに、魔道具展を切り盛りしているのはコルナの方なのだろうか。カシムの方は専業主夫って感じだしな。


 それにしても魔導石か。魔力をよく通す石。


「魔法陣でも書いて魔力流したら爆発する、とか出来そうだな」


 適当に呟いた言葉の後に、無理か、と続けようとしたその時。

 俺の手をコルナが強く握った。


「それよ!」


 妊婦がそんな激しく動いていいのだろうか。ノアもカシムも理解できていないようだ。コルナだけがハイテンション。コユキは全く興味なさそうに、俺の膝の上に座った。


 今日も団欒の時間が訪れる。それが近いうちに失われるとは、欠片ほども思っていなかった。

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