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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
六章 帝都ガラニス 
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肉弾戦

 僅かな焦りを含んだ、普段よりも乱雑な足捌き。それでもなんとか俺の命を狙う刀をやり過ごした。


 そして素早く距離を取る。

 相手の間合いから、一歩ほど出たところで相手の様子を見る。そして目を見張った。

 俺の額をかすめた軍刀は既に納刀されていたのだ。


「お前、何者だ」

「・・・死人に名乗る名は無い」

「随分と利いた自虐だな。それとも死人というのは俺がこれから死ぬって言いたいのか?」


 会話の中で俺は剣を抜いた。

 剣を抜かないまま、このアンデッドの抜刀速度に合わせていたら間違いなく俺の首が飛ぶ。先んじて抜いておけば、最低限の防御は出来る。


 だが口が聞けるアンデッドとは不思議なものだ。俺がアンデッドを見たのは、王都から神都に向かう時と闘技大会の時の二回だ。その両方とも言語理解する知能を持ち合わせてはいなかったように思える。

 しかし目の前のこいつは違う。こいつには知能が備わっている。会話が出来る。

 ひょっとすると、死霊術師に繋がる情報を引き出すことが出来るかも知れない。ここは会話を続けてみるか。


「何故俺を襲った。こうして言葉を交わせるのなら、何か考えがあっての事だと思うんだが」

「・・・」

「おい、なんとか言ったらどうだ」

「・・・手に持ったそれは飾りか?」


 アンデッドは俺の剣を指差した。

 その後、腰に携えた軍刀に手をかける。


 これ以上の会話は無駄か。


 俺は剣を構える。

 アンデッドは深く腰を落とした。

 そして流れる静寂。その間に思考を巡らせる。


 このアンデッドの居合に俺は対応できない。いざ奴の間合いに入ろうものなら、やはり俺の首が飛ぶ。これは予測などではなく予知、決定事項と言ってもいい。

 あの男は刀での戦いを放棄する事はないだろう。つまり、奴が刀を握っている限りは剣による戦闘は避けられない。

 ならば俺が生き残るには奴の手から軍刀を手放させる以外にない。その為に、まずは俺がこの戦いの主導権を握る。

 こいつは確かに凄まじい剣の使い手だが、ギルダやディールのような格差は感じない。それならば俺にも勝機はあるはずだ。


 俺は構えた剣をアンデッドに向けて投擲した。ただ投擲するだけでは奴にとっては取るに足らない行動、攻撃にはなりえない。故に風魔法でその速度を底上げする。

 狙いは、投擲された剣を奴の居合によって防がせること。


 と、金属音が鳴り響く。狙い通り刀で剣を撃ち落とした。

 そこにすかさず俺は距離を詰める。刀を戻す時間は与えない。振り抜いた右腕を掴み、手のひらに魔力を込める。


「『ボウラマ』」

「っ!?」


 ゼロ距離で放たれた灼熱はアンデッドの脆い腕をいとも簡単に焼き切った。軍刀を握っていた右腕は地に落ち、当然刀も地に落ちる。


「『ヒュルング』」


 間髪入れず自らの手に風を纏わせ、アンデッドの胸部に掌底を打つ。風の刃を纏った掌底は、まるでドリルのようにアンデッドの肉を掻き分け進む。やがて手から肉を削ぐ感覚が消え、代わりにアンデッドの身体の向こうに自分の手が見えた。


 最後に足払いでアンデッドの体勢を崩し、首を掴んだまま地面に押さえつけた。

 剣を投擲した後距離を詰める瞬間、右腕を落とし状態を打つまでの間。この両方に一秒でも遅れが出ていれば、俺は刀の錆になっていた事だろう。敵が目の前にいるため、なるべく顔に出さないようにしたが心中では深く安堵した。

 ダグラスと肉弾戦の修行を積んでおいてよかった。


 さて、ここからは情報を引き出せればベスト。胸に穴が空いても生きているかという一抹の不安があったが、どうやらその不安はする必要はないらしい。アンデッドの微かな呼吸音が聞こえることから、まだ生きている。だがそれもいつまで続くか分からない。迅速に尋問するとしよう。


「さあ、言え。どうして俺を襲った」

「・・・死しても兵士たる心は忘れるものか。敵に情報をくれてやるくらいならば・・・・・」

「ならば誰がお前をそんな体にした」

「言わぬと・・・言ってい・・る」

「死霊術師の居場所はどこだ」

「言わ・・・・・ぬ」

「おい、待て!まだ逝くんじゃ・・」


 俺の呼びかけも虚しく、アンデッドは息を引き取った。

 俺はアンデッドの首から手を離し、立ち上がった。


 結局、情報は引き出せぬまま終了。俺の実力不足だな。尋問の仕方、ノアだったら知ってるか?

 いや、ここにアンデッドがいた。それだけでも収穫だ。この帝都に死霊術師がいると見て間違いないと言える。


 だがやはり変だ。仮にここに居たのが俺でなく一般人だったとしたら、それでもあのアンデッドは姿を表したのだろうか。

 違う。何も知らない一般人に見つかるよりも、俺のように死霊術師の後を追う人間に姿を見られる方が厄介だ。

 どちらにせよ、姿を表すメリットは皆無と言っていい。ならばどうしてわざわざ戦闘を仕掛けた。


 死霊術師には居場所が露呈することを恐れない理由がある?


 ふとアンデッドの死体を見ると既にそこには灰のみがあった。灰は風に運ばれて空へと舞い上がった。

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