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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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グレイ家の波乱

「コルナさん!」

「コルナ!!」


 その場にいる全ての者がコルナの名前を呼ぶ。しかしその声にコルナからの返事は返ってこない。ただ、苦痛にうめくコルナの声だけが響く。

 最後に見たコルナの顔は、苦悶に歪む表情を浮かべていた。


 時は三時間前まで遡る。


 俺たちが帝都に来てから四日が経過した今日、俺たちはコルナと魔道具について話していた。

 死霊術師に関する調査は墓地に向かったあの日以降、特に進展が無かった。ノアの調査も、俺の現地調査も芳しい結果を得られずにいた。


 今日もその例に漏れず不発。明らかに気分が落ち込んでいる俺とノアを見かねたコルナが魔道具を見てみないか、と誘ってきたのだ。コユキはなんか着いてきた。


「これは?」


 まるで藁人形のような魔道具を手に取り、カウンターに座るコルナに質問する。


「それは魔物を引き寄せる魔道具よ。囮とかに使うの」

「これは何ですか?」

「回復ポーションね」


 ノアが手に取ったのは蛍光緑の液体が入った小瓶。


「治癒魔法とか使えるやつは居ないのか?」

「アルマお前、魔法に疎いのか?治癒魔法を使える者は数少ないのだぞ?」


 初耳だ。スミシーからは攻撃魔法しか習わなかったし、攻撃魔法以外に興味が無かったから何一つ聞かなかったけど。


「エルは使えるのか?」

「以前までは分かりませんが、少なくとも今は使えます。二つ名のおかげで」


 エルの二つ名は確か、『施しの魔術師』だったか。それが治癒魔法を使えるようにしてるのか。

 

 自然と全員が棚に並ぶ魔道具を黙々と眺めて回る。さっきのポーションと同種と思われる物から、指輪など。多種多様な魔道具が置かれている。

 沈黙が空間に鳴り響いた。


「・・・こんな事してていいんでしょうか」


 そこでノアが口を開く。沈黙に耐えきれなくなったのか、それとも本心からの言葉なのか。

 だがそう思う気持ちも分からなくはない。俺もノアも帝都で合流する事で事態に大きな進展が起こるかも知れないと、どこか楽観的に考えている節があったのだろう。

 それに、事実として俺が帝都に来て一日目はアンデッドに遭遇するという進展を見せた。そのことが楽観的思考に拍車をかけた。


 しかし、それ以上の収穫は無い。焦りが生まれても何らおかしくは無い。


 ノアの心にはまさに焦りが生まれているのだろう。


「そうだな。でも一度気分を一新することも大事だろ。コルナさんもそう思って俺たちに付き合ってくれてるんだ」


 こくり、とノアが頷く。ゆっくりとしたその動作は、完全に納得できているわけでは無いことが分かる頷き方だ。


「でしょう?コルナさん」


 そんなノアを一瞥し、今度はカウンターの方へ目を向ける。


 その視界にコルナの姿は入らなかった。


「う・・うぅ・・・うぁ・・・・・」


 代わりに呻き声が耳に入る。その声は間違いなくコルナのもので、苦しさを感じさせた。

 急いでカウンターへと駆け寄り、その下を覗き込む。


 そこには膨らんだ腹部をおさえるコルナがいた。


 そして今に至る。

 現在、カシムとノア、コユキ、俺の四人は町医者の元を訪れていた。カシムの顔には心配と困惑が浮かび、落ち着きなく歩き回っている。


「町医者なんてあるんだな」


 そんな俺の率直な疑問。しかし張り詰めた空気が少しでも弛緩しないかという期待を込めた言葉に答える者は誰も居なかった。


 やがて診察室と思われる部屋から医師が顔を出した。


「陣痛ですね」


 なんだやっぱりか。

 そう言葉にしようと思ったが、それよりも安堵が勝った。

 カシムが足早に、コユキがその後を追うようにコルナの元へと向かう中、俺とノアはカシムの背中を見ていた。


「アルマさん。僕頑張ります」

「俺だって」


 グレイ家に起きた一時の波乱。

 それは俺とノアの決意をより強固にしたのだった。


 俺とノアはそれ以上言葉を交わさず、ただカシムの安堵の声が聞こえるばかりだった。

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